かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:横浜市歌

神奈川県立図書館所蔵CD、今回は県立図書館らしいライブラリをご紹介します。横浜市歌を取り上げます。

皆様が住んでいらっしゃる街には、「歌」がありますでしょうか。市や町、村、或いは県、府、道などです。私が住みます横浜には、市歌が存在します。それが「横浜市歌」です。

この音源は、その横浜市歌の特色を、説明及び演奏で伝えようというもので、なおかつ実用性をかねそなえた物でもあります。

まず、横浜市歌というものがどういったものか、御紹介しましょう。

横浜市歌
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%B8%82%E6%AD%8C

下記のサイトには楽譜も挙げられています。

横浜市歌横浜市生涯学習ページ)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/gakusyu/sika/

作曲は南能衛。ドイツ留学経験がある人で、当時東京音楽学校助教授の任についていました。

南能衛
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E8%83%BD%E8%A1%9B

そして、作曲は、あの有名な文豪森鴎外なのです。

森鴎外
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E9%B4%8E%E5%A4%96

ウィキの説明文の基本はこの音源の解説、及び音源の中の1トラックになっている「横浜市歌森鴎外」となっています。それだけ、この音源は研究用としても重要なものなのです。

というのも、この曲が制定された後、2度の大きな災害を受けて史料がほとんど散逸しているからなのです。その2度とは、関東大震災と横浜大空襲です。森鴎外は膨大な日記をつけており、その日記により当時の状況が知られていることとなっていまして、この作品を研究するには鴎外の日記は切っても切れない関係があります。

なぜこのコンビとなったのかは記録に残っていないようですが、やはりドイツ留学組であったという点が大きいでしょう。そしてそれがこの曲の形式上の特徴ともなっているのですが、トリオ形式となっているのです。クラシックではベートーヴェンスケルツォで使われている形式で有名です。

三部形式
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E9%83%A8%E5%BD%A2%E5%BC%8F

この形式を取る作品、とくに横浜市歌はマーチになっていますが、マーチで三部形式と取る作品は珍しいものでした。明治42(1909)年当時でです。

そんな作品を、横浜市では小学校で習います。トリオのABAはそれぞれ1番、2番、3番となっており、歌詞も異なります。著作権法の関係でウィキから転載しますが、その歌詞をA、B、A、つまり、1番、2番、3番の歌詞としてご紹介することにしましょう。

1.(A)
わが日の本は島國よ 朝日輝ふ海に
(わがひのもとはしまぐによ あさひかがよううみに)
連り峙つ島々なれば あらゆる國より舟こそ通へ
(つらなりそばだつしまじまなれば あらゆるくによりふねこそかよえ)

2.(B、つまり中間部)
されば港の数多かれど 此横浜に優るあらめや
(さればみなとのかずおおかれど このよこはまにまさるあらめや)
むかし思へば苫屋の烟 ちらりほらりと立てりし處
(むかしおもえばとまやのけむり ちらりほらりとたてりしところ)

3.(A)
今は百舟百千舟 泊る處ぞ見よや
(いまはももふねももちふね とまるところぞみよや)
果なく榮えて行くらん御代を 飾る寶も入り來る港
はてなくさかえてゆくらんみよを かざるたからもいりくるみなと)

中間部は開港以前の横浜を歌ったものですが、そこではテンポが落ちることがしばしばです。実はそれは楽譜にきちんと書いており、横浜市のサイトの方にある楽譜を見ていただきたいのですが、その中間部になるところに「トランクイロ」とあり、そこで楽想が変わるためなのです。

この音源では幾つか演奏が収録されていますが、テンポの切り替えをドラスティックに行なっているのは横浜交響楽団と横響合唱団の演奏であると言えましょう。実はこの二つの団体は姉妹団体でして、横響合唱団はわたしも「横響と第九を歌う会」で一緒に歌った経験があります。どちらも力のある団体で、特にこの演奏における横浜交響楽団のアンサンブルの素晴らしさはアマチュアながらもプロ並みの特筆すべきもので、これだけでも聴く価値があるでしょう。市民ならではのリスペクト溢れる、端正な演奏となっています。

横浜交響楽団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3

公式HP
http://www.yokokyo.net/

横響合唱団
http://www.geocities.jp/kurasan2004/uta/

この二つの団体の演奏が、私が小学校で習った横浜市歌のテンポにそっくりで、昔はこういった演奏が多かったのですが、最近ではトランクイロがテンポ指示ではないことから、ほとんどア・テンポで演奏していることが多いようです。そういったコントラストが分かる点もこの音源の特色です。

歌詞にも特徴があり、鴎外らしく漢語風のものが使われています。たとえば2番の「されば港の数多かれど 此横浜に優るあらめや(読み方:さればみなとのかずおおかれど このよこはまにまさるあらめや)」はどういう現代語訳になると思いますか?こうです。「(わが国日本は島国です。朝日が輝く海に、連なりそびえる島々なので、あらゆる国から船が通ってくるのです。)それだからこそ、港の数は多いのですが、この横浜に勝る港はないでしょう。」

これは反語と言って、「ど〜めや」というのがその言葉なのです。横浜港に勝る港などあるだろうか、いや、ないのだ!という意味なのです。現在では横浜港は国内では東京港に負けるようになってしまいましたが・・・・・

明治42年当時では、東の横浜、西に神戸くらいしか貿易港はなく、間違いなく「他の港に負けることがあろうか、いやない!」という港だったのです。

横浜港
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E6%B8%AF

この作品はまさしく、横浜の貿易港としての都市機能を讃頌した歌なのです。しかし、作曲された場所は残念ながら、上野の東京音楽学校でして、鴎外の詞に南が作曲をするという形で作られています。現在ではJ‐POPでよく使われる手法ですが、そんなやり方も明治期らしいですね。

演奏はオケ、ピアノ伴奏の合唱曲など様々なですが、実用面も重視したものとなっていて、最初の児童合唱は学校における教育用、ブラスバンド横浜市の公式行事用、筝楽は正月の市役所(あるいは区役所)用となっています。今ではこの音源の他に、シンセサイザーによる市営地下鉄改札口用も存在します。

こういった作品は神奈川県では横浜だけではなく、県もありますし、またお隣川崎にも存在します。その、川崎のものもユニークなのですが、それにつきましては、また回を改めましてご紹介したいと思います。



聴いている音源
南能衛作曲
横浜市歌
横浜少年少女合唱団
コーロ・みお
横浜市歌合唱団
横浜交響楽団
横浜混声合唱
横浜市消防音楽隊



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