かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:大バッハの息子達1

神奈川県立図書館所蔵CD、今回から7回にわたって、大バッハの息子達のシリーズをお送りします。元音源はブリリアント・クラシックスから出ている全集になります。

このシリーズはわたしにとっていろんな発見を与えてくれた、あるいはそのきっかけを与えてくれたものになります。そもそも、ブリリアント・クラシックスの魅力を教えてくれたのもこのシリーズだったと言っていいと思います。

ブリリアントは輸入盤の中でも特に秀でてバジェット・プライスなので価格をみただけでは手に入りやすいレーベルですが、実は神奈川県立図書館も幾つか所蔵していまして、その一つ一つが歴史的に重要な作曲家を選んでいます。これから何度か、元音源がブリリアントというものをご紹介するかと思います。

さて、シリーズ第1回は、古典派の作曲家たちに多大な影響を与えた、カール・フィリップ・エマヌエルの登場です。この人については、以前すでに「今月のお買いもの」でご紹介したことがあります。

今月のお買い物:C.P.Eバッハ フルート&オーボエ協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/386

今月のお買い物:カール・フィリップ・エマヌエ・バッハ 弦楽のための交響曲wq182
http://yaplog.jp/yk6974/archive/408

協奏曲を取り上げたエントリで、私はこう述べています。

「少しずつですが、追いかけていきたいとおもいます。」

これを実行に移したのが、このシリーズを借りることだったのです。このシリーズを図書館で見つけた時の興奮は今でも忘れません。ブリリアントはあまり在庫が店頭にないことが多いため、価格が安いとはいえ手に入りにくいものもけっこうありますので、こういったシリーズを置いて下さることは感謝に絶えません。この場を借りまして図書館の関係各位に対し、御礼申し上げます。

カール・フィリップは以前もウィキの説明を上げているかと思いますが、もう一度再掲しておきます。

カール・フィリップエマヌエル・バッハ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%97%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%9E%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F

「父よりも、父の友人ゲオルク・フィリップ・テレマンの作曲様式を受け継ぎ、ギャラント様式や多感様式を追究して、古典派音楽の基礎を築いた。」とある通り、様式的には過渡期のものであり、旋律も大バッハよりは全体的には軽快な作品が多いのが特徴ですが、かといって軽薄ではないのも特徴となっています。

この音源に収録されたのは、協奏曲のように記述がありながら実は交響曲であり、しかも各楽章がつながっています(ほとんどは半休止で次に進みますが)。所謂バロックシンフォニアであり、古典派の時代でいうオペラの序曲としても使われた一楽章(3楽章がつながった)の交響曲の様式を持っています。

実際、以下のサイトではシンフォニアとして紹介されています。

カール・フィリップエマヌエル・バッハ(1714.03.08-1788.12.14)簡易作品表
http://www.interq.or.jp/classic/classic/data/perusal/saku/Bach_CPE.html

様式的には、以前弦楽のための交響曲を取り上げていますが、その時と同じことが言えるかと思います。

「「弦楽のための」と銘うたれていることから、形式的には交響曲の前身「シンフォニア」のように各楽章は全曲連続し、つながっています。しかし、急〜緩〜急といういわゆるフランス伝統の三楽章形式にのっとっている点では、やはり「交響曲」と名づけたのはうなづけます。しかも第1番ではギャラント様式が冒頭から聴くことができ、確実に古典派へと音楽が近づいているのを感じることが出来ます。

その点で、明らかに過渡期の作品なのですが、しかしその音楽は流麗です。長調は抜けるよう青空のようですし、短調は昼間の日陰を思わせます。ピリオド楽器の聖(註:「せい」の間違いです。ここで訂正しておきます)かもしれませんが、モダンで演奏してもこれは同じような印象になるような気がします。ただ、このピリオドの演奏はとても軽く、かといって軽薄ではないのが印象的です。」

この音源で注目なのは、その上で独奏楽器がかならず2つついているという点です。木管楽器金管楽器の組わせにしているのも特徴の一つですが、音楽史の上では、これはやがて協奏交響曲を経て、ロマン派の協奏曲に影響を及ぼしている点です。

収録されている作品たちはすべてカデンツァがないので交響曲(それが不適当ならシンフォニア)とカテゴライズされますが、様式的にはそれはやがて協奏曲として成立していくものです。むしろ、この作品たちは複数楽器の協奏曲からカデンツァをなくしてシンフォニアにしてみたらという、意欲的な作品たちだと言えるでしょう。

その意味では、父大バッハよりも先進的なことにチャレンジしているわけなのです。しかし残念ながら、長らく大バッハの影に隠れてあまり評価されてこなかったことは否めません。これだけの先進性がありながら、です。それはおそらく、大バッハのだけでなく、ハイドンモーツァルトの影もあったことが原因だと思います。

以前のエントリでも述べていますが、この作品たちも過渡期の作品です。ですので、軽く扱われる傾向にあるのでしょう。しかし形式や様式に注目してみると、面白い点がいくつもあり、聴いていてわくわくしてきます。今でも、いろんな発見があって、このエントリ一つでは書ききれないくらいで、本来は1曲を取り上げてエントリを立てるべきだと思っています(なら、そうしろよと言われそうですが、それはもう少しお持ちを〜)。

特に、この作品群がモーツァルトに与えた影響はいかほどだっただろうと考えると、いろんな想像が頭の中を駆け巡ります。ハイドンは少なくとも残されている作品でこういったシンフォニア風の作品は書いていませんが、モーツァルトは書いています。そのコントラストが興味深いですし、音楽史におけるモーツァルトの位置づけや、モーツァルトが当時置かれていた立場を理解するうえで重要な情報をたくさん含んでいます。

その上でも、カール・フィリップはますます、「東横特急」のように軽快に演奏されながら、重要になっていくことでしょう。

・・・・・と、ベルズのアルバム「東横特急」風に述べましたけれど、演奏を語るのを忘れていますね!

特に印象的なのは、古典派の作品として扱っているという点です。もちろん、時代的には古典派ではありませんが、演奏者、特に指揮者はこの作品群が古典派に多大な影響を与えたという点を踏まえて演奏していることが、リフレインでは弱くしていたり、低い音では小さくしてみたりしている点でわかるのです。しかもそれは完全ではないということで、作曲年代を踏まえてもいます。ただ、それが聴き手にどんな感想を与えるかは判断が分かれるところでしょう。私としては素晴らしい演奏だと思いますが、思い切って古典派的に演奏しても面白かったなあと思います。

そんな演奏をこの演奏を踏まえてする団体が出てくると、もっと面白いかもしれませんね。



聴いている音源
カール・フィリップエマニュエル・バッハ作曲
二つのオーボエと二つのホルン、および管弦楽のための交響曲変ホ長調Wq179
二つのオーボエと二つのホルン、および管弦楽のための交響曲ヘ長調Wq181
二つのフルートと二つのホルン、および管弦楽のための交響曲ハ長調Wq174
二つのフルートと二つのホルン、および管弦楽のための交響曲ヘ長調Wq175
二つのフルートと二つのオーボエ、二つのホルンおよび管弦楽のための交響曲ホ短調Wq178
ハルトムート・ヘンシェン指揮
カール・フィリップエマニュエル・バッハ室内管弦楽団



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