かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:声楽アンサンブル・オリエンス 第8回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成29年7月22日に聴きに来ました、声楽アンサンブル・オリエンス第8回定期演奏会の模様をお伝えします。

アンサンブル・オリエンスはこのブログで取り上げるのは2回目で、団員の方から是非にと言われまして、聴きに行きました。

コンサート雑感:声楽アンサンブル オリエンス 第7回定期演奏会
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1431

今回は、この団の取り組む作品を見たような気がします。そもそもは、オリエンスという名前の通り、キリスト教の合唱作品を主に取り上げる団体なのですね。その意味では、この第8回定期演奏会は面白いプログラムだったと思います。なぜなら、採り上げる作曲家がパレストリーナとビクトリアだったからです。しかも、会場は第7回と同じ淀橋教会。

えーって思う読者の方がおられるかもしれません。それも当然で、以前も申し上げましたが、淀橋教会はプロテスタントなんですね。でも、パレストリーナとビクトリアは二人ともカトリックのためにしか作品を書いていません。当然、今回もカトリックのための作品が並びました。

プログラムは最後に記載するとして、その柔軟さが面白いんです。本来ならバッハのカンタータこそ似合うはずの場所で、カトリックの作品を演奏してみたら、どうなるか。

いやあ、全く違和感ないんですよ・・・・・むしろ、第7回の時のような柔らかさに、残響の素晴らしさが加わって、音に包まれるんです!この経験は素晴らしかったです。コンサートとはこういうものだよなあと、実感した次第です。

使ったホールも前回と同じ小原チャペルで、物理的に何かが変わったわけではありません。しかし、前回よりも残響が響いたのは、合唱団が何かしたわけでもないです。明らかに作品に起因すると考えます。

今回取り上げられた作曲家たちはみな、ルネサンス期の作曲家です。勿論、ルネサンス期はキリスト教が中世よりは後退したとはいえ、ヨーロッパの人々の思想的中心であったことに変りはありません。文化が教会中心でなくなっただけです。

ですから、教会音楽も中世的な部分はあるわけです。しかもパレストリーナやビクトリアは当時有名な作曲家です。大聖堂で演奏するような作品もたくさん書いた人たちですが、そのどれも充分に残響を響かせる作品なのです。そうやって音に包まれることこそ、神の存在を感じることなんですね。

ですが、それがカトリックだけではなく、プロテスタントの教会であっても同様なのである、ということを今回気づかせてくれたと思います。ソプラノも本当に素晴らしかったですし、演奏水準は確実に前回よりも上がっていたと思います。その上で、前回同様今回もフレージングが素晴らしい!

のに、バッハでは残響が短めでそのように聴こえましたし、そして今回は残響が1.5秒どころかもっとあるように感じたのです。これは明らかに作品に起因すると言えるでしょう。

採り上げられた作品もユニークなものがありました。カバニーリュスの「第1旋法によるパッサカーレス」は、所謂パッサカリアで、バッハもよく作曲したものですが、レソラの三音しか使わずに、壮大な世界を表現している作品です。それがパッサカリアとして展開される・・・・・単純性が複雑性となって私たち聴衆を包み込むのは素晴らしい経験でしたし、さすがプロだなあと思いました。一応付記しますが、オルガンとリコーダーも前回と同じ顔触れで、今回も素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれました。

リコーダーも加わったアラウホの「第2旋法による、2つのソプラノの分割ストップのためのティエント」は、ルネサンス期スペインのオルガンに分割ストップがあり、それを駆使した作品なのですが、左右の入れ違いがとても自然で、そこに加わるリコーダーの清らかな音・・・・・・素晴らしい!え?ティエントって何って?スペインではそのような作品があったのですが、言わば現代ではソナタです。この作品であれば、フルート・ソナタだと言えばわかりやすいでしょうか。

ティエント
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%88

ルネサンス期はまだまだ音楽が発展途中で、オーケストラのような重厚な作品は皆無ですが、それ故様式や一つ一つの音に対して実験的な要素も沢山ある時代です。実は紐解けば本当に面白い時代なのです。その意味では今回の演奏会は、ルネサンス期音楽の魅力がたくさん詰まった作品だったと言えるでしょう。二人の作曲家のミサ・ブレヴィスに使われているモテットの原曲が呈示されたり、実にルネサンス音楽、或はバロック以前のキリスト教音楽の特色が味わえてなお、素晴らしいアンサンブルが聴ける演奏会だったと思います。

今回は指揮する小笠原氏の独唱はあまり見られませんでしたが、合唱団の成長もあり、本当に素晴らしかったです。勿論、アマチュアらしい不安定さもあるんですが、思い切った発声による低音部の美しさは格別でしたし、アルトやバスは導入の役割もあるので一番最初に歌い始めないといけないプレッシャーの中で本当によく歌いきったと思います。ソプラノは以前に増して綺麗!うっとりです・・・・・

男性も頑張っていました、テノールはどこも少ない中でしっかりと発声しており、練習をしっかり積んできたことをうかがわせるものでした。自分が歌っていた時が思い出されてきまして、どこかうっとりしながらも(夜行バスで大阪から帰ってきて寝る寸前でしたがm(_ _)m)感動していました。

次回も予定が合えば、聴きに行きたいなあと思います。また場所がおなじ淀橋教会小原チャペルなのであれば、次はどんな作品が繰り出され、どんな演奏になるんだろうと、期待が膨らむばかりです。




聴いてきたコンサート
アンサンブル・オリエンス 第8回定期演奏会
ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ作曲
枯れた谷に鹿が水を求めるように
おお、大いなる神秘
ジョヴァンニ・バッティスタ・ボヴィチェッリ作曲
ああ、わたしはこんなに傷ついて
ジョヴァンニ・ピエルルイージ・ダ・パレストリーナ作曲
ミサ・ブレヴィス
トマス・ルイス・デ・ビクトリア作曲
おお、大いなる神秘
ファン・カバニーリュス作曲
第1旋法によるパッサカーレス
F-コレア・デ・アラウホ作曲
第2旋法による、2つのソプラノの分割ストップのためのティエント
トマス・ルイス・デ・ビクトリア作曲
ミサ曲「おお、大いなる神秘」
古橋潤一(リコーダー、ボヴィチェッリ、アラウホ)
能登伊津子(オルガン)
小笠原美敬指揮
声楽アンサンブル・オリエンス

平成29(2017)年7月22日、東京新宿、ウェスレアン・ホーリネス教団 淀橋教会 小原記念チャペル

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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