かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ツェムリンスキー 弦楽四重奏曲全集1

今月のお買いもの、平成24年12月に購入したものをご紹介しています。今回と次回の2回、ツェムリンスキーの弦楽四重奏曲全集を取り上げます。まず今回はそのCDの1枚目、第1番と第2番です。銀座山野楽器本店での購入です。

まず、ツェムリンスキーという作曲家をご紹介することといたしましょう。19世紀から20世紀にかけて活躍した、主に指揮者ですが、もともとは作曲家で、ブラームスによって才能を認められた一人です。

アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%84%E3%82%A7%E3%83%A0%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC

マーラーの妻であるアルマとも付き合っていたという彼は、まさしく音楽家の道をまっしぐらに歩んだ人でしたが、最後アメリカに亡命してからは寂しい人生を歩んだ人です。

さて、そんな彼の音楽はいったいどういうものなのでしょうか・・・・・それを弦楽四重奏曲で見ていきたいと思います。そう、いつも述べていますが、私は初物は室内楽でということが最近多いのですが、このツェムリンスキーも室内楽を入り口としました。

実際、彼は管弦楽曲も多く作曲していますが、この弦楽四重奏曲に於いては、彼の音楽の変遷がよく分かるものとなっているのです。

まず第1番は1896年に作曲されたものですが、ブラームスの薫りがそこらじゅうにします。ブラームスの影響下にあることがはっきりと見て取れる作品です。きちっとした4楽章制という形式もそれを顕著に表しています。ただ、ブラームスよりはさらに明るさというか、爽快さが聴き取れます。

ところが、第2番で音楽は一変します。1913年〜15年にかけて作曲され、1918年に改訂されたこの作品は、不協和音ばかりが鳴り響くと言っても過言ではありません。様式がまるで異なるのです。

この点から言えるのは、ツェムリンスキーという作曲家は、流行に敏感であるということでしょう。第1番が作曲された19世紀末はブラームスからマーラーといった作曲家が活躍した時代であり、後期ロマン派の影響を色濃く受けていますが、第2番が作曲されたのは20世紀初頭で、なおかつ改訂までも含めると第1次世界大戦をはさんでいるためか当時の前衛音楽の影響を色濃く受けています。

音楽を聴いていますと、けっして没個性ということではないんですが、時代に色濃く影響を受けるという点は、彼の作曲家としての立場をよく表しているように思います。けっして抜きんでた人ではなかったと言えるでしょう。ただ、時代に先んじる進取の気風は持っていたと思います。シェーンベルクと親交があったという点も、音楽にさらに影響を与えているように思います。

兎に角、第1番と第2番の様式の違いに、私は驚きを隠せませんでした。普通はブラームス風で行くと決めたら後期ロマン派的な音楽になっていくものですが(たとえ時代の変化を受けたとしてもです)、これほどの違いには正直面喰いました。第2番は楽章数も5楽章と、さらに第1番とはきわだった違いを見せています。

しかし、どちらもツェムリンスキーの作品ですし、彼が正式に作品番号をつけて出版したものなのです。他の作曲家では第1番のような作品を習作として封印してしまう人(例えば、同時代ではブルックナーなど)がいるものですが、ツェムリンスキーはそうしなかったのです。その点には私は正々堂々としたものを感じ、聴いていて何か誠実さとさわやかさすら覚えました。

演奏はラサール四重奏団。新ウィーン楽派の作曲家たちの作品を得意とする団体です。

ラサール弦楽四重奏団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E5%9B%A3

アマゾンやHMVのレヴューを読みますと、彼らはツェムリンスキー再興の一翼を担ったそうで、納得です。ツェムリンスキーは特に新ウィーン楽派の作曲家たちと親交を持ち、影響を与えた人だったからです。

新ウィーン楽派
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%A5%BD%E6%B4%BE

つまり、そもそもはブラームスから出発しているのですが、彼はブラームスの音楽そのものにこだわらず、時代を切り開いた人であったと言えるかと思います。それなら、第1番と第2番の様式がかけ離れているのは納得なのです。

演奏は音が立っていると言うか、シャープです。録音やマスタリングのせいもあるのかもしれませんが、不協和音の部分も丁寧に演奏し、ツェムリンスキーという作曲家がいかなる芸術家であるかを、淡々と私たちに訴えかけます。そこが聴いていてなぜか爽快で、気持ちのいいものでした。

通常、不協和音で爽快なんてなかなかないのですが、この演奏は私には爽快さをもたらしました。私はあまり新ウィーン楽派の作曲家をきかないのですが、興味を抱かせるのに十分な内容を持っていると思います。

こういう演奏に出会えるのは、クラシックファンとしてはとても幸せな瞬間だなあと思います。



聴いているCD
アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー作曲
弦楽四重奏曲第1番イ長調作品4
弦楽四重奏曲第2番作品15
ラサール弦楽四重奏団
(ブリリアント・クラシックス 9188)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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