かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:デュトワが振り、バンドネオンで演奏される、ピアソラ

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はピアソラ管弦楽作品集を取り上げます。

え、管弦楽作品集で、バンドネオンって、どういうこと?それ以前に、バンドネオンって?って思う読者の方も多いのではないでしょうか。それは当然の話です。少なくともクラシック音楽バンドネオンが使われることは多分ピアソラの作品以外ではまずないでしょうし。

実は、このCDを借りてきた理由こそ、バンドネオンにあるのです。以前、バンドネオン協奏曲を取り上げたことがあったと思いますが、その時は実はバンドネオンではなく、アコーディオンで代用している演奏だったのです。しかし、それは雰囲気は似ていますが、正確にはピアソラが意図したものからは若干外れます。演奏は素晴らしいものでしたが・・・・・

ですので、バンドネオンを使った演奏を、ずっと探し求めていました。図書館ではないだろうから店頭でCDでほしいなあと思っていたら、何と神奈川県立図書館にあった、というわけです。見つけた時は本当に嬉しかったです!

では、バンドネオンって?ということになりますが、ある意味アコーディオンと同じ楽器ではあるんです。

バンドネオン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%8D%E3%82%AA%E3%83%B3

ですから、音はさほど違いがないんです。けれども、鍵盤とボタンでは、音楽の流れ方が違ってくるんです。だからこそ、アコーディオンではなく、いつかはバンドネオン、と私は考えていたってわけです(別にクラウンではないんですが)。

いくつか以前も聴いたことがある作品があり重複しているのですが、それを改めてバンドネオンで聴いてみると、哀愁がありゆったりとしているにも関わらず、音楽がすべて生命力が宿っており、生き生きとしているんです。やはりピアソラが作曲した時にイメージした楽器で聴いてみるべきだなあと思います。故に、指揮がデュトワというのは、本当にナイスチョイスだと思います。オケは当然ですが、モントリオール管。

1曲目の「アディオス・ノニーノ」は意外と激しい曲なのですが、バンドネオンであるゆえか、バンドネオンが弾く旋律はどっしりとしており、「アディオス・ノニーノ」は名曲の証しである、リズムは動くが旋律は流れる感じという構造が明らかなんです。それは以前、私が以下のエントリで指摘した、タンゴの作曲家と言うよりはむしろ、新古典主義音楽の作曲家であり、その上でバンドネオン奏者というタンゴ音楽のオーソリティという「立ち位置」だということを証明するものなのです。

今月のお買いもの:ピアソラ リベルタンゴ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1017

多分元音源はデッカだと思うんですが、さすがの編集だと思います。元々フランス文化圏であるモントリオールにある故の豊潤なアンサンブルを持つモントリオール管と、そのフランスものを大得意とするデュトワだからこそ、ピアソラの音楽を豊潤に鳴らし、哀愁たっぷりに、かつ生命力あふれる演奏がさらに強まっているのだと思います。ソリストのダニエル・ビネッリはバンドネオン奏者なのですが、専門はクラシック。出身がアルゼンチンはブエノスアイレス。なるほど〜と思います。ピアソラと同郷なんですよね。そういったバックグラウンドが、指揮者とオケとの相性の良さにつながっています。

バンドネオンとギターのための二重協奏曲は古典的な構造とはすこしかけ離れたものですが、ギターの弱い音をバンドネオンが補うようになっており、オケもあまり大きな音で鳴らないなど、楽器の特徴をしっかりと理解したうえで作曲されているので聴きやすく心にしみる作品ですが、それは視点を変えればピアソラが素晴らしい作曲家である証拠でもあるわけです。4曲目「オブリビオン」は切なく哀しく、しかし美しい曲。ピアソラがタンゴというジャンルの作曲家だと断定した演奏では決してなく、むしろロマンティックですらありながらも、スタンスとしては後期ロマン派とは距離をとる新古典主義音楽に立脚しているという意思表示が、演奏のそこかしこから伝わってくるのです。

こういった、知性と感性の絶妙なミックスは素晴らしいです。知識を演奏でどう表現にフィードバックしていくのかが考え抜かれているゆえに、美しく、うっとりする演奏が楽しめるのは本当にしあわせです。店頭にあれば是非ともお買い求めいただきたいですし、図書館にあれば是非とも借りて、できればリッピングしてずっと楽しむべき音源だと思います。




聴いている音源
アストル・ピアソラ作曲
アディオス・ノニーノ
天使のミロンガ
バンドネオンとギターのための二重協奏曲
オブリビオン
3つのブエノスアイレス・タンゴ風楽章
ダンサ・クリオージャ
タンガーソ
ダニエル・ビネッリ(バンドネオン
エドゥアルド・イサーク(ギター)
ルイーズ・ベルラン(オーボエ
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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