かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:コア・アプラウス2012年公演を聴いて

今回はコンサート雑感をお届けします。毎年聴きに行っております、コア・アプラウスの2012年の公演です。今年は、ハイドンフォーレの宗教曲が並ぶこととなりました。

こういった組み合わせは以外にもコア・アプラウスとしては珍しいなと思いました。ハイドンが「戦時のミサ」、フォーレがレクイエムです。会場は杉並公会堂

はい、中大生の皆様!比較の時間でございます・・・・・

その前に、一応またコア・アプラウスの説明をやっておきませんと。

混声合唱団コア・アプラウス CHOR APPLAUS
http://www.milmil.cc/user/applause/
(以前ご紹介したURLと異なります。団の発表では、サーバーが廃止されるため新しいのに移したとのことです)。

1曲をじっくりと練習するのがコア・アプラウスの特徴なのですが、今回は二つの曲ということなので、驚いたのです。いずれも難しい曲です。ハイドンは旋律が分かりやすいがため。フォーレはその反対であるがため、なのです。

これはその時代の音楽の特色を写すものであり、その点でこの二つが演目に上ったのかもしれませんが、確認は取れていません。

まず、ハイドンの「戦時のミサ」です。以前私もエントリで「よき四季斎日のミサ」という名でご紹介してます。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン ミサ曲全集6
http://yaplog.jp/yk6974/archive/334

ハイドンのミサ曲には様々な呼び名があるので、混乱するのですが一番確実なのは後ろの索引番号で判断することです。その私ですら、実はネルソン・ミサと勘違いしていたという・・・・・恥ずかしい!

一応、私がエントリで挙げたような作品は基本的に音源を持っていますの、できうる限り予習していくのですが、今回どうも音楽が違う・・・・・あ、勘違いしている!とわかったという訳です。

戦時のミサはハイドンの晩年のミサ曲が集中的に書かれた時期に作曲され、ナポレオンのオーストリア領イタリア侵攻の時期に作曲された愛国心にもとづく作品ですが、愛国心という観点から演奏しようとするとなかなかうまくいない曲だろうと思います。実際それが反映されているのはむしろオーケストラの部分が主なのですから。

むしろ、作品そのものとしてはとても筋肉質で余分なものがなく、すっきりとしているため演奏には集中力が必要とされます。それが見事に実現されていたのは素晴らしいと思います。軽い発声とそれが生み出す明るさと平和への切なる願い。それはベートーヴェンのような重厚さとは異なりますが、それがハイドンとしての愛国心の表明だったのです。それが見事に現実化されていたのが素晴らしかったと思います。

まあ、中大生と異なり、後部客席で歌うのは毎年恒例ですが、そのやり方であれば声が飛ぶのはある意味当然だと言えます。しかし、それでも歌っているとどうしても気持ちが先に行ってしまって段々強く歌ってしまうこともしばしばなのです。それを如何コントロールして冷静さともちちつつ、熱い演奏をするかが大事なのです。それが基本的にできていたのが素晴らしいのです。まあ、ハイドンの音楽はそれほど気持ちが入るような作品ではありませんし、それを好む時代でもなかったため、自然にできたという側面もあるかもしれません(それでも、アニュス・デイには多少愛国心が前面に出ている部分があるのですが)。

しかし、フォーレとなるとそうはいきません。この点は中大生もできていた部分なのでそれは素晴らしいと言えますが、残念ながら全体的な出来という点からすれば、コア・アプラウスに軍配が上がります。軽い発声にとffとppの差がきちんとつけられてることで、フォーレが曲に込めた「想い」というものが聴き手に突き刺さる点がとても素晴らしかったと思います。

実際、ソプラノは幾度か強めに歌いそうになっていましたがそれを次のフレーズで修正する点は、恐らく指導された先生の指示ではないかと思います。いつだったか、その先生もこのブログをコメントはつけないが読んでおられると聞き及んだことがあります・・・・・

合唱団は今回男声は女声の約3分の2しかおらず、通常であればバランスが崩れる心配があるのですが、ハイドンは勿論、フォーレでもバランスが崩れることはほとんどありませんでした。そしてその「ほとんど」というすべてが、フォーレで散見されたのです。しかし、それを即修正するのが素晴らしいのです。

往々にして、一度バランスが崩れてしまったら崩れっぱなしになるのがアマチュアの演奏というものなのですが、コア・アプラウスの場合、それがほとんどないんですよね。トラを入れているのは他のアマチュア合唱団と一緒ですが、そのトラとも声が溶け合って、男女比が崩れているなどみじんも感じさせない演奏です。

特に、フォーレのレクイエム「リベラ・メ」では泣きそうになりましたが、それをまた素晴らしい演奏で押さえてくれるなんて、心憎い演出ではありませんか!泣く前に感激で喜びが先に来るんですね。

