今月のお買いもの、平成29年12月に購入したものをご紹介します。バッティストーニが東フィルを指揮した「第九」のハイレゾ音源です。e-onkyoハイレゾ配信サイトでの購入です。
この演奏を買い求めたきっかけは、一つのコラムです。
印南敦史のルール無用のクラシック
年末だから第九を聴こう!
http://www.e-onkyo.com/news/885/
こういう評論家の方が出てこられたことを、私は嬉しく思います。私がやってきたことは決して無駄ではなかったと、このコラムを見た時には喜び勇んだものです。
「ヒップホップなどのブラック・ミュージックからクラシックまでを幅広くフォローする異色の音楽評論家としての顔を持つ」
って、これ、実は私もまったく同じなんです!特に第九に関する認識を改めるきっかけを与えてくれたのが、ヒップホップだったから、なんです。もっと言えば、フリースタイルですね。
上記コラムで、ヒップホップにも造詣がある印南さんだからこそ、カラヤンの演奏を重箱の隅をつつくようなことはせず、実はフルトヴェングラーの系譜からそう外れたものではないと捕え、是々非々で受け止めるんですよね。だからこそカラヤンの解釈の良い面、悪い面を知ったうえでしっかりと評論できるわけです。ここ、本当に素晴らしいですし、とても共感した点でした。
ですから、第3のものとして挙げられている、バッティストーニ/東フィルのを、是非とも聴いてみたくなったのです。迷わず「ポチり」ました。
実は、東京フィルの第九はすでに私もエッティンガーので上げています。
今月のお買いもの:エッティンガーと東京フィルの「第九」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1390
これに比べると、バッティストーニは、実にアグレッシヴです。同じオケだろうかというほど、作品をオケに攻めさせています。特に第1楽章。かつて茅ヶ崎市民第九で「第九は第1楽章は闘いです」と指揮者の松岡氏がおっしゃられた、その通りの解釈を見せています。
しかも、何度も聴いているうちに、ほとばしる情熱が伝わってきて、いつの間にか体をゆすっている自分がいるんです。さすが、それを印南さんは一言「イケてる」と表現したんですね。こういう語彙の使い方が素晴らしい!尊敬する評論家の一人となりました。
さらにこの音源、ハイレゾなんですよ。勿論私はPCから直で、DCAだってPC内臓のみの貧弱なものです(その上で、PCはすでに7年選手という)。それでもハイレゾであれば、CDよりもくっきりとアンサンブルが浮かび上がるので、各パートがほんとうにノリノリであることが分かるんですよね。音楽の使徒となっているって言うか。
そのアグレッシヴさが第4楽章で一転、アグレッシヴさの中にとても端正なものがあるという解釈になります。それはバッティストーニが第九を一つのストーリーとしてとらえている証拠です。実は第九は、英語では"Choral"と表記されます。日本語の合唱付きの英訳だと考えると、少し違うような気がするんです。だって、カタカナで書けば、「コラール」です。つまりは、バッハのモテットなどと一緒です。
そう、第4楽章はコラール、なんです。その上で、宗教ではないんです。そこに、ベートーヴェンが言いたいことが詰まっているわけですし、だからこそ、今だに普遍性を持つ作品だとも言えるんです。
だからこそ、バッティストーニはそれまでのアグレッシヴさ一直線から、荘厳さも兼ね備える演奏へと変化させているんです。その序曲として第3楽章がゆっくりであるわけですが、実はテンポ的にはそれほど遅いわけではないんです。でも第2楽章までのとてもアグレッシヴな演奏があるからこそ、ゆったり聴こえるんですね。さらに第4楽章ではテンポを遅めにしているんですが、かといってアグレッシヴさも充分あるだけのテンポを保っています、そこにバッティストーニが楽譜から受け取ったベートーヴェンの「霊性」を見るんですね。
その典型が、私が常に問題にする、vor Gott!の部分で、全くの変態演奏であるvor1拍にGott!3拍ということをやってのけています!後の3拍は残響。それこそ、バッティストーニが第4楽章を「宗教ではないコラール」ととらえている証拠なんですね。情熱と冷静の間が抜群で、まさに印南さんの言葉を借りればこれこそ「イケて」ます!
最後まで情熱をもって突き進み、フィナーレを迎えるのは本当に素晴らしく、印南氏が挙げられたフルトヴェングラー、カラヤンという二人の巨匠と比肩すればフルヴェンさんに近い情熱的な演奏を、日本のオケとやってのけているのは、もっと評価すべきだと思います。日本のオケだからダメと最初から烙印を押してはいないでしょうか?だから、多分ダスビやナデージダさん、或はベトオケさんなどのアマオケを評価できないんだろなって思います。
合唱は実はエッティンガーの時と同じ東京オペラシンガーズなんですが、このバッティストーニの情熱的な演奏だとビブラート全開の発声はぴったりです。その意味では、そろそろ日本も指揮者によって合唱団を使い分ける時代が来ているんじゃないかって思います。東フィルの事務局は一つ考えてほしいです。まあ、いろんな関係性があるのは承知していますが、できれば指揮者ともう少し打ち合わせたうえで、合唱団はビブラートがあっていいのか駄目なのかくらいは、すり合わせることができると、さらに日本のオケの水準は上がるように思います。
聴いているハイレゾ
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
安井 陽子(ソプラノ)
竹本 節子(アルト)
アンドレアス・シャーガー(テノール)
萩原 潤(バリトン)
東京オペラシンガーズ
アンドレア・バッティストーニ指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
(Denon)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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