かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ケンぺ ベートーヴェン交響曲全集3

神奈川県立図書館ライブラリ、ルドルフ・ケンぺ指揮ミュンヘン・フィルのベートーヴェン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第3回目。第3番「英雄」他が収録されている第3集を取り上げます。

収録されているのは英雄の他に、プロメテウスの創造物序曲、それとエグモント序曲です。ま、カップリングではごく普通かなと思います。とはいえ、かなり考え抜かれた編集ではあります。

と言うのも、英雄の第4楽章はプロメテウスの創造物から音楽が転用されており、関連が深いからです。ですから、英雄が終わった直ぐ後にプロメテウスの創造物が来ているのは、けっして偶然ではないでしょう。

演奏は、まず英雄ですが、テンポは速めですが、第一主題が提示される部分はやや慎重に入っているのが特徴です。しかしだんだんテンポが上がってきます。それが聴き手の気分を高揚させます。興奮というべきでしょうか。それでも、冷静さは欠いていません。

こういった演奏はいいですね。ただ、わたしとしてはもう少し激しさがあってもいいかな〜とは思いますが、これはこれで素晴らしいと思います。

ベートーヴェン交響曲のうち、初めて標題が付いた作品ですが、なかなか複雑な内面が映し出されている作品でもあります。丁度ナポレオンが皇帝の座に就いた頃に作曲されていたことから、ベートーヴェンが曲に添えた言葉を変えたことでも有名ですが、それを勘案しますと、単純に激しさだけでは曲を表現したことにはならない可能性もあるからです。

ただ、第1楽章はもっとオケを突っ込ませてもいいかもしれません。その上で、他の楽章でメリハリをつけるという選択肢もあるからです。どちらかというと、わたしは第1楽章は思い切り激しいほうが好きではあります。

ただ、ケンぺは英雄を、高貴さ、気高さという視点から解釈しているように思います。だからこそ、聴き手には激しさだけでなく、もっと冷静な視点、英雄の業績、人となりなどが想像されるような気がします。

面白いのは、第4楽章はかなり激しいことです。第1楽章ではなく、第4楽章を激しくすることに、わたしはケンぺが解釈上込めたメッセージを感じます。第4楽章は前述しましたが「プロメテウスの創造物」から第1主題を転用しています。

プロメテウスの創造物
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%83%86%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E5%89%B5%E9%80%A0%E7%89%A9

交響曲第3番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

プロメテウスとは、ギリシャ神話で人類に火、つまり文明を与えた神様ですが、そこに焦点を当てていると受け取ることもできます。それはとても大切なメッセージであるように思うのです。

ケンぺがミュンヘン・フィルの音楽監督だった期間は、東西冷戦の真っ最中。そして、1972年に起こったのが、ミュンヘン・オリンピックにおけるテロ事件でした。

ミュンヘンオリンピック事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BA%8B%E4%BB%B6

特別暗殺チーム「黒い九月」が起こした
ミュンヘン五輪襲撃事件」
―1972年9月―
http://inri.client.jp/hexagon/floorA1F/a1f1804.html

当時、ドイツは東西に分かれ、ミュンヘンは西ドイツに属していましたが、東西冷戦の最前線でした。その上、中東からも距離が近いことからドイツを含む中欧は常に、中東情勢の影響を受けやすい地域でした。そういった世情を反映したとしても、けっして不思議はありません。

録音年代を記録していないのではっきりそうだと言える自信はないですが、こういった当時のドイツをめぐる世界情勢は、影響しないとは言えないでしょう。

その証拠は第3楽章にもあります。最後にティンパニが連打されますが、実に硬くはっきりと収録されています。私が持っている音源ではこのケンぺのものだけがはっきりと浮き出ています。まるで軍楽隊かと思わせるこのティンパニをして、指揮者やレコーディングエンジニアが伝えたいもの・・・・・・平和とは、戦争とは、いったい何ぞや?それが文明をどう変えていくのか・・・・・・

それが重々しくないのが、この演奏のもう一つの特色だと言えるかもしれません。

続くプロメテウスの創造物は、実はそれほど激しくはありません。もともとバレエ曲であることから、その解釈は当然かもしれません。しかし、堅実で端正な演奏は、私たちを神話の世界へと連れて行ってくれます。

最後のエグモントは英雄からの流れを引き継いで、激しさを伴っています。3曲とも「抵抗」というキーワードも使えますが、すべてしっかりと音楽が構築され、堅実で端正ながらも、実に熱く激しいものが聴き手に伝わってくるのは、好感が持てます。なかなかこういう演奏と巡り合えません。

その幸せに、感謝しつつ・・・・・今回はこの辺で。



ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
プロメテウスの創造物」序曲 作品43
エグモント序曲 作品84
ルドルフ・ケンぺ指揮
ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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