かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:コルンゴルト 交響曲嬰ヘ長調ほか

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はコルンゴルト交響曲を取り上げます。プレヴィン指揮ロンドン交響楽団の演奏です。

実はこの音源、一度ちょっとだけ「今月のお買いもの」で触れたことがあります。

今月のお買いもの:コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲ほか
http://yaplog.jp/yk6974/archive/554

上記エントリでご紹介したCDを買うきっかけになったものこそ、この音源です。その「交響曲」というのが、コルンゴルトが生涯に書いた唯一の「嬰ヘ長調」の交響曲です。

交響曲 (コルンゴルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%88)

ウィキによりますと、他に「シンフォニエッタ」もあるそうなので、それも入れれば2つということになるそうですが、「交響曲」とつけられているのはこの一つだけということになります。

さらに、ウィキでは「嬰ヘ調」とするほうが適切であるとありますが、それはどうなのかなと思います。私は長調としても差し支えないように思いますが、確かに第1楽章は曲調からすれば長調とするには無理があるのでそういう説明のほうがいいのかもとも思うんですが、交響曲は普通最後の第4楽章は主調を採用するのですが、この交響曲でも最後が嬰ヘ長調となっているので、長調としても差し支えないのではと思います。

実際、借りてきた音源では嬰ヘ長調なので私も長調としているのですが、それで不都合はないように思います。

カップリングは組曲「から騒ぎ」ですが、交響曲といい、から騒ぎといい、彼の寄って立つ音楽が何なのかを伝えているように思います。音源の解説ではロマン派最後の作曲家と紹介されていますが、私としてはさらにバロック的な手法も見られることから、新古典主義音楽の洗礼も十二分に受けているのではと思っています。

特に交響曲で顕著です。そもそも、主題は自身の映画音楽から引用しています。この手法こそバロックにちなんだものであり、新古典主義音楽からの影響が見て取れます。ただ、から騒ぎでは、まさしく映画音楽のような、わかりやすい旋律が支配していますので、純粋な新古典主義音楽とは言い難いと思っています。

確かに、「から騒ぎ」を聴きますと、後期ロマン派そのものです。しかしここでも、最後にホーンパイプを持ってくるなど、バロックに範を取る意識が随所にあるんですね。ですから、彼自身は決して当時の流行から外れていたわけではないんですが、アメリカへ亡命後は、素晴らしい映画音楽を数多く作曲し、その後のアメリカ音楽に多大な影響を与えたにも関わらず、勃興してきた12音階などの音楽に就いていくことが出来なかったため、映画音楽以外の作品は忘れ去られる結果となって行きます。

エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%88

交響曲では、ウィキが指摘するように主調は果たして長調なのか短調なのかわからないという側面があるくらいの前衛性も持っていたはずなのですが、それすら理解されないというのは哀しいなあと思います。あまりにもヴァイオリン協奏曲が有名になりすぎたのかもしれませんね。

ヴァイオリン協奏曲 (コルンゴルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%83%88)

実際、交響曲アメリカよりもヨーロッパのほうが評判がよかったようで、ウィキの「評価と受容」の項目がそれを伝えています。「コーンゴールド」として活躍した時期が長く、それだけ映画音楽の作曲家としての印象が強かったという側面もあるのでしょう。一方、ヨーロッパではそれほど映画音楽の作曲家という視点がなかったため、素直に受け入れられたのだと思います。

私からすれば、後期ロマン派に立脚しつつも、様々な音楽がかけた「西側版ショスタコーヴィチ」だと思うのですけどね〜。戦争さえなければ、映画音楽以外の作品ももっと多く書かれたでしょうし、それによってきちんとした評価も受けたはずだと思いますが、歴史はそれを許さなかったということでしょう。

プレヴィンとロンドン響は、あくまでも一つのクラシック音楽として、誠実に向き合っていると思います。乱れないアンサンブルからは、誠実なスコアリーディングと練習が見て取れますし、それは旋律線がはっきりとしているから騒ぎでも同様です。こういった作品ではどこかで破たんすることがプロでもありますが(特にナクソス音源)、しかしこの音源ではまったくないのです。それ故、端正さが前面に出され、作品が持つ「後期ロマン派的な部分と、新古典主義音楽的な部分」とがよく聴き取れます。

それがもたらすのは、人間の様々な感情の想起です。不安、期待、絶望、希望、愉しみ・・・・・あらゆる人間の感情が、二つの作品には詰まっています。こういった作品がかけたからこそ、彼は映画音楽がかけたのだろうと、私は思います。



聴いている音源
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作曲
交響曲嬰ヘ長調作品40
組曲「から騒ぎ」〜室内オーケストラのための〜作品11
アンドレ・プレヴィン指揮
ロンドン交響楽団



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