かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:鉄道唱歌

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回は鉄道唱歌のアルバムを取り上げます。

え、鉄道唱歌ですかって驚かれると思いますが、この手は神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーでも、横浜市歌と「好きですかわさき愛の街」を取り上げています。

同じことを、小金井でもしてみようかなって思ったのです。それと、鉄道関係の音源を、ドヴォルザーク交響曲を分析するのに持っていたかったと言うのもあります。

鉄道唱歌と言えば、何といっても「汽笛一声新橋を・・・・・」という歌詞が有名です。勿論、その歌詞を持つものも収録されています。え、「も」ってどういうことって?

実は、鉄道唱歌は、その「汽笛一声新橋を」で始まるのを第1作として、第6集もしくは第7集まで作られ、スピンオフもたくさんある作品なのです。

鉄道唱歌
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%89%84%E9%81%93%E5%94%B1%E6%AD%8C

第1集である、東海道線は当時最新の文明と言ってもいいでしょう。その人気を使って、沿線の地理も織り込んでしまおうという意欲作なのです。成立は1900年。ですから、実は歌詞を見ますと、熱海がないんです。その代り、国府津からと三島からの別線が歌われています。ではどこが歌われているかと言えば、現在の御殿場線なのです。今の鉄道ファンの方には、かつて御殿場線東海道本線だったことを知らない人もいるかもしれませんが、作曲された当時は東海道本線は現在の御殿場線のルートだったので、この鉄道唱歌にも御殿場線が歌われているのです。

そして当然なのですが、なぜ新橋からなのかってことですよね?実は東京駅も完成後にできた駅だから、です。

地理教育鉄道唱歌(一)
東海道
東京〜岐阜
https://tanken.com/tokaido1.html

東海道本線
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E9%81%93%E6%9C%AC%E7%B7%9A

面白いのは、当時まだ中央線がまだ八王子までしか開通していないので、天竜川を歌った26番では、諏訪湖が歌われているのも特徴です。

この水上にありと聞く 諏訪の湖水の冬げしき
   雪と氷の懸橋を わたるは神か里人か

また、名古屋を歌った部分では、濃尾地震にも触れられています。その意味は、現代の東日本大震災の「花は咲く」と同じ性格すら持っていると言えるでしょう。

三四 名だかき金の鯱は 名古屋の城の光なり
   地震のはなしまだ消えぬ 岐阜の鵜飼も見てゆかん 

濃尾地震
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BF%83%E5%B0%BE%E5%9C%B0%E9%9C%87

後半は、滋賀京都のあたりでかなり歌詞を割いています。現在では新快速で一気です。新幹線に乗らずとも、です・・・・・

地理教育鉄道唱歌(一)
東海道
大垣〜神戸
https://tanken.com/tokaido2.html

この上記サイトはほぼすべての鉄道唱歌の歌詞を紹介してくれているので助かります。わかる範囲で歌詞の変遷もわかるようになっています。で、なんで神戸なの?大阪じゃないの?って言う人もいると思います。だって、新幹線は新大阪までですもんね。実は、東海道本線とは、東京〜神戸間をさすのです。再度ウィキの項目を挙げておきましょう。だからこの第1集でも神戸までなのです。

東海道本線
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E9%81%93%E6%9C%AC%E7%B7%9A

今では、大阪〜京都間が京都線、大阪〜神戸間が神戸線と言いますから、わからない人も多いかと思います。

さて、2曲目が山陽本線かと思いきや・・・・・このアルバムでは、関西・参宮・南海線の第5集が採用されています。完成は第1集と同じ1900年。で、ここで言う関西線、参宮線というのは、実は当時は私鉄なんです。勿論、南海は言うに及ばず。私鉄王国関西らしい鉄道唱歌だと言えます。ちなみに、関西線は関西鉄道で、現在のJR関西本線参宮線は現在のJR参宮線紀勢本線です。南海はどうも歌詞からしますと現在の南海電鉄だと思います。勿論、JR阪和線という可能性もあるのですが・・・・・ネットだけではそこまで特定できませんでした。

ですので、第5集は1番の歌詞はこのようになっています。

汽車をたよりに思ひ立つ 伊勢や大和の国めぐり
   網島いでて関西の 線路を旅の始にて

網島って、どこ?って思いますよね、でも、文学好きな人なら、近松人形浄瑠璃を想起するのではないでしょうか。そうなんです、その網島なんです。

関西本線
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E8%A5%BF%E6%9C%AC%E7%B7%9A

