かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 合唱曲作品集2

神奈川県立図書館ライブラリ、メンデルスゾーンの合唱曲作品集をシリーズでご紹介していますが、今回は第2回目。第2集を取り上げます。元音源はブリリアント・クラシックスです。

この第2集では、第1集に引きつづき詩篇に基づくカンタータと、コラールカンタータを収録しています。

さて、詩篇はバッハはカンタータではあまり使わなかったのですが、コラールはバッハも採用しています。このことから見ても、メンデルスゾーンのバッハへの傾倒、或いは影響が大きいことが分かります。

第1曲目と第2曲目は、作曲された時期は異なるものの、詩篇の番号順となっています。第1曲目が詩篇第114、第2曲目が詩篇第115です。この二つは基本的に「出エジプト」に関わる部分(トンデモが好きな方々にとっては宇宙人との関連すら言われている部分)ですが、人の苦難が描かれている部分でもあります。

それ故、様々な宗教曲の題材になってきたことも確かです。メンデルスゾーンもその一人でありました。

特にすばらしいのが詩篇第114篇で、ドラマティックですらあります。バッハのバロック音楽とはその点が異なり、まるでオペラかあるいは劇音楽の様に作曲しています。その意味では、バロック音楽のBGMという精神はつけ継がれているのかもしれません。

音楽そのものでドラマを語る・・・・・バロックではバッハが受難曲に於いて確立した様式は、古典派ではモーツァルトによってオペラで、ベートーヴェンによって交響曲など管弦楽曲で表現されましたが、ロマン派ではメンデルスゾーンは合唱曲に於いても表現していると言えましょう。

よく、メンデルスゾーンは保守的だと言われますが、それは当然かと思います。彼が生きた時代は19世紀前半から半ばです。本格的なロマン派はその後に始まるのです。メンデルスゾーンを批判したワーグナーはすでに後期ロマン派で、その少し後には新古典主義など、不協和音を多用した作品が多く作曲される時代が訪れ、20世紀が始まるのです。

其れよりはずっと古典派に近い時代を生きたメンデルスゾーン(そもそも、彼の幼年期、少年期は古典派です)であれば、音楽が保守的になるのは当然であって、その上温故知新の上次の時代を用意したことは間違いないのです。その功績は少しも小さくなくむしろこういった合唱曲を聴けば聴く程大きくなるかと思います。

保守的なのに新しいことに貢献するということは、そう簡単にできることではありません。このブログを書いている私も手探りですし、時に失敗することだってあります。しかしメンデルスゾーンはそれを恐れずに挑戦し、見事に結果を残した人だったと言えましょう。家が裕福だっただけで彼自身は金銭的に成功したわけではありませんが、その後の音楽の豊かさに貢献したことで、成功したと言えるのかもしれません。

後半のコラールカンタータは、まさしくバッハ的な作品が並んでおり、特に最後の「イエス我が喜び"Jesu, meine Freude"」S72はバッハも同名のコラールを作曲しています。しかしその曲調は全く異なり、明るいバッハに対してメンデルスゾーンは暗め。このあたりは、メンデルスゾーンの出自や育ちとも関連していそうです。こういったあたりにメンデルスゾーンらしさが見えるのはまた喜ばしいことですし、聴き手としては興味深く、最後まで楽しく聴くことが出来ます。

演奏は第1集と同じニコル・マット指揮ロイトリンゲン・ブリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団とヨーロッパ室内合唱団。オケは日本人の飯森氏が音楽監督をしていることで有名ですが、元アマチュア合唱団員の私としては、やはり第1集に引きつづき合唱団に注目です。聖歌隊ようなアンサンブルですが、しっかりとオケとアンサンブルして負けていませんし、軽めの発声でもドラマティックで力強く、しなやかで伸びやかな印象を聴き手に与えます。ppからffまでのダイナミクスも自在に表現できますし、メンデルスゾーンの世界観にぴったりのような気がします。

勿論、「エリア」に出演していた国立音楽大学のような比較的大規模な合唱団も決して合わないことはありませんが、カンタータのような作品では室内合唱団は実にその世界観に合うなあと思います。繊細かつ大胆で、力強いという、理想的な実力を持つこの団体は、聴いていて全く飽きることがありません。

どっぷりつかりそうで、翌日が仕事であるということを忘れ、職場で怒られそうです・・・・・

という訳で、今回はこのあたりでやめておきます。



聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
詩編第114番「イスラエルがエジプトから去り"Da Israel aus Aegypten zog"」作品51
詩編第115番「我らにではなく、主よ"Non nobis Domine"」作品31
「ああ神よ、天より見たまえ"Ach Gott, vom Himmel sich darein"」S75
「キリスト、汝神の子羊"Christe, du Lamm Gottes"」S76
「イエス我が喜び"Jesu, meine Freude"」S72
アンネマリー・クレマー(ソプラノ、詩編115の2)
ダニエル・サンズ(テノール詩編115の2)
マンフレッド・ビットナー(バス、詩編115の3)
ライムンド・スポーギス(バリトン、「ああ神よ、天より見たまえ」アリア)
ヨーロッパ室内合唱団
ニコル・マット指揮
ロイトリンゲン・ブリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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