今回ソリストも素晴らしかったです。ハイドンの戦時のミサはソリストはソプラノが一番最初に出るのですが、合唱団を指導されているソプラノのソリストは大抵そのケースで自爆することが多いのです・・・・・が、今回はそんなことがなく、最初からハイパフォーマンスで力強くかつ素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれました!ああ、自分で意識して余分な力を抜こうと努力されているなーと聴いていて伝わってきました。

それがとても力強い演奏に結実しているのです。そもそも、ソプラノソリストのいい点はその力強く安定した声にあるのですから!それが存分に生かされていたのがハイドンでした。このあたりは、指揮者砂川先生の「親心」だったのかもしれませんが・・・・・

フォーレではピエ・イエスだけに登場しますが、私の好みから言えばもう少しだけ軽い歌声だったらなあというところなんですが。しかし力任せではなく力強くのびのびとした歌声が聴けたことは幸せでした。そう、そう来なくっちゃ!先生のいいところが活かされませんよと常に言ってきた点ですが今年はそれが満点です^^

そのことが、フォーレが目指した「新しい宗教曲」という点を見事に現出されることに繋がっています。レクイエムを苦しみをいやすという曲ではなく、希望を持った作品にしようとしたのがこの作品ですが、特に合唱団はその点を十二分に表現していたと思います。

ソリストではバリトンも評価せねばなりますまい!元々のソリストの体調不良からピンチヒッターとして登板した方は短時間の割には曲をよく心得た冷静でかつ熱いものがこもった演奏になっていたと思います。ところどころこれはどうなのかなという部分もありましたが、それはピンチヒッターなので仕方ない部分もあるでしょう。今年は様々な病気がはやっていますし、特に冬場は体調管理が大変ですから、どんなタイミングで体調が思わしくなくなるかなんてわかりません。勿論、まずはそういった体調不良がないことがプロとしてのしごとではありますが、ウィルス性腸炎など今年は流行している疾患が「盛りだくさん」なので、やむを得ない部分もあるでしょう。そういった背景があることを勘案すれば、交代はやむ得ないですし、その割にはきちんとと合わせてくる部分はさすがプロです。

演奏面では、中大と比べ最後まで音を伸ばしきっていた点は高評価です。ハイドンでもそうなのですがそれは古典派なので議論の余地もあるかと思いますが、印象派であるフォーレだと事情が異なります。音の長さなどを専門用語では「音価」と言いますが、まあそれは知っていなくてもいいと思います。ただ、音の長さというものは伊達に決まってはいないという点だけは、中大生には理解していただいて第九に臨んでほしいと思います。少なくとも、コア・アプラウスの団員たちは、それを理解したうえで演奏しているからこそ、短く切るようなことはしないのです。音の長さは第九でも昔よく取り上げましたが、作曲家の「想い」を反映している「音による強調部分」なのですから。だからこそフレーズの最後を短めに切るということはあまり推奨されないのです(ただ、例えば第九以前の作品に関しては、短く切っても差し支えないこともあります)。

特にフォーレのレクイエムでは、音の長さが作曲家の気持ちを代弁していることが多いので、演奏上十分な注意が必要です。

これは聴く観点から語ることが私は多いのですが、古典派と其れ以前、そしてロマン派以降の作品ではききどころが異なるのです。それは当然ですが、演奏者としても注意事項として該当するということを意味します。古典派は基本が均整美であり、ロマン派以降は他の芸術とのコラボレーションだとか、或いは自らの気持ちの代弁だとか、均整美も要求されますが決してそれだけない、むしろ均整美以外の部分(感情など)が大事とされた時代なのです。だからこそ、私は音楽史を俯瞰することにこのブログでは徹底的にこだわるのです。そういったことを念頭に置いていれば、発声は素晴らしいのですから中大生もきっと素晴らしい演奏ができる筈だと信じています。

コア・アプラウスはその点でさすが秀でているなと思いました。一日の長といいますか。その上で注文つけるとすれば、来年の演目が再びブラームスドイツ・レクイエムであるということです。勿論、それも作品として素晴らしいのですが、できればバッハの受難曲や、メンデルスゾーンのオラトリオ(例えば、エリアなど)を取り上げてもいいような気がします。コア・アプラウスの実力からすれば十分演奏しきれるように思います。同じ曲が何度か出てきているのが少しだけ残念です。再来年は違った演目が出てくることを期待して、終わりにしたいと思います。



聴きに行ったコンサート
コア・アプラウス2012コンサート
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
よき四季斎日のミサ(戦時のミサ)Hob.XX�U.9
ガブリエル・フォーレ作曲
レクイエム 作品48
稲見里恵(ソプラノ)
淀和恵(アルト、ハイドン
山崎裕規(テノールハイドン
馬場眞二(バリトン
砂川稔指揮
ポート・ストリングス・オーケストラ
コア・アプラウ

平成24(2012)年12月2日、東京杉並、杉並公会堂



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