かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ジークフリート・ワーグナー 管弦楽作品集3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでジークフリートワーグナー管弦楽作品をご紹介していますが、今回はその第3集です。

この第3集では、多少父リヒャルトの影響が強い作品が多いかなと思います。特に一つ目の「星の掟」と2つ目の「太陽の炎」は。それ以外の作品は、だんだん父の影響が薄くなる過程のように思います。とはいえ、生前はやはりリヒャルトの息子という看板は背負わざるを得なかったでしょう。実際、両性愛者(現代で言えばLGBT)であったということが、それを物語るように思うんです・・・・・

父リヒャルトは偉大な足跡を残した人ですが、それゆえに息子ジークフリートは肩身の狭い思いをしたことでしょう。それが青年になって両性愛者として表面化したということは、決して珍しいことではなくむしろジークフリートが育った家庭環境を想像すればごくあたりまえだったと言えるのです、心理学では。そもそも、本人の名前がジークフリートですよ?父リヒャルトの楽劇「ジークフリート」の主人公から取られているんですから・・・・・よく、単に両性愛者であるだけで済んだって思います。

ある意味「それで済んだ」ということが、ジークフリートの作品をどこか中途半端なものにもしています。となると、がっちり変人であることはその存在を否定できるものなのでしょうか・・・・・この親子を見ていると、そう思います。

私はこの第3集に収録されている作品を見て、ああ、ジークフリートは多分父のものまねをしようとしたんじゃないんだなって思っています。それは、序曲になっているオペラと前奏曲になっているオペラとが同居していることです。これは父リヒャルトが「ローエングリン」以降前奏曲のみとしたのとは異なるんです。境界線引きたかったんだなと、元対人援助職である私は見ています。

境界線を引く・・・・・これが、私達日本人には理解しにくい、いや、できない領域だって思います。私達日本人はいつの間にか、清濁併せ呑むのではなく、白黒はっきりさせないと気がすまない民族になってしまっています。だからこそ、こういった「境界線を引く」ということが理解できなくなってしまっています。父リヒャルトの影響は受けつつも、自分の世界を構築する・・・・・けれどもそれは一つ間違えばものまねとされてしまいます。しっかりと音楽学校へ行っていれば変わったろうになあって思います。ワーグナー家の音楽伝承方法は、ある意味バロック復権だったわけなのですが、それは余程才能がないと難しい作業でもあります。バッハの再検証ですら、メンデルスゾーンという天才が居ないと難しかったのですから。

演奏するアルベルトとラインラント=プファルツ州立フィルは、これらの作品を誠実に演奏しているのがとても好印象です。そしてその演奏は生き生きとしていると同時に、父リヒャルトのものよりは酔えないんです。けれども、それが全く悪く思えず、むしろ健康的でいいとすら思うんですよね。これはもしかすると、ジークフリートのメッセージをオケが明確に伝えている証拠なのではないか?とすら思います。ジークフリートの叫びと言いますか・・・・・楽譜を見て、アルベルトやオケの団員たちがそう思ったのかもしれませんね。だからこそ演奏が誠実なんだと想像するのですが・・・・・

結局、ワーグナー家はその後作曲というよりは演奏という方向で伝承をしていくことになります。ジークフリート自身も優れた指揮者でしたし、その息子ヴォルフガングはもうクラシックファンであればバイロイトの名演出家として広く知られている存在です。そういった人物が実際にいるという空気感の中で演奏するってことは、私達日本人とはまた違った受け止め方があるのではないかと思いますし、その違った受け止め方こそ、演奏に込められた団員たちと指揮者の想いなのかもしれないなあと想いながら聴いています。




聴いている音源
歌劇「星の掟」作品5
 導入部前奏曲
 第二幕への導入部
 フェストツーク(選手権パレード)
 第3幕への導入部
 歌劇「太陽の炎」作品8 序曲
歌劇「異教徒の王」作品9
 グラウべ間奏曲
 クーパロ祭間奏曲
歌劇「ラインウルフとアデラシア」作品14 序曲
ヴェルナー・アンドレアス・アルベルト指揮
ラインラント=プファルツ州フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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