かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集27

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第27集を取り上げます。

第27集は、ドニゼッティの作品の編曲と演奏会用パラフレーズが収録されています。パラフレーズですから、ドニゼッティらしさよりもリストらしさが全面にでる作品となっています。

特に1曲目の「ルチアとパジリーナの2つのモティーフによる演奏会用ワルツ S214/3/R155」は、リストの超絶技巧で料理されており、知っているひとからすれば、似ていはいるけれどとなることでしょう。

ガエターノ・ドニゼッティ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A8%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%8B%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3

こういった作品は、リストの技巧を見せるだけでなく、演奏会で聴衆を喜ばせるために作られました。ドニゼッティの音楽が、リストの手にかかるとどうなるのだろう・・・・・・そんなワクワク感をもって聴衆は演奏会場へと足を運んでいたわけで、生存時のリストの熱狂ぶりがうかがえるのはまさにこういった作品たちだと言えるでしょう。

え、だって他の人の作品でしょ?本当は自分の作品を聴いてほしいと思うだろうし、聴衆もそうなのでは?と現代の私たちは考えてしまいますが、リストが前期ロマン派におけるバロック的作曲家だったとすれば、それは的外れです。聴衆は必ずしもリスト本人の作品だけを望んではいかなったでしょう。他者の作品の編曲やパラフレーズが数多く残されているのは、それを聴衆が望んだからです。

リストが自ら喜びをもって編曲やパラフレーズ、或はトランスクリプションした作曲家はおそらくベートーヴェンではないかと思います。それ以外は史料を確認してみないと何とも言えません。同時代のライバルたち、例えばショパンシューマンメンデルスゾーンと言った作曲家達なら別でしょうけど、それ以外ははっきりと断言しないほうがいいだろうと思っています。

そもそも、リストはピアノ協奏曲第1番を書きあげた時、猛烈なバッシングを受け、精神的に参ってしまいしばらく作曲ができないことがありました。循環形式という様式を確立したにもかからわず、です。その新しさが理解されず、悩んだ時期もあるのです。

作曲家が自立する時代、求められていたのはいかなるものだったのか・・・・・こういった作品はうかがい知ることができるだけに、リストの個性が全面に出ている作品よりも重要ではないかと思うくらいです。リストの個性を理解する上にも・・・・・

演奏者は勿論ですが、私たち聴衆もできれば、こういったパラフレーズを聴いて、リストの作品を、演奏者と共に共感し、味わうことができれば、さらに新たな地平が拡がることでしょう。

演奏は前にこの全集でも演奏しているウィリアム・ヴォルフラム。正確な指使いが目立つ演奏ですがかといって嫌味ではなく、むしろその技術の高さが見事な表現へと昇華しており、実に伸びやかで喜びに満ちています。その演奏からすれば、必ずしもリストはドニゼッティの音楽を嫌ってはいなかっただろうと推測されますが、果たして?

少なくとも、ヴォルフラムはリストへのリスペクトとして、思い切りよく伸びやかに演奏しています。生命感あふれる、なんか生きていてよかったと思えるような演奏です。

これは私の私見ですが、リストはおそらく、嫌いな作曲家はこういった作品を残さないのではないかなあと思います。ただ、編曲にするのかパラフレーズにするのかとなれば、その作品に対するリストの判断が反映されてくるでしょう。となれば、それは複雑なリストの心理を反映しており、ヴォルフラムはしっかりと汲み取り、表現する喜びの中に落とし込んでいる、私はそう受け取っています。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲、編曲
ルチアとパジリーナの2つのモティーフによる演奏会用ワルツ S214/3/R155
「ルクレツィア・ボルジア」の回想 S400/R154
ランメルモールのルチア」の回想、アンダンテ・フィナーレ S397/R151
ランメルモールのルチア」より葬送行進曲とカヴァティーナ S398/R152
「フォヴォリータ」より「優しき魂よ」のカヴァティーナ S400a
ポルトガルセバスティアン」より葬送行進曲 S402/R156
ウィリアム・ヴォルフラム(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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