神奈川県立図書館所蔵CD、今回は沖縄出身の作曲家、金井喜久子のピアノ曲全集を取り上げます。
金井喜久子という作曲家は、あまり知られていないのではないでしょうか。実際私も図書館で棚に見つけた時、初めて聴く名前でした。
ところがこの人、意外な人たちの親戚なんですね。サッカーで有名なジョン・カビラや川平慈英の親戚なんです。
金井喜久子
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E4%BA%95%E5%96%9C%E4%B9%85%E5%AD%90
旧姓が川平。なるほど〜と納得です。とはいえ、ではなぜこの音源を借りてきたのかと言えば、そのタイトルに惹かれたんです。「琉球カチャーシー」。え、なんでクラシックの棚で?って思いました。カチャーシーと言えば、沖縄を代表する民謡をBGMにする踊りだからです。
それと、日本人の女性の作曲家ということもありました。今では、少ないとはいえ活躍しているクラシック系の女性作曲家はいることを知っていますし、クラシックに限らなければ、多くの女性作曲家が、所謂「アーティスト」とか「シンガーソングライター」という肩書で活躍しています。
しかしこの人、生まれは戦前で、20世紀初頭であるわけです。ものすごくたくさんのものを背負って生きることになってしまったのは、彼女が志した「沖縄音楽を広める」という使命感からだったことでしょう。
で、このアルバムがどのような編集方針を持っているかと言えば、金井喜久子という作曲家は、20世紀音楽のすべてを果実として受け取った作曲家だった、と言う事に尽きると思います。なぜなら、金井の音楽の特徴は、このアルバムでも沖縄民謡が使われている作品が4つもあるように、新古典主義音楽と、民謡採集という19世紀〜20世紀にかけての運動が如実に表れているからです。
その代表的な作品が、タイトルにもなっている「琉球カチャーシー」ですし、その前に収録されているバレエ音楽「龍神祭り」です。この二つこそ、金井喜久子という作曲家のスタンスを、はっきりと示しています。
沖縄民謡が持つ明るく楽しい旋律が、みごとにクラシック音楽として芸術へと昇華されているのを聴くのは驚きとともに、日本人の作曲家の秘めたポテンシャルを示しています。それが楽しいのですね〜♪
戦前の本土の作曲家たちがそうであったように、金井も沖縄の旋律を見事に西洋音楽と一体化させ、何も遜色ないものにしています。最後に収録されている交響曲第1番の第4楽章のピアノスケッチは当時の指導教員から後期ロマン派の雰囲気を提案され飲むことになったため沖縄の雰囲気がほとんどなく、それゆえに金井は採用を拒んだとも言われています。それでも作品のレベルとしては習作は言えないほどです。その下地があってこそ、沖縄民謡を使ったクラシック音楽が生まれたと言えるでしょう。
演奏するのは、これも沖縄出身の高良仁美。ヨーロッパにおいて祖国の作曲家だとリスペクトが半端なく、素晴らしい演奏が多いように、この演奏もおなじ沖縄出身だからこその共感とリスペクトに溢れ、生命力あふれる演奏になっているのが素晴らしいです。タッチもしなやかで、そのせいなのか、沖縄民謡がしっかりとクラシックされているのが、このアルバムの聴きどころだと言えるでしょう。是非ともCDで他の作品が聴きたいと思う作曲家と、演奏家です。
聴いている音源
琉球カチャーシー〜金井喜久子ピアノ曲全集
金井喜久子(1906-1986)作曲
バレエ音楽「龍神祭り」序曲(1974)
琉球カチャーシー(1955)
ブラジル・ラプソディ
琉球譚詩曲(1951)
アダージョとアレグロ
琉球狂詩曲(1947)
交響曲第1番、未発表のフィナーレ(ピアノ・スケッチ)(1939)
高良仁美(ピアノ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村