かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン合唱曲集7

神奈川県立図書館所蔵CD、シリーズでメンデルスゾーンの合唱曲集を取り上げていますが、今回はその第7回目です。

第7集は、まさしく教会音楽が収録されています。しかも、プロテスタント用のです。コラールを中心にした曲が3つ、そしてモテットが3つですが、実際には作品番号では2つになります。

実は、この中にすでに取り上げた曲が存在します。「3つの教会音楽 作品23」の3つめ、「イエス、わが頼り」の第2曲がそれです。

え、始めてではないの?と思われた、ア・ナ・タ。このシリーズで、私は散々メンデルスゾーンはバッハ再興の祖であり、実際に合唱曲もバッハを意識したものが多いと言及しています・・・・・

ということは、バッハ同様、自分が以前作曲したものを使いまわしている、ということになるわけです。さて、それは何でしょう?

正解は、「エリア」作品70です。そもそも、私がエリアを聴きたいと思ったのは、スウェーデン放送合唱団がエリアの中の曲を取り上げたからですが、実はそれがこの曲なのです。

音楽雑記帳:スウェーデン放送合唱団コンサートを聴いての雑感
http://yaplog.jp/yk6974/archive/372

このコンサートの第1曲目、「山に向かって目を上げよ」がそれです。殆どおなじ音楽であることに、びっくりされることでしょう。なんで前期ロマン派の作曲家が、こんなことをするのか、と。

しかし、よくよく考えてみれば、おそらく、意図してメンデルスゾーンはやっています。まさしく、バッハの様式を前期ロマン派の音楽で再現する・・・・・それがエリアであれば、メンデルスゾーンとしてはごく当たり前のことであったでしょう。

つまり、メンデルスゾーンが忙しかったため使いまわしたのではなく、バロック期の作品に使いまわしが多いことを当然知っていて、それをまねた、ということです。つまり、わざと使いまわしたわけです。

それ以外でも、実にバッハを意識した作品が並んでいます。第1曲目の「深き淵より」はバッハがカンタータでも取り上げていますし、3つのモテット作品69の第2曲目「全地よ、主にあって喜べ」もバッハがカンタータで取り上げています。どれもコラールなどが存在し、それをメンデルスゾーンがまた取り上げているという形です。

しかし、不思議に思われることでしょう。なぜ前期ロマン派でこれほどバッハに範を取るようなことをするのか、と。確かに、メンデルスゾーンは少年時代にバッハに触れていますし、それがこの行動に繋がっているのは確かなのですが、それだけはありません。実際にバッハ同様、合唱団を指導していたことも理由の一つです。

メンデルスゾーンライプツィヒでアマチュア合唱団を組織し、その指揮者にもなっています。そのための作品も数多く作曲しています(それが例えば、中大混声が取り上げた「野に歌う6つの歌」です)。しかし、合唱団に必要なのはコンサート用の曲だけではありません。アンサンブル練習用の作品も必要なのです。それが例えばコラールだったりするのです。

これらの作品はコンサート用であることもさることながら、元合唱団員の私としては、練習用としての意識もあったであろうと推測します。特にいままで登場した作品番号がない作品などは明らかに練習用を意識した作品でしょう。

そういった作品を合唱団が歌い込むことで、アンサンブルの「品質」が上がり、結果コンサートでのいいパフォーマンスに繋がるわけです。メンデルスゾーンがこういった作品を作曲した背景には、演奏品質の向上という目標があったことは間違いないと思います。

前期ロマン派という時代は、市民革命の時代でもあります。それは今まで教会でのみ歌われてきた合唱曲を、広く市民へ開放することに繋がって行きました。当然ですが、その時代にあった練習用の作品が必要になります。メンデルスゾーンが作曲した合唱曲の中には、それを意識したものも数多くある、ということなのです。

演奏しているヨーロッパ室内合唱団は、アカペラでも素晴らしいアンサンブルをごく普通にやってしまっています。元合唱団員とすればもう感嘆しか表現が出来ません。宗教曲であるにも関わらず軽めの発声でもってまるで抜けるような青空がそこに存在するような、爽快さを持っています。その一方で、生真面目さもあり、重々しくないのに壮麗さが存在し、一つ一つの作品が、実に心にしみてきます。

この演奏はプロであれば当たり前かもしれませんが、実はこのパフォーマンスを実現するためには、まさしく「情熱と冷静の間」が取れないと難しいのです。特に、こういった生真面目な作品では、まさしくそのまじめさが前に出すぎることが演奏上多く、私達アマチュア合唱団ではとても苦労する点です。それが全くないのです。そこがプロであるが故のレヴェルの高さなのですね。

淡々と、演奏に徹し、それが聴き手に讃美と壮麗さを感じさせるのは、さすがです。プロであれば重々しく演奏することだってできます。しかし、やっていない点こそ、さすがプロなのです。

恐らく、この合唱団であれば、もう少し後の作曲家、例えばブルックナーのモテットだったりとか、大曲になりますがマーラー交響曲第2番「復活」なども、高いパフォーマンスを見せてくれるでしょう。今後、ブリリアント・クラシックスあたりでこの合唱団の名前があった場合は、まず後悔することはないものと思います。



聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
3つの教会音楽 作品23
深き淵より(四声の混声合唱ソリスト、オルガンのための)
われら人生のただ中にあって(八声の混声合唱のための)
エス、わが頼り
3つのモテット 作品69
主よ今こそあなたはこの僕を(ソリストと4声の混声合唱のための)
全地よ、主にあって喜べ(詩編100)(ソリストと4声の混声合唱のための)
私の魂は主を崇め(マニフィカト)(ソリストと4声の混声合唱のための)
アーニャ・ビットナー(ソプラノ1)
アレーナ・レーヤ(ソプラノ2)
ブリジット・メイヤー(アルト)
ロベルト・モルヴァイ(テノール
ダニエル・サンズ(テノール
マンフレート・ビットナー(バス)
アリス・ドゥスコヴァ(オルガン)
ニコル・マット指揮
ヨーロッパ室内合唱団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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