かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ショスタコーヴィチ 室内交響曲集1

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回から13回にわたりまして、ショスタコーヴィチ交響曲を取り上げます。まず最初の2回は室内交響曲の登場です。

ショスタコーヴィチ自体は、このブログでも幾度か取り上げており、マイ・コレでは交響曲第5番と第9番を、そしてダズビのコンサート評では第7番と第4番を取り上げています。ところが、そのほかの交響曲はといえばまだです。

ですので、以前から交響曲を全曲聴きたいと思っていたのですが、ちょうどこの音源を借りた時は、ショスタコの全集が借りられてしまっていて、どうにもならなかったという事態でした。ふと棚を見てみると、見慣れない「室内交響曲」という文字が・・・・・

そこで、先にそちらを借りてみることにしたのです。いわば冒険です。この音源を借りた時はまだダズビのコンサートに足をはこぶ前です。それでも、様々な作曲家の作品を聴いていくうちに、これはという直感が働いたのです。面白そうだな、という・・・・・

まさかです、この音源がさらにショスタコ室内楽へと誘うなんて、借りる時には予想だにしていませんでした・・・・・

さて、楽曲の紹介に移りましょう。2枚組の第1集を今回取り上げますが、弦楽器と木管楽器のための交響曲ヘ長調作品73aと室内交響曲ニ長調作品83aが収録されています。あれ、アルファベット小文字があるんですかという突っ込みをされたあなたは敏感です。そこにこの作品の特徴が集約されているのです。

じつは、二つの作品とも編曲もので、作品73aが弦楽四重奏曲第3番、そして作品83aが弦楽四重奏曲第4番が原曲となっており、ともにルドルフ・バルシャイによる編曲なのです。

ショスタコーヴィチの楽曲一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81%E3%81%AE%E6%A5%BD%E6%9B%B2%E4%B8%80%E8%A6%A7

ルドルフ・バルシャイ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%A4

じつは、この音源そして引き続いてご紹介する交響曲は、すべてバルシャイの指揮なのです。私のネット上の友人でショスタコに詳しい人たちがいまして、その人たちから「バルシャイがいいよ」と言われていたのです。

神奈川県立図書館には勿論、ショスタコ交響曲のCDが沢山ありますが、全集となるとバルシャイハイティンク(以前「マイ・コレ」でご紹介したのはその分売もの)の二つに限られます。その二つの内、借りるならバルシャイだという意味なのです。そのバルシャイが、室内交響曲成るものを振っているということを見つけたわけで、所謂「キワモノ」好きな私の好みがうずいたという訳だったのですが、実はそれは編曲ものであり、原曲は弦楽四重奏曲であるということを発見した時、実は喜びが体中を駆け巡りました。

だって、以前から述べておりますが、私は初めて聴く作曲家は室内楽から入ったほうがいいと申し上げております。まさしく、この室内交響曲はそれを形を変えて実践したことになるのですから。こんな嬉しいことはありません。まるで、モーツァルトやバッハを聴いているようなものです。20世紀音楽なのに!

でも、バルシャイの編曲は実に素晴らしく、元々管弦楽曲として作曲されたような印象を受けます。バルシャイが音楽家として優れているということもさることながら、ショスタコーヴィチに師事した人であるという事も大きいのだと思います。特に作品83aでは、ショスタコ交響曲によくある諧謔性が素晴らしいオーケストレーションで表現されている金管の部分があり、原曲は本当に弦楽四重奏曲なのかと思うくらいです。

じつはすでに弦楽四重奏曲も全曲借りてきており、これも後々ご紹介することになるかと思いますが、聴き比べますとオーケストレーションのみごとさだけではなく、弦楽四重奏曲の原曲がそもそも素晴らしい室内楽曲でありながら、スケールが大きいことに気づかされます。それでも、ショスタコ弦楽四重奏曲とは、そもそも個人的な感情の発露であることが多く、それはベートーヴェンや他の作曲家と共通しています。

