かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューマン ピアノ作品全集1

今月のお買いもの、「3つ目」は、シューマンのピアノ作品全集です。13枚組という、まさしく全集にふさわしい重厚感です。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。

「3つ目」としたのは、当然13枚組であるからでして、神奈川県立図書館所蔵CDと同様に、1枚ずつご紹介していこうと思います。ピアノは、ヨルグ・デニス。余り聞き慣れないピアニストです。ネットでは検索に引っかかりません(TOT)

そもそも、このCD輸入盤で、イタリアのNouva ERA レコードのアリオーソというレーベルです。値段も2千円くらいだったかなと思います。

シューマンのピアノ作品は、現在神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーで取り上げているモーツァルトのピアノ作品を借りていた頃よりもさらに前から、ずっと聴きたいと思っていました。いや、幾つかの小品、或は作品集を借りる、或は購入すれば簡単です。

ところが、当時すでにショパンの作品全集を借りてしまっていた私としては、同時代のシューマンも全集でそろえ、俯瞰してみたいという想いがあったのです。ベートーヴェンという偉大なピアニストの後に出でた偉大な二人の前期ロマン派を代表するピアニストの作品を、片方は全集を持ち聴き、もう片方は一部だけというのも、俯瞰するという意味では偏りがありすぎるなあと思ったからです。

どちらも聴いたうえで、どっちかを更にさまざまな音源を持つというのであればいいのですが(先日のちきりんさんのエントリ「バランスなんて、とる必要ないです」http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20140604の様に)、片方しか聴いていないと言うのであれば、それは問題だなあと思っていたわけです。

ところが、神奈川県立図書館には全集がなく(これはリストについてもですが)、また店頭に並んでいる全集は、値段が高く・・・・・なかなか実現できずにいたのです。

しかし、購入する機会をあきらめたわけではありませんでした。ディスクユニオンの店頭に行くたびに、ピアノ作品の棚、特にシューマンンのところは、常にチェックしていたのです。

BCJが一段落(まだ世俗カンタータは残っていますが)し、予算的にもようやくこういった全集ものにも資金が回せる状況になってきて、出会ったのがこの全集だったのです。

第1集は作品6、作品111、作品133、そして作品32の4曲が収録されていますが、この全集、解説書はついていません(TOT)

いや、ブックレットはついています。その代り、13枚のCDにどんな曲が収録され、トラック割と時間が表記されているだけなのです。

こりゃあ、とんでもない商品を買ってきてしまったぞ、と思っていますが、それだけに、いろんなことが学べそうな気もしています!

まず、1曲目の「ダヴィッド同盟舞曲集」作品6です。この曲をまず第1集の第1曲目に持ってくると言うのは、この全集、解説はないんですが只者ではないというように思います。

ダヴィッド同盟舞曲集
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%89%E5%90%8C%E7%9B%9F%E8%88%9E%E6%9B%B2%E9%9B%86

Robert Schumann
(1810-1856)
Davidsbündlertänze, op.6
http://homepage3.nifty.com/classic-air/database/schumann/schumann_Pm_6_f.html

シューマンは音楽評論の世界でも活躍した人でもあります(特に、近代的な評論活動のパイオニアでもあります)が、架空の人物に様々な意見を言わせ、それをもって評論とするというのは、現代では特段珍しいことではありません。音楽など芸術に限らず、評論という世界ではよく使われる手法ですが、それをシューマンは評論だけではなく、音楽でもしたのがこの作品であると言えるでしょう。

前期ロマン派から、音楽は他のジャンルとの関係性が強くなっていきますが、その場合大抵文学であれば小説が多いわけです。ところがシューマンは、評論的なものをそこに持ち込んだわけです。ある意味、とてもシューマンらしい作品だと言えるでしょう。

それを、まず一番初めに持ってくると言うのが、この全集の最大の特徴なのではないかと思います。決してこの全集、作品番号順に並んでいるわけではありませんから。となると、年代順という以外の視点が貫かれていると言えるでしょう。

となると、この全集はある程度、シューマンの音楽を知っている、或は前期ロマン派の音楽に精通している人向けのアルバムである、と言えるでしょう。となると、ピアノ曲初心者である私としては、大変なものを購入してしまったなあ、と。

でも、だからこそ、「調べ、知る楽しみと喜び」が与えられるのがこの全集である、と思います。

2曲目が幻想小曲集作品111です。こちらのほうがより、人口に膾炙しているシューマンの音楽という気もします。とてもロマンティックで、流麗です。

幻想小曲集作品111 (シューマン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BB%E6%83%B3%E5%B0%8F%E6%9B%B2%E9%9B%86%E4%BD%9C%E5%93%81111_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3)

此れより前に同名の作品12を作曲していますが、それに比べると文学的な関連がないというのが特徴です。しかし、ロマンティックな面が後退せず、むしろ後世の象徴主義印象派を用意していると感じるのは私だけでしょうか。

3曲目が朝の歌作品133です。暁の歌とも訳されるこの作品は、晩年の作品ですが、シューマンの作品が持つ黒い幻想と言いますか、精神的に病みつつもなお、暗い世界の中で一筋の光を見出していくような作品です。朝という題材を取ったのにはそんな背景があるのかと思わせる作品です。

最期の4曲目が4つの小品作品32です。ブックレットではKlavierstueckeとあり、単にピアノのための小品という意味です。2曲目がジーグ、4曲目がフガートとあり、伝統を意識しながらも、新しい音楽を創造していくという、シューマンの気風溢れた作品です。

シューマンは最初の「ダヴィッド同盟舞曲」でも出てきますが、メンデルスゾーンと面識があり、交遊もあった作曲家です。メンデルスゾーンが合唱曲で新しい音楽を創造して行ったように、ピアニストで評論家であったシューマンも、自らの専門分野で新しい時代を創っていったと言えるのです。その奇跡が、まずこの第1集には収められており、非常に興味深く聴くことが出来ます。

どれもピアノ作品が好きという人でなければなかなか聴く機会のない作品だと思いますが、どれもシューマン交響曲など、他のジャンルの音楽を考える時にとても有用な音楽であることは間違いありません。むしろ最初管弦楽から入った私からすれば、ピアノ作品のほうが生き生きとしたシューマンがいるような気がするのです。

あまり知られていない作品でそう感じるというのは、シューマンの作品のコアな部分はやはり、「餅屋」であるピアノ作品にこそあるのだなと、のっけから教えてくれます。

演奏者のデムスも、端正かなと思えばダイナミックだったり、変幻自在です。のびのびと弾いているという印象です。力強さと、それによる情熱と。そして柔らかさと、それによる繊細さと。どれも併せ持つことで、全体として巨大で壮大なシューマンの世界が構築されており、精神疾患という点はいったいどこへ行ったのかと思わんばかりです。

信じてこの全集を買ってみて、良かったと思う瞬間です。




聴いているCD
ロベルト・シューマン作曲
ダヴィッド同盟舞曲集作品6
幻想小曲集作品111
朝の歌作品133
4つの小品作品32
ヨルグ・デニス(ピアノ)
(Arioso Ari107-1)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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