神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は鈴木大介が演奏するアルバム「北の帆船(ほぶね)」をご紹介します。
ギター協奏曲と言えば、「アランフェス協奏曲」が有名なのですが、日本人の作品もあるのか、しかも演奏が鈴木大介かー、と興味をもって借りたのがこれでした。
聴いてみれば、インドネシアの曲あり、インドネシア人の作品もありで、どうやらテーマが「祈りの航海」らしく、海がテーマになっているものが多い気がしますが、そんな中で異色なのが、古賀メロディーである「丘を越えて」。これがなぜ「祈りの航海」なのかがわかりません。
パネの「織りなす魔法の踊り」には沖縄民謡が入っていたりと、航海という感じがしますが、古賀政男の「丘を越えて」は、そもそもが川崎は稲田堤の桜を見て、なんです。
タイトルにもなっている林光の「北の帆船」はまさに祈りというイメージにぴったりだと思います。弦楽とギターのバランスもいいですし。まあ、マイクを複数使えば解決はしますけれど・・・・・演奏するポートストリングス横浜は小さなアンサンブルのようで、その点ではバランスがとりやすいとは言えるでしょう。しかもプロですしね。
それだけに、違和感がぬぐえないのが「丘を越えて」なんです。もちろん、この曲が素晴らしいことは言うまでもないんですが、このアルバムのテーマに果たして沿うものなのか、という視点では違和感ありありです。
しかも、この曲を本当に素晴らしい演奏で弾くんですよ、鈴木氏は。しかも自身の編曲。これが洒脱なんです。それだけにさらに違和感ありありw
そこで、古賀政男で検索したところ、古賀氏はギタリストであったことが判明。しかも、明大マンドリン倶楽部創設の一員でもあります。
なるほど、それで古賀メロディーである「丘を越えて」を入れたのかな、という気がします。しかも現在、鈴木大介は洗足学園大学客員教授。洗足学園は川崎市高津区にあり、最寄り駅は南武線武蔵溝の口と東急田園都市線溝の口。南武線で北に6駅先が「稲田堤」であり、「丘を越えて」を作曲するきっかけになった稲田堤の最寄り駅です。
こういう曲をさりげなく入れるというのは粋だなあと思います。そして川崎は、意外と知られていませんが川崎港が存在し、横浜港と東京港を補完する、京浜工業地帯でなくてはならない港でもあります。
なるほど、それなら「祈りの航海」にふさわしいと思います。ここからコンテナで、ものが出ていき、入ってくる。そのコンテナ船は世界中を行き来する。その港へ、稲田堤のそばを流れる多摩川は注いでいく・・・・・なんともロマンティックです。これは考えさせたなあと思います。
カテゴリ的にはイージーリスニングになるようですが、これはクラシックにカテゴライズしてもいいのでは?と思います。世界クラスの編集であるこのアルバム、十分楽しめるものであると言えるでしょう。
聴いている音源
サリナンデ(インドネシア民謡、イワン・タンジル編曲)
フェビアン・レザ・パネ作曲
織りなす魔法の踊り
古賀政男作曲
丘を越えて(鈴木大介編)
ステファン・ゾーヴァンディ作曲
夢
林光作曲
「裸の島」のテーマ~映画「裸の島」より(鈴木大介編)
ギター協奏曲「北の帆船」~ギターと弦楽合奏のための~(1983/2004)
グサン作曲
ブンガワン・ソロ(鈴木大介編)
鈴木大介(ギター)
近藤嘉宏(ピアノ)
寺嶋陸也指揮
ポートストリングス横浜
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