かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:グリーグ 交響曲ハ短調

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はグリーグ交響曲を取り上げます。

こういった作品をライブラリにそろえるなんざあ、さすが図書館と思いますねー。

さて、グリーグと言えば、管弦楽作品やピアノ曲で有名な人ですが、人気はいまいちかなあって思います。ピアノ作品では本当に素晴らしい業績を残した人なのですが・・・・・

多分、その理由は、交響曲が知られていないという、「交響曲至上主義」とも言うべきものが、日本にあるからではないだろうかって思います。なら、グリーグ交響曲はこれですよというのが、この音源です。

グリーグ交響曲を1曲しか作曲していません。その理由はどうやら、スヴェンセンの作品を聴いて衝撃を受けたから、というのだそうですが・・・・・・

交響曲 (グリーグ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0)

一度、わたしもスヴェンセンの作品を聴いたことがありますが、確かに民俗色は強かったかな、と思います。まあ、確かにグリーグ交響曲は、ドイツ色が強い作品ではあります。それは私も聴いてみてそう思います。

ただ、だからと言って作品番号を付けずにひっこめる必要があったのだろうかとも思うんです。作品としてはよくできていますし、二十歳前後で書いた作品としては、習作の域は出ているだろうと思います。

まあ、そもそも作曲家を評価するときに、交響曲のあるなしを基準にするって言うのもおかしな話なんです。ベートーヴェンの軛が大きいのかなあとも思いますが、そのベートーヴェンも32曲の素晴らしいピアノ・ソナタを書いていることなんて、交響曲好きの人なんて頭の中からそっくり抜け落ちるのですから(ええ、以前の私です!もうそこには戻りたくありません!)。

当時であれば、ブラームスでしょうね。でも、このグリーグの行為は、一つの示唆だと思っています。何か?

それは、たとえドイツ的であっても、もしナショナリズムが強ければ、さらに民族色の強い旋律を使って続きを書けばいいわけなのですが、そうしなかったという事は、私は「民俗色」という言葉を使いましたが、ナショナリズムの強い作品を書きたかったのではなく、パトリオティズムが強い作品を書きたかったからではないか、と思うからです。

グリーグが作品を書いた時代のヨーロッパは、19世紀ナショナリズムの時代です。音楽としては普通に国民楽派が作品を書いていた時代です。そうした中、グリーグは民族色というよりはむしろ、民俗色が強い作品をピアノ作品や他の管弦楽作品で生み出しています。カップリングの「秋に」作品11がそうした作品ですが、聴き比べますと一目瞭然で、グリーグが書きたかった作品は、民族主義を標榜するのではなく、ただ単に愛国心を標榜する作品だったのです。

だとすれば、グリーグが作品を取り下げたのは自然なことだったでしょう。勿論、本当は自分の理想とする交響曲を書きたかったのではないかと思いますが、歳をとるにつれ、自分の理想と時代とが乖離していることに気づいたのではないかと想像しています。それは、精神的な理由で住居を何度も変えた、グリーグの人生から、私は導き出しているのですが・・・・・

ここではあえて、ウィキを出さないことにします。ウィキでは少し説明不足だなあと思っているので。ピアノ作品全集などのブックレットのほうが分かりやすいかなあと思います。お持ちの方は是非読んでいただきたいですし、無い方は購入なさってもいいかなと思いますが、都会からどんどん地方へと住処をかえています。それは創作のためと言われていますが、どうやら精神疾患をいやすためという理由のほうが大きかったようです。

それは当時の、管弦楽至上主義、もっと言えばベートーヴェンの軛が重かった、19世紀という時代が反映しているとも言えるでしょう。それがナショナリズムと結びつき、やがて国民楽派という一ジャンルを形成していく中で、愚直に民俗的なものを取り入れて素朴かつ壮麗な作品を作りたいグリーグとは、相いれないものになって行ったことでしょう。

演奏はとても率直、端正で、作品が持つドイツ的な色を十分に伝えてくれていると思います。一つはスウェーデンのオケですが、実はグリーグが生きた時代のノルウェースウェーデン領だったので、スウェーデンのオケが演奏する都いう事は不自然とは言えないことですが、実に素晴らしいアンサンブルです。丁寧というか、尊敬のまなざしが演奏から聴き取れます。

カップリングの「秋に」も、ノルウェー的でありながらも、実はドイツ的な部分もある作品であることを、素直な演奏で伝えてくれています。グリーグの初期作品はかなりドイツの影響を受けていたということを、如実に伝えてくれます。その一方で、二つの作品とも背景に青空が見えるようで、爽快です。重厚ではないんです。それがまたいい!

グリーグのいわゆる「ペール・ギュント」は重厚な作品も含まれるため人気ですが、こういったそれほど重厚ではないけれども、しかし壮麗さをかねそなえる作品を聴くことは誠に爽快です。こういった音源に出会えることが図書館で借りる醍醐味だと思います。




聴いている音源
エドアルド・グリーグ作曲
交響曲ハ短調
演奏会序曲「秋に」作品11
オッコ・カム指揮
イェーテボリ交響楽団
スウェーデン国立管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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