かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:鈴木大介 月の光

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はギタリスト鈴木大介のアルバム「月の光」を取り上げます。

月の光といえば、クラシックファンなら想起するのは、ドビュッシーの名作、ベルガマスク組曲のもの、ですよね。もちろん、このタイトルはそのドビュッシーの作品に由来しています。ドビュッシーを始め、様々な作曲家の作品をギターで演奏したものです。

面白そうですよね?え、そうでもないって?まあ、これは個人の趣味ですからねー。まあ、考えてみましょう。ピアノはチェンバロをその祖先として、弦を爪弾くものから、フォルテピアノは弦を叩くという機構に変えることで、楽器として革新的な飛躍を遂げました。

そう発展して来た楽器による作品を、再び弦を爪弾くギターで演奏したらどうだろう・・・・・鈴木大介がそのように考えたかはわかりません。けれどもその回帰する姿が面白そうだと、私は思ったため借りたのです。

そして、「月の光」では実にしっくり来るんですよね、ギターが。本来リュート属から発達したギター。今ではロックでは欠かせない楽器になり、電子化により現代のポピュラー音楽でも欠かせない楽器となりました。そんな楽器が、実にドビュッシーの作品ではしっくり来るんです。「月の光」だけではありません。続く「亜麻色の髪の乙女」、「ミンストレル」でも、なのです。

ゆったりと弾いているということもあるかもしれませんが、私はそもそも、ドビュッシーがフランス・バロックに範を取っているという点こそ、ギターでも不自然ではないことにつながっていると考えます。弦を爪弾く演奏がドビュッシーの頭の中にあったのではないかと思うのです。実際、エチュードでは指を交差させる曲もあり、これはリュリなどフランス・バロックの伝統なのです。

もっと言えば、ドビュッシーチェンバロで弾くということを念頭においていたんじゃないかと思うんです。それを19世紀〜20世紀のピアノという楽器で、それまでとは違う新しい和声で表現したらどうなるだろう・・・・・ここにも、新しいものが必ずしもいきなり出てくるのではないという典型が見て取れます。

それはドビュッシーの作品で顕著なだけではなく、鈴木大介の演奏では第1曲めのラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」でも同様なのです。これがまさに面白いですし、また何度も聴きますと本当に癒やされます。ドビュッシーが切り開いた音楽とはいかなるものか、そして本質はどのように受け継がれていったのかが、明確に演奏によってにじみ出ています。温故知新による革新。決して古いままではなく、そこにその時代的な独創性が備えられていく・・・・・

鈴木大介の演奏は、そんな作曲者へのリスペクトに彩られています。純然たる古典派の作品であるベートーヴェンの「悲愴」第2楽章でもしっくりきますし、メンデルスゾーンの「無言歌」も、そのゴンドラの様子が明確な演奏になっており、実に多彩かつ洒脱。原曲がピアノ以外の作品も実にしっとり、いきいき。いやあ、疲れたときにはもう本当に助かりますよ、こういう演奏。

人はいつも緊張感を持っているわけにはいきません。弛緩したり緊張したりしないと難しい生き物です。それが人間という生命であるし、その2つを自在に表現する演奏こそ、生命力への讃歌だと思います。一見すればゆったりとしているこの演奏も、よーく耳を傾けてみれば、そこかしこに生命賛歌にあふれています。




聴いている音源
亡き王女のためのパヴァーヌ(モーリス・ラヴェル作曲)
月の光(クロード・ドビュッシー作曲)
亜麻色の髪の乙女クロード・ドビュッシー作曲)
ミンストレル(クロード・ドビュッシー作曲)
愛の挨拶(エルガー作曲)
農民の歌(グリーグ作曲)
ワルツ(グリーグ作曲)
メロディ(グリーグ作曲)
信頼(無言歌作品19-4、メンデルスゾーン作曲)
ヴェネツィア舟歌(無言歌作品19-6、メンデルスゾーン作曲)
慰め(無言歌 作品30-3、メンデルスゾーン作曲)
アダージョカンタービレ(「悲愴」第2楽章、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲)
トロイメライシューマン作曲)
献呈(グラナドス作曲)
スペイン舞曲第5番「アンダルーサ」(グラナドス作曲)
スペイン・セレナーデ(マラッツ作曲)
アストゥリアスアルベニス作曲)
タンゴ(アルベニス作曲)
スケルツィーノ・メヒカーノ(ポンセ作曲)
鈴木大介(ギター)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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