かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:ルベル 四大元素ほか

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回はルベルの四大元素他を収録したアルバムを御紹介します。演奏するはムジカ・アンティクワ・ケルン。

ムジカ・アンティクワ・ケルンもこのブログで何度かご紹介している古楽団体ですが、演奏がムジカ・アンティクワ・ケルンだからこそ借りてきたのです。だって、クラシックの作品で四大元素ですよ・・・・・

え、四大元素って何って?いやあ、これは失礼しました。普通、クラシックでは出てこない用語と言うか、世界と言うか・・・・・理科でもしかすると聴いたことがあると思うんです。まだ原子が発見されていない時代に、人々はこの世界の最小単位が何であると考えていたか、を。

え、原子ですか?って?そうなんです。そんな世界なんです、これ。ルベルの「四大元素」はそんな原子レベルの世界を、詩的に描いたバレエのための、つまりは舞曲なんです。

でもここで、理系の方からは、そもそも四大元素は原子ではない、と突っ込みが入るところでしょう。勿論、原子ではありませんからおっしゃる通り。かつてヨーロッパでは、この世界が火・空気・水・土で構成されていると考え、それが哲学や占いへと発展しました。

四元素
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E5%85%83%E7%B4%A0

ある意味、方向性としては20世紀音楽の、万華鏡のような世界を表現するのに近いんです。特にその特徴を示すのが、何といっても冒頭の不協和音です。実際、「混沌(カオス)」という標題が付いています。

性格には不協和音とまでは言えないようですが、おなじような効果を狙ったものです。しかしそのカオスから、さまざまな美しいものが、四大元素により生まれてきます。それを音楽とバレエで表現しようというものなのです。まるでストラヴィンスキードビュッシーかって感じです。

構成は後のストラヴィンスキーなどに近いですが、和声は冒頭以外はまさにバロック。しかし、これを踊るバロックダンスって、いったいどうなるんだろうって思います。FBFには実はバロックダンスにくわしい人がいるのですが、是非ともこれは一度ダンス付きで聴いてみたいなって思っています。

実は、このアルバム、全体的にも舞曲で構成されており、2曲目のテレマンソナタソナタとありますが多分に舞踊性が強いもの。そして最後のグルックの「アレクサンダー大王」はまさにバレエのための作品。CDにはアレクサンダー大王ってあったのですが、調べるとアレッサンドロの恋などという題名になっています。

以前から、バッハのカンタータで私はバロックという時代は舞踊性が音楽に強いと述べていますが、このアルバムはまさにその「舞踊性」にフォーカスしての編集となっています。どこか貴族的な気品を持つ作品ばかりですが、それは作品がもつ舞踊性ゆえだと言えるでしょう。

こういった作品を聴きますと、現代のダンスブームは実に音楽史の延長線上にあると感じます。なぜなら、この3つの作品は貴族を中心とした市民階級に好まれた作品たちですが、後に舞曲は市民革命を経て市民へと解放されていきます。それはついに労働者までたどり着いた・・・・・それが現代のダンスブームなのです。ついには義務教育で必修までになりました。

その音楽史観が私にはあるので、面白いと思ってこのアルバムを借りてきたのですが、それは大正解でした。ムジカ・アンティクワ・ケルンの実に端正でしかし生命力あふれる演奏は、聴いているものを自然と幸せにします。同じ舞曲だからと言って、EXILEとは全然異なる音楽ですが、しかし体を動かすことにより楽しさや喜びを表現しようという点に置いては共通しています。

もっと言えば、これも常に述べていますが、舞曲とは音楽史に置いて常に主要な地位を占めてきた音楽です。あの難しい顔をしているベートーヴェンですら、舞曲を作品に取り入れています。え、そんなのあったっけって?ありますとも。例えば、交響曲第6番「田園」第5楽章がそうです。あれは嵐のあとの感謝を村人が踊りで表現しているのを音楽で表現したものです。じつはそこにベートーヴェンの共和主義が潜んでいるのですが・・・・・実に巧妙です。

そんなベートーヴェンに比べれば、権力側だったからこそあからさまに表現できているのがこれら3曲だと言えるでしょう。ルベルはフランス宮廷、グルックはウィーンが中心でしたが、ともに当時の貴族たちに好まれた作曲家でしたが、グルックはあからさまな先進性も持っていたため、議論の的になったこともある人です。しかし、ルベルも充分先進性を持っていたと言っていいでしょう。それがこの演奏からも明らかだと思います。

ジャン=フェリ・ルベル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB

クリストフ・ヴィリバルト・グルック
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF

テレマンは言わずもがなです。こういった作品を聴くことはさらに、バロック最後の巨匠バッハの音楽への理解につながっていきます。バロックがバッハだと思ったら大間違い!ルベルとグルックのようなバロック盛期の作曲家の作品こそ、純然たるバロック音楽と言えるのです。バッハまで行くと片足を多感様式に突っ込んでいますから・・・・・それはイタリアの「赤毛の司祭」の作品を見れば、もっとわかりやすいのではないでしょうか。その意味でも、例えばこのルベルの「四大元素」がかなりの頻度で日本でも演奏されれるといいなと思います。




聴いている音源
ジャン=フェリ・ルベル作曲
四大元素 オーケストラのための組曲
オルグ・フィリップ・テレマン作曲
ソナタ ホ短調(七重奏曲)
クリストフ・ヴィリヴァルト・グルック作曲
バレエ「アレクサンドロス大王
ラインハルト・ゲーベル指揮
ムジカ・アンティクヮ・ケルン

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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