神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、元音源ナクソスの、リスト、ピアノ作品全集をシリーズでご紹介しています。今回はその第18集をご紹介します。
え、どこまで全集あるんですかと目を丸くしている人も多いかと思います。確か、以前ご紹介したショパンもここまではなかったかもしれませんね。
はい〜、まだ、10回ほどは残っていますよ〜
で、遂にベートーヴェンの交響曲のトランスクリプションに本格的に突入です。最近では、ベートーヴェンの交響曲のリスト篇をきちんと取り上げているCDはナクソスくらいになりました。以前は幾つかあったのですが・・・・・
この第18集はベートーヴェンの交響曲トランスクリプションの第2集となるもので、第1番と第3番「英雄」が収録されています。
まず特徴的なのは、この作品はトランスクリプションなので、恐らくオケの演奏を聴き慣れているひとからすれば、多少の違和感を感じると言う点です。その理由は勿論散々述べていますが、そもそもフル・オーケストラの作品をピアノ1台の演奏へと「落とし込んでいる」からです。
つまり、オケの楽器ごとにパートがあるものを、左右二つの手という、2パートにするわけです。当然、原作とは異なる部分が出てきて当然なのです。
第1番では原作にない旋律が出てきたり、第3番では第1楽章の有名すぎる和音がヘンに聴こえたり。ところがです、聴きますと原作の雰囲気はしっかりと残っているから不思議なんですよね〜。
それがリストの能力であると言えます。もしかすると、リストは演奏者よりももともと作曲者のほうが向いていたのではないか、とさえ思うくらいです。
メンデルスゾーンがリストの演奏を評して「最高の演奏だった。しかしそれは最初で最後だった」と述べたのは、単なる皮肉ではなく、マルチな才能を認めたうえで、それがメンデルスゾーンが聴いたときは中途半端だったからなのかもしれません。わたしからすればものすごい作品を書いているんですけどね^^;
その上で、リストという作曲家は前期ロマン派において出現したバッハ的な作曲家である、と思っています。つまり、超絶技巧ばかりが目立ちますが実際には音楽職人だった、ということです。これらベートーヴェンのトランスクリプションは1860年代の作品ですが、ちょうど演奏者から作曲者へとリスト自身が変化していく時期です。ベートーヴェンの交響曲をトランスクリプションすることで、自らの力を蓄えて行ったのではないかと思います。
バッハも、カンタータを作曲するうえで、先人のコラールを使いながら、自分の作品を磨き上げていった人です。このベートーヴェンの交響曲のトランスクリプション、特にこの第18集に収録された第1番や第3番を聴いていますと、同じ鍵盤作曲家バッハへの尊敬が見て取れるように思います。そしてそれはピアノで持って壮大な世界を引き継いだベートーヴェンへの尊敬へとつながっているのだと思います。
演奏はコンスタンティン・シチェルバコフ。このベートーヴェンの交響曲トランスクリプションは全てこの人の演奏なのですが、ピアノだからと言ってどんどん進むのではなく、主旋律がヴァイオリンである交響曲のトランスクリプションを丁寧に、かつダイナミックに演奏しています。ピアノ1台しかないのに、そこにはベートーヴェンの原作が持っている壮大で壮麗な世界がしっかりと表現されています。
特に第3番「英雄」が圧巻で、第1楽章はテンポも速いので当然の事、第2楽章の葬送行進曲はゆっくりと落ち着いて、悲しみが湛えられていますし、ベートーヴェンの交響曲では正式に採用されたスケルツォもAとBのコントラストが見事!第4楽章では主題が「プロメテウスの創造物」からとらえたことがはっきりと解かるだけのドラマティックさ!
もしかすると、もうオケはいらないかも・・・・・とさえ思ってしまいかねないだけのクオリティを持っています。是非ともこのシリーズを借りるなり買い求めるなりしていただいて、原作とどう違うのか、そしてその凄さを体感してみて下さい。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
フランツ・リスト編曲
交響曲第1番ハ長調作品21
交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
コンスタンティン・シチェルバコフ(ピアノ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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