かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 合唱曲集4

神奈川県立図書館ライブラリ、メンデルスゾーンの合唱曲集をご紹介していますが、今回は第4集を取り上げます。

この第4集では、聖書をテクストとした合唱曲が収められています、ですので、宗教曲もあれば、普通の合唱曲もあります。

例えば、第1曲目と第2曲目は「賛歌」ですが、これは例えばウィキでは「その他合唱曲」のカテゴリに入っていますが、第3曲目の「キリエ」は宗教曲ということになります。

4曲目の「シオンをたたえよ」と第5曲目の「あなたはペテロ」も宗教曲というよりはそれに題材をとった合唱曲というカテゴリの作品です。

さて、面白いのが第3曲目の「キリエ」です。聴いていると、バッハのロ短調ミサや、或いはモーツァルトハ短調ミサなどが彷彿とさせる曲となっています。もっと言えば、モーツァルトの「キリエ断片」などに似通ったものがあります。

モーツァルトはバッハの対位法を大バッハの息子達などから受け継いだ人でもありました。それを古典派の中で自家薬篭中のものとした作曲家ですが、メンデルスゾーンも同様のことを目指したことが、この作品からはよく聴き取れるのです。

つまり、メンデルスゾーンはそのモーツァルトの音楽を受けつぐことで、今度は自分がロマン派の音楽として再構築していく、という「覚悟」と「宣言」です。この「キリエ」からはそれがうかがえます。

また、バッハの音楽という意味では、プロテスタントではミサ曲の各楽章を単独で歌う習慣があったことは、バッハのロ短調ミサを取り上げた時にご紹介していると思いますが、メンデルスゾーンも同じ意図をもって作曲しているとすれば、このたったキリエ一つが残っているということは、けっして偶然ではないということが言えるかと思います。

そもそも、メンデルスゾーンが目指した「音楽の地平」というものが、このキリエからは私にはよく見えるのです。バッハとモーツァルトの音楽を再評価したうえで、時代にあったもので表現していく。それがメンデルスゾーンの目指した地平である、と。

その結果、メンデルスゾーンベートーヴェンが「オリーヴ山上のキリスト」でやろうとしたことを実現し、ベートーヴェンを超える音楽を作曲し得た、と。

こう書くと、いや、メンデルスゾーンベートーヴェン以上の音楽など書いていない!と反論を受けそうですが、様式に於いて、メンデルスゾーンベートーヴェンを超えたことは間違いないのです。ただ、音楽の偉大さだとか、その重みといった点では、それはもしかすると超え切れていないかも、と思います。

この基礎があって、彼は二つのオラトリオ、特に「エリア」でかなりメッセージ性の強い、素晴らしい音楽を書くことに成功しました。エリアが持つ普遍性とメッセージ性は決してベートーヴェンの第九に劣るものではありません。その基礎となったものが、キリエには詰まっていると言っていいと思います。

宗教という、いつの時代でも保守的なものを題材とする中で、新しいことを追求していくのはとても勇気と才能が要ることだと思うのですが、メンデルスゾーンはそれを見事にこなし、私たちに作品として提示をしています。

オケと合唱団は、それを実にステディに、堅実に表現しています。それ故、演奏は端正。なのに、じんわりとした感動が湧き上がってくるのは不思議です。ソリスト、合唱ともに伸びやかな声楽で、軽やかかつ力強いので、とても美しい演奏が実現しています。

美しさで感動する・・・・・勿論、合唱曲ですから歌詞が存在するわけですが、それの有無にかかわらず、その美しさで感動する作品はなかなかありません。この演奏は作品本来がもつ美しさを十分に引きだし、現出させ、私たちを感動させるのです。

演奏者にもそれなりの覚悟があるはずなんですが、それを全く感じさせない自然体の演奏。私の好みど真ん中です。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
讃歌(3つの聖なる歌とフーガ) 作品96
讃歌"Hör mein Bitten"
キリエニ短調
シオンをたたえよ 作品73
「あなたはペテロ」作品111
リディア・アッレルト(ソプラノ)
イザベル・ミュラー=カント(ソプラノ)
エイベ・モールマン(アルト)
ダニエル・サンズ(テノール
フィリップ・ニーダーベルガ―(バス)
ヨーロッパ室内合唱団
ニコル・マット指揮
ロイトリンゲン・ブリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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