かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:プーランク スターバト・マーテル他

今月のお買いもの、平成27年9月に購入したものをご紹介します。まず一つ目は、ディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ナクソスから出ているプーランクスターバト・マーテル他のアルバムです。

プーランクの合唱作品は、「人間の顔」を中心としてご紹介してきていますが、宗教曲に関しては殆ど取り上げていないかと思います。そんなこともあり、この一枚は選択しました。

まずは1曲目のスターバト・マーテルです。作曲は1950年と、戦後の作品で、20世紀音楽特有の不協和音が使われている作品ですが、ロマン派以降、特にフランス6人組新古典主義音楽で確立した和声の延長線上にある、ふくよかな音楽を持つ作品です。

スターバト・マーテル (プーランク)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB_(%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF)

始めレクイエムにする予定がスターバト・マーテルになったとありますが、ここにプーランクの死者に対する眼差しを見て取れるように思います。レクイエムは、生き残った者が死者を悼むものですが、スターバト・マーテルだと、死にそうなほど傷ついた相手を悲しむものです。

スターバト・マーテル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%AB

私は、プーランクの心の痛みが見て取れるのです。レクイエムであれば、死んでしまったことを受け入れているわけですが、スターバト・マーテルであれば、まだ死を受け入れられていないのです。歌詞を見て頂ければ一目瞭然ですが、聖母マリア磔刑になって傷ついている我が子イエスを見て悲しんでいるのがテクストです。そう、まだ生きているのです!

つまり、プーランクの心の中では、悼む対象である友人、クリスチャン・ベラールはまだ生きているのです。事故死しているのに・・・・・

それほど、ベラールの死がショックだったことを意味します。だからこそ、死んでいる前提であるレクイエムは書けなかった、と言えるでしょう。ナクソスとしては珍しく、ダイナミックさがあり、それゆえに劇的な部分も散見される演奏となっていますが、それはこの作品の特色を、その背景まで知ったうえで存分に表現していると言えるでしょう。

その上、明るい部分やおどけている部分もあり、友人の「死」を必至に受け入れようとする、プーランクの心の内を表現した作品だと言えましょう。

2曲目が、グローリア。グローリアのみというのは、バロックでよく作曲されたものですが、フランス6人組、つまり新古典主義音楽のグループのひとりとしてのプーランクらしい作品だと思います。作曲は1959年とスターバト・マーテルよりも新しい作品ですが、冒頭ではなぜかカンタータ「人間の顔」の最終曲「自由」に似た旋律が出てきます。英文ブックレットには何も言及がないですが、不思議な一致だと思います。

3曲目が黒衣の聖母への連祷。この1曲だけは戦前の1936年の作曲ですが、3曲の内もっとも神秘的であり、スクリャービンをも想起させるくらいです。それでいて理性的で、畏れが前面に出ている作品だと言えるでしょう。演奏も、静謐さが支配し、エロースすら感じられます。

プーランクの宗教曲はどんなものかという興味から買った一枚ですが、難度くり返し聴いても飽きず、疲れません。この「疲れない」というのはプーランク作品全てに共通するキーワードだと私は思っていますが、それでいて、外的美ではなく、そこに確実に内面性も潜んでいて、時として前面に出てきます。ふくよかで美しく、かつ内面性に富むこれらの作品を軽めの発声でしっかりかつ力強く演奏する合唱団は素晴らしい!

オケもしっかりと合唱団とアンサンブルしており、全体的に豊潤でつやのある演奏になっています。聖母マリアの悲しみを表現しているはずなのに、何故か暖かみすら感じるその演奏は、確実に私達の心の中に「人間としての秘めた感情」を思い起こさせてくれることでしょう。




聴いているCD
フランシス・プーランク作曲
スターバト・マーテル
グローリア
黒衣の聖母への連祷
ダニエル・ボルスト(ソプラノ)
エリック・ルブラン(オルガン)
マルク・ヴィエイュフォン(ヴァイオリン)
イル=ド=フランス・ヴィットリア地方合唱団
ミッシェル・ピクマル指揮
シテ島管弦楽団
(Naxos 8.553176)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村