かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:グリーグ 「ペール・ギュント」と「十字軍王シーグル」2

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介していますが、今回はグリーグの劇音楽の2枚組の後半、「十字軍王シーグル」を取り上げます。

恐らく、この「十字軍王シーグル」のほうが劇音楽らしさが強い作品ではないかと思います。「ペール・ギュント」のほうが劇音楽とは言え、そのテクスト自体が壮大なので、音楽自体がドラマティックなのですが、「十字軍王シーグル」」はまさに劇のための音楽、と言う感じです。

作品番号としては実は続いているんですけれど・・・・・

それでも、音楽としては印象的なものが多く、特に間奏曲は一つの旋律が使いまわされているため、耳に残りやすいものとなっています。

そして、この「十字軍王シーグル」ほど、グリーグ国民楽派にカテゴライズされることが自然であることを納得する作品はないと思います。勿論、「抒情小曲集」を聴けば明らかではあるんですが、管弦楽が好きな人はピアノ作品って殆ど聴かないです(実際私も、瀬川玄氏と彼のサロンの仲間に出会うまではその一人でした)。ですから本当はどこが国民楽派と言えるのだろうと心の中では思いながら聴いているわけですが、この「十字軍王シーグル」はグリーグ愛国者であったことから引き受けたと考えるのが自然でしょう。

十字軍の王シーグル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E5%AD%97%E8%BB%8D%E3%81%AE%E7%8E%8B%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%AB

同時に、この作品は、グリーグコスモポリタンとしての側面を刺激する物でもあったことでしょう。本文中の「第1回十字軍」をクリックして頂けるとありがたいですが、URLも上げておきましょう。

第1回十字軍
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC1%E5%9B%9E%E5%8D%81%E5%AD%97%E8%BB%8D

恐らく、この作品が日本においてあまり演奏されないのは、その背景が以外にも複雑であることによると私は考えます。音楽はとても単純なんですが、ではなぜそこまで単純なのかと言うことを考えないのが、残念ながら私達日本人の欠点です。クラシック音楽ファンでも少ないのがとても残念です。複雑な状況の中で、何とか単純なものを求める・・・・・それが「十字軍王シーグル」の本質です。単純だからこそさらに変に「精神性」を重んじる中では、さらに演奏される機会は少なくなることでしょう。でも、グリーグが生きた時代は、ノルウェーも他国からいつ攻撃されるかわからないという時代だったのです。ですから、このような音楽、或は戯曲が求められるのは当然だったと言えるでしょう。

注目なのは、その作曲がグリーグだった、と言う事です。勿論、祖国に凱旋した新進気鋭の作曲家に、と言う事だったのでしょうが、けれどもノルウェーに作曲家が居なかったのかと言えばそんなことはありません。まずは「ペール・ギュント」での成功と、グリーグがドイツで学んだという点が重視されたのだと思います。

つまり、グリーグは「愛国的コスモポリタン」と言うわけです。実は私も同じくなんですが、だからこそとても共感できるんです、グリーグの音楽は。そして、この作品を聴いて、グリーグもこんなわかりやすい作品を書くんだなあって思いました。

しかしところどころ和声で複雑なものもあり、それがピリリと効いていて、素晴らしいんです。ペール・ギュントだけではなく、この作品ももう少し日本でも演奏される方がいいのではないかって思います。

演奏はペール・ギュントと一緒でパパ・ヤルヴィ指揮のイェーテボリ響ですが、端正かと思いきや、実に高音は伸びやかですし、特に「北国の民」ではソリストも堂々たる歌い上げぶりで、心に残ります。決して力任せではなく、歌い上げるんです。これがいい!何か強制されているというのではなく、心から自然と湧き上るという感じなんです。それが全体を支配しており、作品が持つ気品をさらに引き立てています。

本来は所謂BGMなのですが、どこかしら壮大で堂々たる印象を受けるような演奏は、作品へのリスペクトもあるのだと思います。それと、実はこの音源、元々はドイツ・グラモフォン。ですから、BISのような残響がかなーりあるような感じではなく、もう少し音がクリアと言うか、一つ一つの音がくっきりしているんです。それがさらにいい印象をもたらしているように思います。少なくとも、CDはレコーディング・エンジニアのセンスも多分にあるので(全くいじらないと言うことも含め)、あまりにも演奏者を否定するような評論は、少なくともオーディオ・エンジニアの息子である私は出来ないです。だって、その録音が「演奏されたもののすべて」を記録しているわけがないですから。だからこそ、指揮者の解釈という部分や、アコーギクの使い方、テンポ、それぞれから想起されるもの、というようなことで評論をするしかないんですよね。それが私は「正しい主観」だと思っています。




聴いている音源
エドゥアルド・グリーグ作曲※
劇音楽「十字軍王シーグル」作品22
シェル・マグヌス・サンヴェー(テノール
ペール・ヨーラン、セーレ・ヘルマンス、ヴィヴィカ・アルム(ホルン)
エスタ・ヴォーカル・アンサンブル
プロ・ムジカ室内合唱団(合唱指揮:エスタ・オーリン)
ネーメ・ヤルヴィ指揮
イェーテボリ交響楽団

※今は「エドゥヴァルド」と訳すようですが、一応CDの表記に従いました。

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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