かつて、関西本線関西鉄道時代、京橋あたりに有った網島駅をターミナルとしていたのです。その時代に完成したので、第1集が新橋なのと同じように、網島なのです、大阪駅ではなくて。今なら、難波から近鉄ですよね〜。伊勢まで行ってその後奈良へ寄り、現在の桜井線へと乗り換え、紀州をめざします。そして南海で帰ってくるというルートを歌っています。その間に寄り道したり・・・・・ちなみに、第1集でも、大船から横須賀線に乗り換えて鎌倉へと寄り道しています。

3曲目が、電車唱歌。これら鉄道唱歌の人気にあやかり、数え歌の形で完成された作品です。上記鉄道唱歌が5・7・5調で歌詞が付いているのと異なり、この電車唱歌ではそれにはこだわっていません。

電車唱歌
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%BB%E8%BB%8A%E5%94%B1%E6%AD%8C

旧東京名所紀行
歌え!「電車唱歌
https://tanken.com/densyasyoka.html

歌詞を見ますと、街鉄だとか、電鉄だとか外堀線だとか出てきますが、それらは全て当時の路面電車(後に東京市の経営となり、戦後「都電」となります)なのです。この時代、電車と言えば路面電車のことを指したのです。え、では今の電車は何時から?って思いますよね?基本、私鉄が郊外線に走らせるようになり、さらに東海道本線に82系という電車が走るようになってから、電車は路面電車ではなくタウンアーバンの鉄道を指すようになります。それ以前の作品なので、電車と言えば路面電車なのです。

ですから、歌詞を見ますと、一見すれば地下鉄なんじゃない?と思う部分が幾つかあります。でもそれは当然なのです。東京の地下鉄は、そもそも東京の路面電車の路線を基本としているのです。それがたとえ東京メトロでも、です。

歌詞は3曲ともこんな感じですが、そもそもは歌だけだったようで、この演奏には伴奏が付いていますけれど、それは初めからではなかったようです。ただ、歌詞サイトのメインを見てみると、和声は数字で付けれていますので、オルガンなどで簡単に伴奏ができるようにはなっています。

鉄道唱歌・完全版
https://tanken.com/tetudosyoka.html

このアルバムでは、楽団の伴奏になっており、鉄道唱歌では、所々で駅名を駅員が読み上げるのを楽器で表現しているのも特徴です。現在の駅名アナウンスは、当時はホームにいる駅員が列車が着くたびに叫ぶように読み上げていたんです。その様子なんですね。またリズムも蒸気機関車を表現しているのも特徴的です(ただ、第5集では必ずしもそれは当たらないですが・・・・・南海が南海電鉄であろうとも阪和線だろうとも、ともに開通当初から電化路線なので)。

一方、電車唱歌ではそれほど鉄道らしいリズムが出ておらず、数え歌の色彩のほうが強いのですが、此れもよく聴きますと、当時の路面電車がレールのつなぎ目をひろう音を単調なリズムとして表現しています。恐らくそれは編曲として受け継がれてきたものだと思います。特に鉄道唱歌の構造は、現在の形はまるでドヴォルザーク交響曲です。

歌うは、実力派のダークダックス。演奏はロイヤルナイツ。唱歌などではおなじみの組み合わせです。伸びやかだったり、ちょっとお茶目だったり、いろんな表情を見せます。それは作品がさまざまな名所旧跡も歌い上げているのを実に見事に表現しています。思わず鉄道に乗っているような錯覚すら・・・・・

いや、聴きながら実際に東海道本線を、鈍行を乗り継ぎ神戸まで行きたくなります。とはいっても第1集は28分ほどで終わってしまうんですけどね。時代は移り変わり、特に電車唱歌はその電車がなくなり、歌われている名所旧跡も、戦争に負けて変わったこともあり、イメージしづらい部分を、実に歌詞を読みこんで歌っているなと思います。現在地上を走っているのは歌詞にある総武線高架鉄道(現在の京浜東北線と山手線)、そして甲武線(現在の中央線)ですが、それらに加えて東京をくまなく小回りを利かせて走っていた都電を、リズミカルに歌うからこそ浮かぎあがらせるのはすばらしいとおもいます。

鉄道唱歌の世界が、決して第1集の東海道線だけではないことをよく表わしているアルバムだと思います。




聴いている音源
多梅雅(おおた うめわか)作曲
大和田建樹作詞
鉄道唱歌 東海道
鉄道唱歌 関西・参宮・南海編
田村虎蔵作曲
石原和三郎作詞
電車唱歌
ダーク・ダックス
ロイヤルナイツ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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