かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ウォルトン 交響曲第1番他

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はウォルトン交響曲第1番とワーグナーファウスト序曲を取り上げます。

この音源を借りてきたきっかけは、ウォルトンという作曲家に強く興味を持っていたからです。そもそもは日立フィルの演奏によるクラウン・インペリアルがきっかけです。

ウォルトンという作曲家について、もう一度ウィキを上げておきましょう。

ウィリアム・ウォルトン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3

イギリスの作曲家は保守的な人が多い中にあって、必ずしも保守的とは限らない音楽を書いた人でもあります。実際、交響曲第1番は、基本的な構造としてはさほど冒険を行っていませんが、音楽は比較的不協和音が多い、人間の影の部分をえぐるような旋律が支配しています。

交響曲第1番 (ウォルトン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3)

確かに、完成が1935年ですから、こういった作風にもなるだろうという気がします。世相も、少しきな臭い方向へ行っていましたし、それがウォルトンの心理状態に影響を及ぼしたととも言えるかもしれません。

勿論、この曲はそういった暗い世相を描いたという訳ではなく、自然と暗い世相が音楽に反映されたというべきでしょう。絶望的な暗さではなく、その中にも何か明るさを見いだそうというような点も見出せます。実際、第4楽章はまるで遠くに希望が見えるかのように終わります。

かといって、最後幸せに終わるのかといえば決してそうではないのが、この作品の複雑な点です。そう、複雑だからこそ、こういった作品はなかなか認知されないのかもしれません。実際、この交響曲がメインに載ることが、いったいわが国でそうあることでしょうか・・・・・ウォルトンの作品を取り上げることはあるでしょう。では、彼の交響曲がメインになることは?

全くないとは言えないでしょうが、少ないかと思います。実はこの音源、輸入盤なのですがこのウォルトンはライヴ録音なのです。オケはロイヤル・フィル。確かに、彼らの祖国の作曲家だからという側面はあるでしょう。では、一方日本では祖国の作曲家だからと言って、メインに日本人作曲家の作品を取り上げることがどれだけあるでしょうか・・・・・それと、ウォルトンを取り上げないこととは、私は同じことのように思っています。

聴いてみれば本当に陰影が濃く、味わい深い作品なのに、なかなか人気ないですね・・・・・これはもったいないように思います。後期ロマン派が好きな方であれば、けっして嫌いではないように思うのですが。

次に、ワーグナーです。彼の演奏会用序曲であるファウスト序曲は、はじめ交響曲として作曲がはじめられましたが、結局1楽章しか完成せず、そのまま演奏会用序曲としたものです。

ファウスト序曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%88%E5%BA%8F%E6%9B%B2

ベートーヴェンの第九に触発された作品ですが、ゲーテファウストが元となっていることから第九からの影響をあまり見ることが出来ません。しいて言えば、主題がニ短調であるという点が第九からの影響だと言えると思います。それ以外はすでにワーグナーの個性が発揮された、劇的でかつまとまりのある作品です。ただ、その後の彼の序曲群と比べますとその壮大さにおいて劣るのはやむを得ないことでしょう。そもそもが交響曲として発想されたのですから、ワーグナーの頭の中には、4楽章でドラマを創っていくつもりだったのだと思います。それが1楽章しか作れなかったのですから、どうしても壮大さは少なくなってしまうでしょう。そういった背景がありつつも、比較的まとまったドラマを有しているのは評価すべきだと思います。

この作品が交響曲として完成していれば、いったいどんなものになったことでしょう。実際、ワーグナーは完成した交響曲も書いていますが、それがあっても彼はオペラ作曲家として名が知られています。もしかするとシンフォニストとしても名を遺したかもしれませんね。

演奏は、二つのオケが担当しています。ウォルトンはすでに述べましたがロイヤル・フィル、ワーグナーBBC北部放送交響楽団。指揮はどちらもホレンシュタイン。いずれのオケに対しても、指揮者ホレンシュタインは引き締まった演奏を要求し、それが緊張感を与えています。演奏時間が長い作品であるにもかかわらず、聴衆がどんどん音楽の世界へと引き込まれていき、同じ地平に立っています。これが不思議な感覚なのですが、それゆえに音楽が心にすっと入ってくるのが素晴らしいですね。音楽が持つ様々な表情、或いは感情といったものを私たち一人一人が己が表情や感情と比較しながら、泣いたり嘆いたり、くすっとしたりするのは、非常に楽しい時間です。決して明るいとは言えない作品ですが、しかしそれが何とも楽しい時間なのです。

その音楽が持つポテンシャルと引き出すことに、私はホレンシュタインは見事に成功しているように思います。聴いていて本当にどちらの作品も表情豊かですが、その表情を十分感じ取ることが出来るのは、指揮者のテンポ感の良さだと私は思います。テンポはあまり関係ないとも言われますが、テンポをリズムと言い換えれば、これは音楽を構成する重要な要素であるわけで、であれば関係ないはずがありません。テンポがどれくらいかは本当に大事な点だと思います。

それを十分に理解しているように、私はこの演奏を聴いて思うのです。



聴いている音源
ウィリアム・ウォルトン作曲
交響曲第1番変ロ短調
リヒャルト・ワーグナー作曲
ファウスト」序曲
ヤッシャ・ホレンシュタイン指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団ウォルトン
BBC北部放送交響楽団ワーグナー

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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