かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:シベリウス クレルヴォ交響曲

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回はシベリウスの「クレルヴォ交響曲」です。

シベリウス交響曲は7曲ありますが、このクレルヴォ交響曲交響曲に含める場合と含めない場合とがあり、その評価はまちまちです。私は交響曲と言う言葉を使いますが、この作品の特徴はそんなことではないと思っています。

クレルヴォ交響曲の特徴は、愛国者シベリウスが、ともすれば恥ずかしいかもしれない英雄譚を、堂々とした音楽で表現した作品である、と言う事です。そこを見誤り、管弦楽と合唱作品なのか、交響曲なのかの論争をしても無意味だと私は思っています。シベリウス自身は「交響詩」としています。

それに従えば、交響曲であってもどうでもいいんです。問題は、その中身です。恐らくそんな論争を繰り広げる人たちは、クレルヴォ交響曲が自分の胸に突き刺さるから逃げたいのでしょう。

クレルヴォ交響曲は、シベリウスが作曲した、管弦楽と合唱のための英雄譚を表現した交響詩です。

クレルヴォ交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A9%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

シベリウス:クッレルヴォの歌詞と音楽
https://www.kanzaki.com/music/ecrit/sbl-kullervo.html

二つ挙げたのは、クレルヴォ交響曲が真にどんな内容を持つ作品なのかを、皆様に知っていただきたいからです。歌詞がなくても、ウィキでおおよそはわかるんですが、歌詞を読んでみると、多分日本人的な愛国心国家主義)だと腰を抜かすでしょう。此れは演奏禁止だ!と。それほどのどぎつい内容を実は持っているんです。

最もどぎついのは、第3楽章から第5楽章にかけて、です。フィンランドの英雄クレルヴォは、知らずに自分の妹を犯してしまうんです。もっとどぎつく言えば、知らないとはいえ、近親相姦の上レイプなんです。その上でどうなったか。妹は自殺してしまいます。なぜなら、自らの誇りが傷つけられたから、です。

そして、因果応報とも言える結果が、第5楽章には待っています。最期は淋しく、クレルヴォは死んで行きます。

そんな内容の作品を、シベリウスはまだフィンランドがロシアから独立を果たしていない段階で書いたんです。日本では考えられません。慰安婦が嘘だとか言っている人たちから、クレルヴォのような愛国的な作品が出ることは、日本では永遠にないでしょう。

私は、クレルヴォ交響曲に誇りを持っているフィンランドの人たちがうらやましいです。自国の恥じとも言える英雄譚を、作品にしたことに誇りが持てることを。勿論、初演当時から誇りに思えたわけではないようです。ウィキによれば、初演では評価は真っ二つ。それは当然でしょう、妹を犯した英雄譚など、簡単に評価できるわけではありませんから。

でもその後受け入れられているということは、作品が持つ道徳的な観点が評価されたからだと言えるでしょう。日本では隠すはずのものを、フィンランドは堂々と世界に問うたんです。この英雄物語から、聴き手は何を受け取り、生きるのか、と。素晴らしいです。

演奏は名演とも言われる、父ヤルヴィ指揮エーテボリ管。合唱もフィンランド男声合唱団。力強さもありますが、実に透明で、まるで英雄を突き放すような、暗い透明感。透徹した目が強調されているように思います。恥ずかしいかもしれないことから逃げずに、愛国者としての気概をもって作曲されたクレルヴォを、オケも指揮者も合唱団もソリストも、透徹した目を演じ切ることで作曲者の言葉のように表現しているのは素晴らしいですし、私は聴いた当初、頭をガツンを殴られたような感じになりました。こいつは日本人としては恥ずかしいなあ、と。

交響詩と言っても、独唱者と合唱が入る場面では、オペラとまでは行かないまでも、オラトリオ的な感じになります。マッティラの声も素晴らしいですし、ヒュンニネンのバリトンも表現力バッチシです。エーテボリ管の豊潤かつ吠えるアンサンブルも、作品に彩りを添えます。英雄の素晴らしさよりも、英雄も一人の人間であり、間違いを犯すものというクレルヴォが持つメッセージを、彩豊かに表現しているのは、作品に対するリスペクトがあってこそだと思います。

私達日本人は、自国の同じような作品に対して、今罵倒してはいないでしょうか?左翼だ売国奴だ、と。それは真に愛国的なんでしょうか?クレルヴォ交響曲は私達日本人全員にその問いを突き付けるとともに、小金井市立図書館がこの素晴らしい演奏を持っていることを賞賛したいと思います。本当に小金井市立図書館の司書さんたちは頑張っています。まさに図書館がもつべき、図書館法の精神に則るライブラリだと思います。




聴いている音源
ジャン・シベリウス作曲
クレルヴォ交響曲 作品7
カリータ・マッティラ(ソプラノ)
ヨルマ・ヒュンニネン(バリトン
ラウル・イスタヴァト男声合唱
ネーメ・ヤルヴィ指揮
エーテボリ交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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