かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:伊福部昭の芸術3「舞」〜伊福部昭の世界〜

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回から幾度かにわたって、伊福部昭の作品を採り上げたいと思います。まずは伊福部昭が作曲した舞曲を収録したアルバムから。

伊福部昭と言えば、ゴジラを筆頭の映画音楽や、管弦楽作品で特に有名ですが、伊福部と言えば、チェレプニン派であり、けれどもそれだけに収まらない自立した作曲家であることがまず挙げられると思います。

伊福部昭
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%8A%E7%A6%8F%E9%83%A8%E6%98%AD

ちょうど生誕100周年前後だったと思います。だからこそ借りてきたものなのですが、どうせ借りるなら、通常知られていない作品を借りたいもの。そこで棚で目にしたのが、この「舞」というアルバムだったのです。収録されているのは、舞踊音楽「サロメ」。

え、サロメって、リヒャルト・シュトラウスもオペラにしているあれ?ってことで、借りてきたのがこのアルバムだったと言うわけです。なんと、ウィキに解説が出ているくらいの作品なんです、これ。

サロメ (バレエ音楽)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AD%E3%83%A1_(%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E9%9F%B3%E6%A5%BD)

けれども、私はこのウィキの説明には異を唱えたいと思います。これはウィキの悪い点が出ている解説だなあって思います。けれども、体系的に出ているのはネットだとこれだけなので、上げざるを得ないんですが、困りものです。

と言うのは、上記ウィキの説明にもある通り、まずはバレエ音楽として成立します。しかしそののち、「演奏会用舞踊曲」という形で再度成立するのです。そして、その二つが存在するという事態になっています。

けれども、ネットでさらに検索しますと、このアルバムは生前伊福部氏が監修し、「舞踊曲ではなく舞踊音楽」としたという記事があります。

謎の絵描き 元さんの画帳
伊福部昭 舞踊音楽「サロメ」(1948/87) 初演30周年
https://ameblo.jp/gen-san-art/entry-12271714900.html

このアルバムでは、「舞踊音楽」となっており、その楽章構成はウィキと異なるんです。なら、元々のバレエなの?と思いきや、ウィキでいう最後のゆっくりとしたものがなく、むしろ演奏会用舞踊曲の最後そのものなのです。

ということは、このアルバムに収録されているのは、1987年に改訂された、「演奏会用舞踊曲」のほうだ、と言うことになるのですが、それを伊福部は「舞踊音楽」としたわけです。となると、最初の作品は「バレエ音楽」とカタカナにしなくてはならず、そうなるとウィキの説明は祖語があるというわけです。

同時に、演奏会用舞踊曲の説明も齟齬がある、と言うことになります。ウィキにあるようなざっくりとした構成ではなくて、もっと細かく分かれているってことなんです。

つまり、伊福部はオーケストレーションを変えただけで、基本的に構成を最後以外変えていないと言うことになる訳なんです。

指揮するは「鉄」でもある広上淳一。演奏は日フィル。日フィルは映画音楽には意外にも縁があって、宇宙戦艦ヤマト復活編のサウンド・トラックを担当もしています。その時はホールは杉並公会堂でしたが、何とこのアルバムではセシオン杉並、なんです。

施設案内 社会教育センター(建物名:セシオン杉並)
http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/bunka/kyouiku/1014907.html

杉並公会堂は一度取り壊して現在の姿になっていますが、実はこの録音の時はまだ旧公会堂は存在していました。なのにあえて杉並区の他のホールを使っているんですよね〜。ただ、残響時間が短いせいで、音の細かい部分までも聞き取れるのはとてもいいですし、また演奏も生命力あふれるもので、随所に映画音楽的なものがちりばめられつつも、それが伊福部の音楽の「素地」であることを気づかせてくれます。

実は、そのセシオン杉並の近くに、日フィルの事務局があるんです。私も自転車で都心へ出る時に何度か前を通ったこともあるのですが、セシオンのほうが公会堂より近いくらいです。そういった事情が恐らくホール選択にあったのではないでしょうか。日フィルだと映画音楽もたくさん携わっているため、時として忙しいので・・・・・

え、暇な時もあるのではって?そういうときもあると思います。しかし、オケが暇なときにセッションが都合よく入るとは限りません。例えば、指揮の広上氏も相当忙しい人です。その二つが都合よくスケジュールが合う訳がありません。少ない日程をやりくりしてやるはずです。そうなると、オケの団員が杉並公会堂まで行くだけの時間がない場合だってあります。え、杉並公会堂だって駅近でしょって?勿論遠くはないですが、セシオン杉並の駅からの距離と時間に比べれば、そりゃあ、セシオンを使う場合もあるだろうって思います。しかも、公会堂と違って地下鉄で二駅利用できるうえ、公会堂より新宿より、つまり都心よりと言うロケーションも、魅力です。

だからこその選択だったのでしょう。勿論、音響重視なら文句なく公会堂です。しかし、録音年代は1995年。音響的にどっちもどっちだったとしたら、私が事務局ならセシオンを選びます。

しかも、伊福部氏監修ってことは、当時齢81歳の伊福部氏がセッションに立ち会う必要もあります。そんな3者のスケジュールを、あなたならどう組みますか?多重連立方程式を解くようなもんです。なら、集まりやすい場所を選ぶのが普通だと思います。

恐らくそんな事情で選ばれたセシオン杉並におけるセッション録音ですが、その生命力溢れる演奏は、最後まで途切れることなく、伊福部氏の音楽に通底する「民族性と生」が存分に表現されているものだと思います。カップリングの「兵士の序楽」も同様なのですが、これが戦前の作品。けれどもリベラルと親交の深かった伊福部は、そういった音楽を戦後生まれ変わらせます。例えば、ゴジラでおなじみの「自衛隊のテーマ」。あれは実は戦前の作曲で他の題名であるのを、ゴジラでは「自衛隊のテーマ」としているのを御存知ですか?恐らく、この「兵士の序楽」もガメラあたりで使っているように記憶しており、また、「サロメ」の音楽が持つ残虐性との対比でカップリングされているようにも思うのです。そこに、戦前戦後を作曲家として生きた伊福部の、民族派リベラルとしてのメッセージが込めらているように思うのは私だけでしょうか?

そんないろんな意味が込められている作品たちを、ただただ演奏するだけで生命力を吹き込む日フィルのすばらしさ。これは評価したいと思います。そして広上氏の絶妙な解釈。それは伊福部氏とのセッションでもあったろうと思いますが、実によく対話できたセッションだと思います。よく日本のオケは対話しないとか言われますが、こういった演奏を聞きますとそれは本当なのか?SF特撮を下に見る結果盲目になっているだけではないかと思います。




聴いている音源
伊福部昭作曲
舞踊音楽「サロメ
兵士の序楽
広上淳一指揮
日本フィルハーモニー交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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