かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:RvB室内管弦楽団第32回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成26年10月19日に聴きに行きました、RvB室内管弦楽団定期演奏会を取り上げます。場所は飯田橋にある、トッパンホール。

まず、オケの紹介から参りましょう。RvB室内管弦楽団は東京のアマチュアオケで、室内オケとして意欲的な活動をしているオーケストラです。

http://lvb.tea-nifty.com/

ホームページがなくてブログだけというのも珍しいですが、私はFBで知りました。正式には綴りにはピリオドが入ります。それは勿論、楽聖ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの略です。そのためか、プログラムには必ずベートーヴェンの作品が入ります。

今回のプログラムは以下の通りです。

�@ベートーヴェン フィデリオ序曲
�A苫米地英一 尺八と管弦楽のための3つの連画
�Bシューベルト 交響曲第8番ハ長調D944「大交響曲」(つまり、ザ・グレイト)

え、「ザ・グレイト」が重複しても行ったのですかと言われる方もいらっしゃるかと思います。はい、オーケストラ・HALさんとプログラムは被ったにも関わらず、行きました。むしろ、比較するためにという目的もありました。別のオケで聴いたらどうなのだろう、と。

そもそも、このオケは前回の第31回に行きたかったのです。メインが、アマチュアオケには珍しく、佐藤眞の「土の歌」。そんなオケ、なかなかありません。すでに他のオケの予定を入れていたのでなくなく行かなかったのですが・・・・・

さらにそれ以前にも魅力的なプログラムを組むオケだと思っていましたので、どこかで聴きに行きたいと思っていました。今回でいえば、シューベルトだけではなく、その前プロの「尺八と管弦楽のための3つの連画」が目に留まったのがきっかけです。

さて、まず第1曲目のフィデリオですが、いろんな演奏で何度も聴いている、クラシックファンであれば聴き慣れた作品かと思いますが、実はこの正式なオペラの序曲となったフィデリオ序曲は、なかなか演奏される機会がありません。その理由は、オペラの序曲としては異端であるという点にあります。

このフィデリオ序曲、以前もマイ・コレで取り上げていますが、その時にも触れているかと思います。この作品、旋律がオペラと関係ないのです。それは前奏曲としたワーグナー以上に異端で、前衛的とも言えるでしょう。だからこそ、最近はコンサートピースとしては演奏機会が減っています。

フィデリオ序曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%87%E3%83%AA%E3%82%AA#.E3.83.95.E3.82.A3.E3.83.87.E3.83.AA.E3.82.AA.E5.BA.8F.E6.9B.B2

ウィキでは「もっとも適している」とありますが、序曲がどういう作曲を通常するのかという視点からは、実は異端中の異端です。通常は調性などを考慮して、だからこそオペラの旋律を使うのです。それが基本的にレオノーレの第2番、第3番ですが、それとは全く違う、オペラにはない旋律を別に作って、序曲としたのが現在の正式なフィデリオ序曲です。

それはそれで、ベートーヴェンの新しさの象徴でもあります。なるほど、この作品を1プロに持ってきたか〜と、感心した次第です。

で、演奏はといえば、アマチュアオケ特有の「痩せ」はあったものの、アンサンブルはとても揃っていて素晴らしかったと思います。ただ、もう少しppからffまでの差をつけてもよかったかもしれません。それは次の作品で問題になるのですが・・・・・

さらに、冒頭金管がそろわなかったのが気になりました。初めはオケに問題があるのかなと思っていましたが、全体を俯瞰すれば、それは指揮者の責任であろうと思います。後で触れますが、シューベルトは問題がなかったので・・・・・恐らく、指揮棒の打点の出し方、アイコンタクトなど、指揮法に問題があったのだろうと思います。そうでないと、シューベルトでうまくいってベートーヴェンでうまくいかなかったという説明が付かないからです。勿論、演奏者が指揮棒を見ていなかったという可能性もなくはないんですが・・・・・

合わなかったのは、序奏の後の金管だったからです。その前には、全休符すらあります。それで準備ができないってことはないだろうなあと思います。勿論、金管は準備不足気味であったことも事実なんですが。もしかすると両方共だったのかもしれません。

これは私が中大オケにも指摘したことですが、6拍前から息を吸ってみる、というのもアリだと思います。兎に角、準備をきちんとしないと、管楽器は音が出てくれませんから・・・・・

次の「尺八と管弦楽のための3つの連画」は、指揮者苫米地さんの作品であり、この日が世界初演でした。ですから、完全を期するというのは難しいものではあるんですが、それでも、気になったのがppからffまでの差が小さいことだったのです。

この作品は、言わば尺八のための協奏曲なのです。3つの楽章のイメージに応じて、3種類の尺八が用意されており、言わば尺八という楽器の入門編とも言える、素晴らしい作品であるのですが、それをオケがきちんと認識できていなかったように思います。いや、認識できているけれども実際には実行できなかったとフォローしておきましょうか・・・・・

もしかするとアマチュアオケには酷な作品だったのかもしれません。尺八という楽器は大きな音も出せますが、不安定なのです。ですから、オケとアンサンブルする時は、オケが音量に気を使う必要があります。まさしく、バロックにおいてピアノフォルテチェンバロがそれほど大きな音が出なかったからこそ、編成が小さかったように。