交響曲の数からいえば、ショスタコベートーヴェンなど意識していないように見えますが、実はかなり意識していまして、そもそも彼以前の作曲家たちを多分に意識しています。当然ですがこの室内交響曲も、元々は弦楽四重奏曲ですのでその大家であるベートーヴェンを意識しているのですね。弦楽四重奏曲は第15番で終わっています。一方ベートーヴェンは第16番まで作曲しました。このあたりに、ショスタコーヴィチが意識したのは室内楽ではベートーヴェンであったことが見え隠れします。そもそも、第2番から第14番までは初演をベートーヴェン四重奏団が担当したのですから。

弦楽四重奏曲第3番 (ショスタコーヴィチ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC3%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81)

弦楽四重奏曲第4番 (ショスタコーヴィチ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%9B%E9%87%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81)

なぜ大作曲家の名前を冠した団体に委ねたのか・・・・・ショスタコの人生を紐解いてみると、やはりそこには弦楽四重奏曲に込めた「想い」というものがあるのでは?と思います。

そんな作品が、管弦楽になってみると・・・・・その個人的な心象だけではなく、やはりショスタコお馴染みの透明感というか、曲折というものがしっかりと刻まれていることが浮き上がってきます。ですから、私は即「原曲が聴きたい!」と思ったものです。それは先程も触れましたが、すでに全曲を借りてリッピングしてあるということで実現したのですが、そのきっかけになったのが間違いなくこの室内交響曲だったのです。

そして、交響曲バルシャイで借りるに決定!となったのもこの音源でした。第2集を聴くまでもなく・・・・・

勿論、次回述べますが第2集も素晴らしいのですけどね。それでも、私の中でショスタコーヴィチという作曲家に対して、親しみを感じたのがこの音源で、その上で交響曲を全曲聴いたときに湧き上ってきたのが、「ダズビのコンサートに足をはこびたい」というものだったのです。ダズビのコンサートへ行くことになったのには、こういった経験がありました。その上で、弦楽四重奏曲も聴いてみたい、と。

さて、オケはミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団。なんと、ショスタコーヴィチの作品でイタリア?と思うことでしょう。そりゃあ私だって借りる前はそう思ったので何の不思議もありません。しかし、聴いてみますとこれがいいアンサンブルなのです!

端正さという、常に私が評価するときに使う言葉ですが、それをしっかりと持ちつつ、ダイナミックさもしっかりとあり、原曲が弦楽四重奏曲という室内楽であることを微塵も感じさせません。その上で、弦楽四重奏曲としての透明感も残っているこの作品を見事に表現し、シンプルかつダイナミックな二つの作品が、私達にショスタコーヴィチの心象を雄弁に物語ることを演奏で示しています。

ショスタコーヴィチと言えば、日本では特に交響曲が有名ですが、実は室内楽作品でも評価は高い作曲家ですし、また、映画音楽を数多く作曲しているということも忘れてはならない作曲家です。つまり、単なるシンフォニストではなく、まさしく20世紀を代表する、あらゆるジャンルを作曲した大作曲家であったことを、私達は想起する必要があるでしょう。社会主義国の作曲家だったので宗教曲を作曲することが出来なかっただけで・・・・・

恐らく、このイタリアオケを使ったことが、この演奏で透明感や、諧謔性でどこかに希望の光が見えるのだろうと思っています。ショスタコと言えば、苦悩の作曲家というイメージがあるかと思いますが、この演奏では単純な暗さではなく、様々に絡み合った糸がまるで私たちを縛り付けるような、そんな暗さなのです。しかし、それはゆっくりとほどけるものなのだ、と。

そういう明るさと暗さが同居するのがこの演奏の素晴らしい点だと思いますが、それが実現したのはイタリアオケというチョイス故なのかもしれません。




聴いている音源
ドミトリー・ショスタコーヴィッチ作曲(編曲:ルドルフ・バルシャイ
弦楽器と木管楽器のための交響曲ヘ長調作品73a(原曲:弦楽四重奏曲第3番)
室内交響曲ニ長調作品83a(原曲:弦楽四重奏曲第4番)
ルドルフ・バルシャイ指揮
ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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