かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:伊福部昭の芸術4「宙」〜伊福部昭 SF交響ファンタジー〜

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、伊福部昭の作品を集中的に取り上げることにしていますが、今回はその中から、映画音楽組曲である「SF交響ファンタジー」を収録したアルバムを御紹介します。

シリーズものになっているうちの一つです。伊福部ファンなら、キター!と叫ぶところではないでしょうか。特に、第1番の冒頭は・・・・・

「SF交響ファンタジー」は3つあり、「ゴジラVSキングギドラ」も含めれば4曲ありますが、そこまで含めると収録時間が足らなくなりますので、3つ目までと、倭太鼓と管絃楽のための「ロンド・イン・ブーレスク」が収録されています。

さて、クラシックファンの皆さんからすれば、つまりは、怪獣映画の音楽でしょ?つまらん、という声が出るかと思います。けれども、伊福部の音楽は怪獣映画であってもそれ以外のジャンルの映画音楽であっても、クラシックの王道の作品であっても、旋律がどこかに通っていると言う点にこそ、「チェレプニン派」に連なる構造があるのです。そこがとても面白いです。

しかも、正確には3番まである「SF交響ファンタジー」は怪獣映画組曲ではありません。あくまでも東宝特撮映画音楽組曲、です。確かに、第1番の冒頭はゴジラのテーマですが、第2番の冒頭は「奇巌城の冒険」のタイトル・テーマを採用しています。

SF交響ファンタジー
https://ja.wikipedia.org/wiki/SF%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%B8%E3%83%BC

奇巌城の冒険
https://movie.walkerplus.com/mv21725/

今なら、アニメでやるところを、特撮でやったんですね。走れメロスの舞台を中国内陸部シルクロードにうつすなんざあ、当時の日本映画に集った才能の豊かさの一部が垣間見えます。

そんないろんな要素が絡み合って、けれども昭和20〜30年代の東宝特撮映画にはまった人たちであれば、思い出がどんどん浮かび上がる仕掛けになっているのも面白いですし、何よりも3管編成という贅沢な編成で当時の、しかも特撮映画で使っていたということに驚かされるのです。

それは、映画会社もそうですが、作曲家である伊福部が音楽に妥協を許さなかったという点でもあります。勿論予算の関係もありますが、映画同様、いろんな旋律をうまくつかいまわすことでいくつもの新しい音楽を生み出すことに成功していることに気が付かされます。特に自衛隊のテーマは調性などを変えて地球防衛軍だったりとかに代わっているのも、聴きどころだと思います。時として引用であることもありますので、よーく聴き取らないと分からない部分もありますが・・・・・

しかも、本来は別の映画のために作られた旋律が、ファンタジーという様式により一つにまとまり、みごとなアウフヘーベンと化しているのも素晴らしい点です。それぞれは特撮映画の音楽なのに、幻想曲としてしっかり成立しているんです。一つのクラシック音楽として聴けるものなのだとはっきりと認識させられます。まるでショスタコーヴィチやアーノルドが映画音楽を作ったように・・・・・

演奏がそういう共感に溢れています。広上氏は決してオケに不用意な強い音を要求せず、必要な時に要求し、常に美しく流麗に演奏させています。怪獣映画の旋律も生命力と美しさに満ちています。

さて、多分聴けばあれ?自衛隊のテーマ、違うよね?ないよ!と言うかもしれません。いや、あります。ただ、そのままの形になっていないだけなんです(「サンダ対ガイラ」)。じつはそのままの形は恐らくあえてこの3つには使わなかったとわたしは判断しています。同じときに初演された「倭太鼓と管絃楽のための『ロンド・イン・ブーレスク』」がそれだからです。

ブーレスクとはたわむれにとかいう意味で、何となく並べてみましたという感じなのですが、しかし全体を貫く音楽はどちらかと言えば怪獣に向かっていくときの音楽であり、その代表として冒頭にゴジラ自衛隊のテーマが採用されています。実はそれですら、引用と言うか、バロックでバッハがやったような編曲なのですが・・・・・

ですから、倭太鼓と管絃楽のための「ロンド・イン・ブーレスク」こそ、伊福部音楽の真骨頂だと言えるでしょう。それゆえか、広上氏は倭太鼓を決して強くたたかせずなるべく柔らかく演奏させています。兎に角美しく、なんです。しかしそもそもがこのバーレスクにしても、東宝特撮映画の旋律をずいぶんと使っている作品なので自然と血沸き肉躍る感じになりますが、それでも流麗に鳴らしています。伊福部さんの音楽は特撮映画音楽であってもクラシックなんだよ、と言いたげに・・・・・

そう、伊福部氏はそもそもチェレプニン派です。クラシックの作曲家なのです。映画音楽を貶める割には日本映画は持ち上げる風潮があるのは如何なものかと思っています。それが左右ともなのですから・・・・・・そんな状況の中でも自らの音楽を曲げず、少しでもいい映画にという各々の作品に込められた想いが、一つになった時にメッセージとして語り始める・・・・・私たちはそこで何を受け取るのか。しっかりとアンテナを張っていないと単に怪獣映画か〜で終わってしまうように思います。




聴いている音源
伊福部昭作曲
SF交響ファンタジー第1番
SF交響ファンタジー第2番
SF交響ファンタジー第3番
倭太鼓と管絃楽のための「ロンド・イン・ブーレスク」
広上淳一指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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