かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:加耒徹×瀬川玄 ドビュッシー歌曲コンサート�Vを聴いて

コンサート雑感、今回は加耒徹氏と瀬川玄氏のコラボレーションによるドビュッシーの歌曲コンサートを取り上げます。

このお二人によるコンサートは今回が3回目になるのですが、そのうち私は第2回と今回の2回聴いています。第1回は仕事の都合で駄目だったのでした。

シリーズで行っているこのコンサートは、サロンコンサートの形を取っており、瀬川氏の邸宅で行われています。そのため、会場はとても狭かったのですが、だからこその良さもたくさんあったコンサートでした。

今回取り上げられたのは、ドビュッシーの歌曲の内、「艶めかなる宴」と「3つのフランスの歌」の二つ、そして前奏曲を間に挟み、「抒情的散文」、アンコールの合計15曲でした。

「艶めかなる宴」は第1集と第2集とがあり、それぞれヴェルレーヌの詩に音楽が付けられています。第1集が1891年、第2集が1904年の作曲で、ちょうどドビュッシーが一人目の妻リリーと二人目の妻エンマと結婚する間の期間となります。

お二人による解説はずいぶんオブラートに包んでいるなあと思ったのですが、当日は詩も瀬川氏による訳が出ていてとても親切だったのですが、実は幾つかの詩に関してはすでにネットに訳が挙げられているんです。それを見ますと、これは明らかに性(もっとあからさまに言えばセックス)を意識した歌詞だと私は直感しました。

まあ、本来コンサート中にスマホをいじるのはあまり良くないんですが、検索したんです。そうすると訳を扱っているサイトが出るわ出るわ。その訳のほうが実に見事で、瀬川氏の直訳ででも私は直感したため調べたのですが、まさに男性が女性をいやらしい目で見ているその心情だったのです。

勿論、ヴェルレーヌですからそれを格調高い詩によって表現しているわけなんですが、いやあ、わたし自身も在りし日は思い当たる節があるので、だからこそ直感したと言うわけです。まあ、男性ならだれでもそんな経験、若かりし頃にはしていますよね?そんなちょっといやらしい経験を、みごとな詩によってヴェルレーヌは表現しているってわけです。

重要なのは、そこにドビュッシーが音楽を付けた、ということです。しかも不倫の末離婚し再婚するまでの間に・・・・・しかも、その再婚相手にこの二つの歌曲は献呈されているんです。あれま〜

私と2人以外は全て女性で、若い人すらいるという会場で、まあ、あまりセックスだとかそういう言葉を発するのは難しかっただろうと思いますが、例えば、第2集の第1曲「初心」などは明らかに若い男が女性のちらリズムによって欲情していますし、他にも明らかにこれは夜男女がセックスしている情景だと思わせるものもありました。それをドビュッシーは女性に献呈する音楽で表現したのです。

これは明らかに、セックスを伴うラブレターだと思います。あなたが好きですを通りこし、あなたを抱きたい!セックスしたい!です。それを受け取った二人目の妻となるエンマはどのように受け取ったのでしょう?そののち、二人が結婚することを考えますと、献呈されたバルザック夫人であるエンマは、ドビュッシーが意図するところをまさにしっかりと受け取ったとしか言いようがないと思います。つまり、「是非とも抱いて下さい、セックスしてください」と。

それがドビュッシーの愛憎劇の幕開けだったんですが・・・・・そんなエピソードも交えたのはとてもよかったと思います。また、そんなセンシティブな内容を語れるのも、サロンコンサートの良い点だったと思います。また、それをしっかりと聞く女性たち・・・・・いやあ、仲間だと思いました(え、あなたも相当スケベすねって?その通りですが何か?でも、私はドビュッシーのように行かないのでいまだに独身です)。

しかし、二人の演奏はそんな下手すればスケベなものとは無縁で、ヴェルレーヌの格調高い詩に格調高い歌を付けたドビュッシーの内面をそのまま映すような、格調高いけれどもしかしそのどうしても押させきれない想いを存分に表現できていました。特に加耒氏の歌唱はつねに感動します。特に今回は前回と異なり、前から2席目だったのですが、声が力強くも柔らかく飛んでくるんです!これがプロだなあって思います。

勿論、作品がとてもセンシティヴなものだったからというのもあると思います。そのセンシティヴさをしっかりと表現できるのがプロだと言えますが、サロンコンサートならどのように歌えばいいのかをしっかりと把握しているということもあるでしょう。また、サロンコンサートだったからこそ、今回の作品たちを存分に表現できたとも言えるかと思います。「艶めかなる宴」だけでなく、他の2つについても、適度な力でしっかりと内容を歌い上げるその歌唱は素晴らしかったですし、サポートする瀬川氏のピアノも、一緒に表現をしているのが素晴らしいと思います。

つい私たちは、歌が上でピアノを従と考えてしまいがちです。けれども今回はドビュッシーという、19世紀から20世紀にかけてのフランスの作曲家の作品を取り上げているんです。二つが対等なんですね(それは一方で、楽器が上という妙なヒエラルヒーを日本人に植え付ける結果ともなりましたが)。その二つの対話がとてもよかったと思います。

実際、コンサートの途中でも、お二人が何度も話し合われたことが話題に上るなど、いい雰囲気だったと思います。こういうコンサートを聴くことはとても重要かつ幸せなことだと思います。対話とはどのように成立するのか・・・・・そんなことも垣間見える素晴らしい時間だったと思います。

実は私はこのコンサートをきっかけに、府中市立図書館でCDを借りてきています。「東京の図書館から」のコーナーで将来ご紹介することもあるかと思います。その切っ掛けになったのがこのサロンコンサートだったということも、とても私にとって幸せだと思います。

アンコールで演奏された「放蕩息子」も、ドビュッシーの「霊性」を紹介するのに良い選択だったと思います。今後も実現してほしいコラボレーションだと思います。その意味では、年末の「ペリアスとメリザンド」がとても楽しみです!




聴いて来たコンサート
加耒徹バリトン×瀬川玄ピアノ ドビュッシー歌曲コンサート�V
クロード・ドビュッシー作曲
「艶めかなる宴」第1集
前奏曲第2巻より、「月明かりの鑑賞するテラス」
叙情的散文
前奏曲第2巻より、「霧」
「艶めかなる宴」第2集
3つのフランスの歌
アンコール:「放蕩息子」より最終
加耒徹(バリトン
瀬川玄(ピアノ)

平成30(2018)年8月19日、東京世田谷、瀬川邸ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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