かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェンのフルート・ソナタ

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ベートーヴェンのフルート・ソナタを収録したアルバムを御紹介します。

いや、ベートーヴェンはフルート・ソナタを書いていないだろ、あの変ロ長調だって偽作だろ?っていう、ア・ナ・タ。ええ、おっしゃる通りです。このアルバムにはその偽作が何と!第1曲に収録されているんです。

フルートソナタ (ベートーヴェン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

確かに聴いてみると、ベートーヴェンなのかなあって思う点はいくつもあります。リズムや和声進行などが、前時代的すぎるんです。けれどもこれ、ベートーヴェンの遺品から見つかっているんですよねえ。ベートーヴェンの持ち物だったことは確かなようです。

となると、この作品はいったいなんだろうかって思ってしまいますが、似ている作品に実はベートーヴェン吹奏楽のためのマーチがあるんです。

ベートーヴェンの時代、他者の作品を作曲途中に外から聴いて、いざ先に写譜をして発表してしまうということもあった時代です。いろんなことが想像はできるなあって思います。

2曲目はベートーヴェンの真作なんですが、元々はホルン・ソナタ。これ、ベートーヴェンの共和主義だとか先進性だとかが必ずしもすべてではないという典型なのではないかと思います。作品番号が17と若いこともありますが、そもそもホルンのソナタ、つまり管楽器のソナタというのは前時代的な編成だからです。それをあえてやったと言うことは、もしかするとベートーヴェンの頭の中には、作曲当時ホルン協奏曲を書くことも念頭にあったのかなって思います。

ホルンがフルートになっても、これはベートーヴェンらしさが良く出ている作品だと思います。特に初期の作品の瑞々しさがあふれていると思います。

3曲目がフルートとピアノによるセレナード。そう、ベートーヴェンもセレナードを書いているんです!しかも、作品番号は41。Opですよ、Op。WoOじゃないんです!この作品も若々しさが溢れており、交響曲を聴いて共和主義だとか悦に入っている人がきいたら腰抜かすと思います。こんなのベートーヴェンではない!あるいは、こんな作品をベートーヴェンの作品だと紹介するのは近代民主制への敵対だ!とか・・・・・

いえいえ、どれも私は意図しておりません。むしろ私自身は共和主義的ですし、近代民主制も大切にしようとするものです。私はただ、ベートーヴェンを一人の人間としてみたいだけなんです。英雄とだけ見るのではなく、そもそもは神でも仏でもなく、ベートーヴェンは人間だったということを、わすれたくないだけなんです。じゃなきゃ、カールを追い詰めてそのカールが自殺未遂をするなんてことがある訳がありません。

ベートーヴェンを評論する人たちに欠けている視点が、彼は現代的に言えば機能不全家族に育ったアダルト・チルドレン(親がアルコール依存症である子供のこと)である、ということなんです。私はこの視点を大切にしたいと思っています。ベートーヴェンにとって芸術とは、彼自身もまたアルコール依存気味だったことからの回復ツールだった、と言う事なんです。表現することで彼は彼を支持する人たちと交わり、引きこもる寸前で踏ん張ったのです。

彼自身も恋を夢見るロマンチストでしたし、その上で政治的な理想も持っていたのです。その「ロマンチスト」だったりとか、「機能不全家族出身」であることとかは、とても人間的な部分です。少なくともここに収録されている後ろ2曲は、ベートーヴェンが人間たるゆえんの作品だと思います。

演奏するは、フルートは名手パユ。ピアノのレサージュとともに、軽妙洒脱な演奏を繰り広げ、青年ベートーヴェンのはつらつとした内面を表現するのに、共感の喜びで満たしています。ゆえにカンタービレするフルートに自然とピアノも引きずられカンタービレしていきます。それが最大限魅力として現出しているのが最後のセレナードだと思います。こういう人間臭いベートーヴェン、私は大好きです。




聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
フルート・ソナタ 変ロ長調 WoO Anh.4(偽作)
フルート・ソナタヘ長調作品17(註:原曲 ホルン・ソナタヘ長調作品17)
セレナード ニ長調作品41
エマニュエル・パユ(フルート)
エリック・レサージュ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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