かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ オルガン作品全集3

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでバッハのオルガン作品全集を取り上げています。今回はその第3集です。

ここに来て一転、時期ではなくジャンルで構成されており、この第3集はパストラーレです。でも、こういう編集、私は好きです。

確かに、成立順とかも推移がわかって面白いですが、ではバッハのオルガン作品の肝って何だ?と考えたとき、多分に宗教音楽だということになります。となれば、バロックの時代であれば、パストラーレと無縁ではないからです。

パストラーレは、たいていシシリエンヌと同じリズムを取っており、それはキリストの生誕を意味するから、なのです。だからパストラーレはバッハの作品においても重要な地位を占めます。

パストラール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%AB

このリズムは、以外なところまで影響を及ぼしています。宗教とは無縁だと思われているベートーヴェン交響曲です。ウィキでは第6番が挙げられていますが、8分の6拍子の二重フーガといえば、え?あれなの?って思う方もいるかも知れません。そうです、第九です。

第九の二重フーガはなぜ8分の6拍子なのか?そのヒントは、その直前の歌詞にしっかりと刻まれています。「星の彼方に必ず神は住みたもう」です。この「神」とはキリスト教の神とは限らないというのが定説ですが、しかしレトリックとしてキリスト教の神を使ってもいます。その「父なる神」によって人々が一つになる喜びが、その次の二重フーガへとつながるのです。それはバッハがイエスの生誕を祝うときにパストラーレを使ったのと精神的に一緒なのです。

このように、バッハの音楽は後世に多大な影響を及ぼしています。パストラーレが第3集に来るなんざあ、さすが本場だなあって思います。それをしっかりライブラリとして持っている神奈川県立図書館の司書さんの目の確かさには本当に驚かされます。

演奏するイゾワールも、キリストが生まれるというキリスト教における一つの重要イベントを、しっかりと認識して、決して力任せにせず、畏敬の念を持ちつつ伸びやかにかつ繊細に弾いています。それが荘厳さや静謐さへとつながっており、本来のクリスマスというものがどういうものなのかがよく分かる演奏だと思います。

え、クリスマスとオルガン曲なんて関係ないでしょって言うかもしれません。いいえ、大有です。もちろん、すべての作品ではありませんが、パストラーレが使われているということは、まず間違いなくクリスマスに関係する作品なのです。だからこそリズムはシシリアーノであるわけですし、イゾワールもそこをしっかりと踏まえています。だからリヒターのようにリズム無視ではなく、しっかりとリズムを重視しているんです。それでも荘厳さはまったく失われず、むしろ静謐さが目立つというわけなのです。

静謐さというと、リズムなどないって思ってしまいます。けれど本当にそうなのでしょうか?例えば、私達日本人の村祭を再び例に出せば、神楽はリズムの権化ですよね?それで静謐さは失われていますか?あるいは仏教なら、読経においてもスラーがかかっている部分とスタッカートの部分とが同居し、それにより仏を讃美しているその様子は静謐ではないでしょうか。それと一緒なんです、バッハの音楽も。だからイゾワールはリズムを大切にしていると考えれば、むしろこの演奏こそ王道だとわたしは思います。

どの宗教にも共通する讃美の形式をバッハの音楽が持っているからこそ、バッハの音楽は国や民族や時代を超えた普遍性を持つのです。その代表がパストラーレだとすれば、このテーマが第3集で来たのはまさしく正しいと私は思います。




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ファンタジー(とフーガ) イ短調BWV904
パストラーレ ヘ長調BWV590
パルティ―タ「おお神よ、汝義なる神よ」BWV767
コラール「おお、神の小羊、罪なくして」BWV1085a
コラール「おお、神の小羊、罪なくして」BWV1085b
コラール「いまぞ喜べ、汝らキリストの徒よ」BWV734
パルティ―タ「ああ、罪人なるわれ、何をなすべきか」BWV770
(ファンタジア)「われ汝に別れを告げん」BWV735
コラール「古き年は過ぎ去りぬ」BWV1091
プレリュードとフーガ ト長調BWV550
アンドレ・イゾワール(オルガン)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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