恐らく、自演している作曲家である指揮者苫米地さんは、オケの音量はもう少し小さ目で曲を書いたと思います。あくまでも、尺八とオケによる「絵」なのですから、それぞれが存在感がありつつ混然一体となる必要があったように思うのです。現代作品は決して弾き慣れていないはずはないと思うのですが、もしかすると尺八のような楽器とのコラボレーションがなかったのかもしれません。まあ、今後例えば、フラウト・トラヴェルソなどと共演するときのいい経験になったように思います。どんな組み合わせがあるかなんて、このオケだと分からないなと思いますから。

ただ、この曲で教えていただいたこともあります。それは、尺八という楽器が充分モダン・オーケストラとアンサンブル可能であるということは、リコーダーでも可能なのである、ということを示したという点です。最近、私はバッハのブランデンブルク協奏曲を取り上げた時に、こう述べています。

「ただ、この第5番でいえば、この演奏はモダンですからフルートが使われていますが、実際はフラウト・トラヴェルソなのか、それともリコーダーなのかは、厳密に言えば問題視したいなと思います。楽譜にただ「フルート」とあれば本来はリコーダーだと思うのですが、フラウト・トラヴェルソとあれば、フルートになるからです。これはモダンであっても差をつけるべきだと思っています。

というのも、リコーダーは決して現代でも廃れた楽器ではなく、実際に日本では学校教育でも使っている楽器なのです。だからこそ、モダンであってもリコーダーを使ってみるという冒険も、してみるべきだと思います。モダンだからフルートというのは、ちょっと安易かな〜って思います。

その点では、リリンクのこの姿勢はあまり評価できません。演奏は素晴らしいのですが、リリンクであるからこそ思い切ってリコーダーを使ってみるということをしてみてもよかったのでは?と思います。まあ、慣習ではフルートとなっていますからそれに従ったまででしょうが、それでも古楽演奏がメジャーになった今日では、ならば現代のリコーダ―で吹いてみる、というのもアリだと思います。ピッチに問題なければ、十分行けるでしょう。恐らく楽譜上では単に「フルート」とあるだけでしょうから、であれば当時はフルートの元祖であるトラヴェルソではなく、リコーダーで演奏したはずですから。

リコーダーで聴いたブランデンブルクは、いったいどんな音色になるのかを想像しただけでも楽しいです。バロックはそういった面白さに目覚めると、深いものがあり、ブランデンブルク協奏曲だけでもそんな材料を提供してくれます。「様々な楽器による協奏曲」だからこそ、そんな面白さが詰まっているのです。」

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ ブランデンブルク協奏曲2
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1220

こういったことを、邦楽器が示したということは大きかったと思います。日本の伝統楽器が、バロック演奏に関して一石を投じたことは意義深いと思います。こういったことが、邦楽器の復権とオーケストラの伝統楽器入りに多大な貢献をするだろうと思っています。素晴らしい作品でした。それゆえに、その素晴らしさを半減させてしまったオケには、残念な気持ちがあります。

さて、後半のシューベルトのザ・グレイトですが、これはもう申し分ない!ハルオケさんの演奏と比べても勝るとも劣らない、素晴らしいアンサンブルがそこには存在していました。特に、冒頭金管があったのは完璧!ですから、フィデリオは指揮者に問題があったのではないかと想像したわけです。前奏なしでですよ・・・・・ポテンシャルは充分秘めているオーケストラだと思います。

プログラムでは歌曲的だと書かれてありましたが、演奏はむしろ筋肉質の、がっちりとした交響曲でもあるということを明確に示した演奏で、シューベルト交響曲は決して甘いのではないということを演奏で示したと思います。ザ・グレイトは長いというイメージがありますし、実際ハルオケさんではそこそこの演奏時間がかかったわけですが、RvBさんでは筋肉質な演奏がさらに短く感じられ、実際に短かったのですから、新しいシューベルト交響曲像というものを呈示したと言えるかと思います。

考えてみれば、RvBさんのような室内オケ程度の編成が、シューベルトが作曲した当時の当たり前の大きさであり、もしかするとRvBさんでも大きいのかもしれません。その点では、むしろナイスチョイスと言えるでしょう。ここではppからffまでが前2曲よりはできていたかなと思います。ただそれはハルオケさんよりはどうかな〜と思いますから、それは今後の精進課題でしょう。それができれば、すごいオケだと思います、はい。室内オケのアマオケというのは決して多くない中で、年1回ではなく2回程度を行うのは貴重な存在です。大変だとは思うんですが、ポテンシャルはあるので、期待したいです。

ホール選定は今回よかったと思います。次は府中とのことですが、ウィーンホールでというのもいいチョイスだと思います。アマチュアオーケストラが大きいホールでやる必要は必ずしもないと思っています(宮前フィルも地元密着とは言え、宮前市民館のキャパは900席ほどですし)。こういうオケはいい演奏をすると思います。自分たちの特徴をよくつかんでいますから。それだけに、「尺八と管弦楽のための3つの連画」は残念でした・・・・・でも、作品はいいですので、自分たちのレパートリーにしていってほしいです。尺八という楽器の演奏の幅も広がりますし、何より演奏機会が与えられることが素晴らしいのです。その誇りは持ってほしいなと思います。

こういうオケは応援したくなります。室内楽演奏会まで行けるかは未知数ですが、定期演奏会は出来るだけ足をはこびたいと思います。




聴いてきた演奏会
RvB室内管弦楽団第32回定期演奏会
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
歌劇「フィデリオ」序曲作品72b
苫米地英一
尺八と管弦楽のための3つの連画
フランツ・シューベルト作曲
交響曲第8番ハ長調D944「ザ・グレイト」
田野村聡(尺八)
苫米地英一指揮
RvB室内管弦楽団

平成26年10月19日、東京千代田区トッパンホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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