ストラヴィンスキーと言えば、「カメレオン」と言われるほど自作の様式を変化させた人ですが、このアルバムに収録されているのは1930年台に作曲されたものばかりです。そしてそのうち2つは、既作からの編曲となっています。
その2つが、第1曲めの「イタリア組曲(原曲はバレエ音楽「プルチネラ」)」と第3曲目の「ディヴェルティメント(原曲はバレエ音楽「妖精の口づけ」)」です。ともに原曲はバレエ音楽ですが、そうではないデュオ・コンチェルトもじつは共通項を持っています。それは、演奏される機会の拡大です。室内楽であれば、演奏会が簡便に開けるからで、これは古典派〜前期ロマン派において、ピアノ協奏曲をピアノ四重奏曲で演奏するため編曲されたのと同じなのです。
協奏的二重奏曲 (ストラヴィンスキー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%94%E5%A5%8F%E7%9A%84%E4%BA%8C%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC)
いや、やっぱりストラヴィンスキーといえば大管弦楽でしょ〜という人もいると思います。それは否定しませんし、やはりストラヴィンスキーといえば芳醇な管弦楽は魅力です。けれども、この演奏を聞きますと、室内楽でもその芳醇さというものの魅力はいささかも失われていないことに気付かされます。
演奏するは、ヴァイオリンがチョーリャン・リン、ピアノがアンドレ=ミシェル・シューブ。この二人もそれほどではないでしょう?知名度。けれども、ヴァイオリンはその倍音をしっかりと鳴らすことでオケの分厚さに負けない表現をしていますし、またピアノも、その楽器の特性故に軽妙さも加わっています。これは優れたスコアリーディングだと思います。まさに「音符の行間」を読み、すくい上げ、共感し、その上で自己の表現としています。こういう演奏はいいわ〜適度に酔えます。
本当にね、酔は適度のほうがいいのですよ・・・・・某アイドルグループのリーダーが傷害事件を起こしましたけれど、あれは適度どころか飲み過ぎで意識がないという、アルコール依存の典型なのですよね。なら、回復の道を辿らないといけないと思うのですが、だれもその衝撃から一罰百戒しか唱えないのが残念です。それを言えば、ベートーヴェンの作品はすべて発禁なのですが・・・・・
ベートーヴェンにとって、回復の一つの道具が、芸術だったのです。だからベートーヴェンには、酒にまつわるネガティヴなエピソードはほとんどありません。それでも、甥カールを追い詰めるということをしでかしました・・・・・
現代は、いくらでも回復するためのリソースがあります。それを使わないっていうのはもったいないですし、再び被害者が出る可能性すらあります。ぜひともあの事件をきっかけに、依存症は回復できる病であるということが広く知られるようになるといいなと思います。
そんなことを二人の演奏者たちが知っているのかまではわかりません。ただ、治療では先進地域であるヨーロッパに拠点を置いていれば、嫌がおうでも情報は入ってくるでしょう。様々な情報や経験を総動員して、ストラヴィンスキーの「楽譜の行間」を読み、想像を膨らませつつ、楽譜と対面していく・・・・・そんな姿が目に浮かぶようです。二人が「この作品の適度な酔はどこなんだろう」という問題意識を共有しているように思うのは私だけなのでしょうか?
聴いている音源
イーゴル・ストラヴィンスキー作曲
イタリア組曲
デュオ・コンチェルト
ディヴェルティメント
チョーリャン・リン(ヴァイオリン)
アンドレ=ミシェル・シューブ(ピアノ)
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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