かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:アーノルド 2台のピアノのための協奏曲他

今月のお買いもの、今回はナクソスから出ているアーノルドのピアノ協奏曲集です。

アーノルドって、だれ?って思いますよねえ。私も1年ほど前に知った作曲家なのですが、実は皆さん、意外なところで知っているんですよ!40代より上の年代、特に70代以上の年齢の方であれば、ほとんどの人が耳にしていますし、恐らく映画館で映画を見た時に聴いているはずなんです。

その映画とは、「戦場にかける橋」。といえばその年代の方はピン!と来るはずです。そう!クワイ河マーチです。

クワイ河マーチは、作曲はアーノルドではなくアルフォード(実はこの作曲家も、「マイ・コレ」でご紹介している作曲家です。マイ・コレクション:星条旗よ永遠なれ・決定版!世界のマーチ第1集http://yaplog.jp/yk6974/archive/209の第6曲目「海軍士官候補生」)で、原曲を「ボギー大佐」といいますが、それを映画で使うときに編曲したのがアーノルドだったのです。

ボギー大佐
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%A4%A7%E4%BD%90

クワイ河マーチ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%82%A4%E6%B2%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81

戦場にかける橋
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%8B%E6%A9%8B

この「戦場にかける橋」もそうなのですが、アーノルドは映画音楽も数多く作曲しているイギリスの作曲家で、特にデイヴィッド・リーン監督の映画の音楽をよく書きました。

そんな人であるためか、彼の音楽はイギリスが保守的といってもとても個性的です。

マルコム・アーノルド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89

このアルバムを語る時には、実はこのウィキの説明では不足している部分があります。それは両親がピアノストであり、自身もピアノが弾けてしかもジャズも弾いたという点です。ピアノ協奏曲が2曲収録されていますが、どれも個性的な作品です。

まず第1曲目が「ベッカス・ザ・ダンディプラット」序曲です。ダンディプラットとは、小僧という意味の古いイギリスの呼び名で、さしずめ「ベッカス小僧」ってところでしょうか。映画音楽のような色彩感と、不思議な和音の連続ですが、しかしなぜかすっと心に入ってくるのですね。

実は私も「戦場にかける橋」はみたことのある映画です。あの時代の映画には、魅力的な旋律をもった音楽が使われていました。ああいうのは素晴らしいなあと思いながら見た世代の、恐らく最後の世代になるのでしょうね。そのせいか、違和感がないのです。

形式的にもソナタ形式を備えていることもあり、芸術作品としてきちんと完成されています。それがとても映画音楽的であるにも関わらず、心に残る理由だと思います。

で、ここまではウィキの説明だけで十分です。問題はここから後の作品になるのですが・・・・・

2曲目が、「ジョン・フィールドの主題による幻想曲」です。ジョン・フィールドとは、19世紀イギリスの作曲家で、主にピアノソナタを作曲した人です。そのフィールドの旋律を、ピアノと管弦楽のための作品に主題として用いて、一つの作品に仕上げたのがこの曲です。これもソナタ形式を備え、保守的でありながら音楽的には実にジャジーです。つまり、ジャズ風であるわけなのです。

そう、ここでなんでジャズが出て来るのか、ウィキの説明では分からないわけなのです。以後の二つのピアノ協奏曲でも、ジャズ風の旋律がバンバン出てきます。

第3曲目と第4曲目はいづれも2台のピアノのための協奏曲ですが、第3曲目は3手のための、第4曲は4手のための作品です。第3曲目はピアニストの夫婦のために作曲された作品ですが、ひとり事故で片手を失っているのですね。そのために、3つの手で弾けるようにと作曲された作品です。いづれにもジャズの旋律が次々に出てきます。

え、イギリス人の作曲家だよね・・・・・

彼はどちらかといえば、戦争に反対する立場の人でした。そのスタンスゆえか、じつはアイルランドに対しても寛容な姿勢をとっていたようです。コモンウェルス(英連邦)の国々に対するひとしい興味を持っていることは、特に英国本国を構成する3つの国、スコットランドウェールズ北アイルランドの民謡を使った舞曲を作曲していることからうかがえます。そのことがあったのでしょう、かつて植民地であったアメリカの音楽にも興味を示していたと考えても不思議はないですし、そもそもが、両親ともジャズが好きだったのです。その影響をアーノルドも受けています。

そういった特徴が、このアルバムにはちりばめられているのです。是非とも他のジャンルの曲や、協奏曲でも管楽のものもきいてみたいと思います、そもそも彼のキャリアはロンドン・フィルのトランぺッターから始まっているからです。実際、このアルバムに収められた作品でも、金管はとても印象的に使われています。

演奏面では、ナクソスだからといってバカには出来ません。とても端正で、かつダイナミックな演奏は、聴く者を捉えます。特に第1曲目のつかみは絶妙!ピアノも音が硬めで、しかし表現力があるので、曲の構造がはっきりわかるのも高評価です。



聴いているCD
マルコム・アーノルド作曲
「ベッカス・ザ・ダンディプラット」序曲 作品5
ジョン・フィールドの主題による幻想曲 作品116
2台3手のピアノのための協奏曲作品104
2台のピアノのための協奏曲作品32
フィリップ・ディソン(ピアノ)
ケヴィン・サージェント(ピアノ)
エサ・ヘイッキラ指揮
アルスター管弦楽団
(Naxos 8.570531)

追伸:

テレマン室内オーケストラの関係者の皆様、横浜公演のコンサート評につきましては、来週28日に掲載いたします。


地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。