神奈川県立図書館ライブラリ、ケンぺ/ミュンヘン・フィルのベートーヴェン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第5集です。第7番と第8番が収録されています。
第7番と言えば、最近では「のだめ」の主題曲として有名になりましたが、この曲、「リズムの権化」とも言われ、リズムが独特なのです。
交響曲第7番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC7%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
まさしく、のだめの主題曲として使われている第1楽章がそうなのですが、付点がついている音符を演奏するときに、注意が必要になる作品です。この演奏ではそれが何ともきびきびと演奏されており、冗長な面が見当たりません。
これぞ端正・・・・・さすが、ケンぺというべきでしょうか。
全体的に緊張感に貫かれていながら、この作品が持つのどかさもきちんと表現されているのが素晴らしいなあと思います。緊張感かのどかか、どちらかになってしまう演奏も多い中で、それはこの演奏の特徴かと思います。
わたしの「7番」の一押しは実はこのケンぺではないんですが、その次に来るのは間違いなくこのケンぺ/ミュンヘン・フィルです。はっきり言えば、その一押しと甲乙つけがたいと言うのが本音です(ちなみに、一押しは、以前マイ・コレでも取り上げたショルティ/シカゴ響です)。
つまり、一押しはそれより前に聴いた音源であるわけなのですが、人間は最初に聴いたものを比較的いいと永続的に思うものだそうですが、それをひっくり返すかもしれないくらいのクオリティを持つというのは、考えてみればすごいことだと思います。それだけの説得力を持つ、ということですから。
それは第8番に就いても同様です。メトロノームを使って作曲されたという逸話がある第8番ですが、ベートーヴェンの「びっくり箱」が詰まっている、と言うべき作品です。
交響曲第8番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC8%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)
古典とロマン派の融合とも言うべきこの作品を、これまたきびきびとした演奏で、全体的に引き締まった印象を私たち聴き手に与えます。
古典回帰・・・・・こう言いますと、私はいつも「それが特徴ではない」と言われてしまうのですが、様式や形式から見ますと、この曲の最大の特徴は第3楽章だと言えます。メヌエットがベートーヴェンの時代で来るのか!と音楽史の視点からは驚きを隠せいないはずなのに・・・・・
第8番が作曲されたのは、1814年。このあたりはすでにウェーバーやシューベルトが活躍し始めている時代です。つまり、前期ロマン派がすでに始まっている時期なのです。そこで、モーツァルトまでの様式を持ってくるか!という驚きがます先に来るはずなのです。
実際、ベートーヴェン自身が、初演時にはそのあたりで不満を漏らしてもいます。この作品の新しさが分からないのか・・・・・と。古典様式にロマン派を取り入れたことこそ、この作品の最大の特徴です。
それをさりげなく、しかしはっきりと聴き手に印象づけるだけの説得力をこの演奏は持っています。特に第3楽章のテンポはややゆったりめとしてあまりだらっとしないよう気配りされていますし、古典派とロマン派の融合がこの作品での最大のテーマですよと、ケンぺに言われている気すらします。それはケンぺがスコアリーディングする中で、ベートーヴェンと交わした「会話」の結果なのだと思います。
私たち聴き手も、スコアリーディングができなくても、ベートーヴェンはこの作品にどんな「想い」を込めたのだろうか、というくらいは、聴きながら会話するのもいいのではないでしょうか。
某作曲家の事件以降、そういった「ストーリー」を組むことが悪いこととされているように思いますが、真摯に曲に向き合うことは、作曲家の想いを曲からくみ取る作業になりますので、一つのストーリーを組み立てることでもあります。それを否定してしまうことは、作曲家の意思や意図を捻じ曲げることにならないか、心配です。
勿論、自分勝手なものは確かに控えるべきだとは思いますが・・・・・
聴くということは、難しいことであるなあと思います。ケンぺのこの演奏を聴けば聴く程、その念を強くします。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第7番イ長調作品92
交響曲第8番ヘ長調作品93
ルドルフ・ケンぺ指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
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