かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:信時潔 ピアノ作品集

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回は信時潔のピアノ作品集を取り上げます。そもそもは「木の葉集」というタイトルが着いていたものです。

木の葉集は信時潔の代表的作品ですが、それを中心に信時潔のピアノ作品を収録したものになっています。ウィキとかでは全曲集とか言われていますがほぼ全曲であり正確には全曲集ではありません。

さて、信時潔という人、クラシックファンにはあまり馴染みがない作曲家ではないかと思います。むしろ合唱好きな人たちならよく知っている作曲家だと思います。圧倒的に歌曲や合唱、団体歌を作曲した人だったからです。

信時潔
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E6%99%82%E6%BD%94

この人も時代に翻弄された人だったと思います。それゆえに「海道東征」なども結構批判される人です。まあ、あの時代なら仕方ない部分はあると思いますが、この人は戦後しっかり反省して生きた人だったんですけどね。ではどれだけ自分を保って生きることができるのかと、批判する人たちには問いたいくらいですが、それは置いといて。

作品を聴きますと、ドイツ古典派〜前期ロマン派の影響がとても強い人だなって思います。それはそれだけ和声的なので、それに声が合わされば、訴求力は抜群だろうなあって思います。このピアノ曲だけでも魅力的な作品が並んでいますから、ソ連ショスタコが権力に使われたのと同様、まあ大日本帝国に使われるだろうなあということは、十分理解できることではないかって思います。

ただ、悪く言えば、どこかにドイツロマン派的和声があるので、ドイツのものまねと見る人もいるのでは?って思います。その批判はそのとおりではないかって思います。ただ、信時潔が生きた時代はドイツロマン派全盛の時代ですから・・・・・

このアルバムを借りてきた動機が、そもそも合唱曲で有名な信時潔ピアノ曲?ってことでした。こういうアルバムを借りてくることこそ、作曲家の真の姿へと迫れるのでいいんです。実際、信時潔という人のバックボーンを知ることができ、本当に良かったと思います。本当にロマンティックな作品が並んでいること!作品としての優れたものですし。そのうえで最後の小曲俚謠集は、民謡採集運動にも影響されているという、実に日本らしい作品となっています。

組曲「六つの舞踊曲」は旋律はドイツロマン派ですが構造的にはバロックを踏まえたものですし、自作主題による変奏曲はベートーヴェンの影響が。特に「小学唱歌「月」による10の変奏曲」はシューベルトの影響も見える作品です。それ以外の、タイトルにもなっている「木の葉集」などはシューマンなどの影響が強い作品だと思いますが、それは19世紀後半になってクラシック音楽を受容した日本という国の作曲家らしい様式だと思います。

ですから、旋律だけ聴きますとドイツの真似って思ってしまいますが、様式的には実に様々なものが混然一体となりアウフヘーベンしています。器楽作品であってももっと演奏頻度が上がってもいいのでは?と思います。

演奏するは、花岡千春。戦前日本の作品の演奏におけるオーソリティだと言えます。

花岡千春
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E5%B2%A1%E5%8D%83%E6%98%A5

フランスの作曲家のラインナップも魅力的なものを揃えたアルバムを出している人で、そのセンスがいいなって思います。そもそも芸大卒業後はパリに留学し、コルトーの系譜に連なることになっている点も魅力的です。そんなフランス流の人がドイツ本流的な作品を最初のアルバムに持ってくる・・・・・いやあ、自在でいいですねえ。旋律的な作品をしっかりカンタービレしていて、作曲者への共感が見て取れる点も好感です。

どうしても合唱曲だと戦前日本の影がちらつく信時潔も、こうピアノ曲を聴いてみるとそんな影がまったくなく、非常に健康的。そんな健康的な作品をしっかりと歌い上げているんです。演奏者が楽しんでいるのが音から見えるというのも、評価ポイントです。もっと動いてもよかったかもなあって思いますが、それは他のピアニストが取り上げるのを待つしかないかもしれませんね。合唱作曲者でしょ?で終わりかねない我が国の状況の中で、ノン!を宣言したアルバムなんですから、まずはその点を評価するべきだと思います。




聴いている音源
信時潔作曲
組曲「六つの舞踊曲」
自作主題による変奏曲
組曲「野花と少女」
譚詩曲(バラッド)
小学唱歌「月」による10の変奏曲
組曲「木の葉集」
小曲俚謠集(全39曲)より
 麦打ち唄(埼玉地方)
 かぞえうた
 今様
 巡礼おどり(埼玉地方)
 ほたる こい
 今年のぼたんは(東京地方)
 ちゃーご ちゃーご(埼玉地方)
 子守唄A・B(東京地方)
 向う横丁の(東京地方)
 そこ どうやら(埼玉地方)
 笛(埼玉地方)
 はたおり唄(埼玉地方)
花岡千春(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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