かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:プーランク 室内楽全集2

今月のお買いもの、今回はプーランク室内楽全集の2枚目をご紹介します。

前回も述べましたが、プーランク室内楽の特色として、管楽器が多いことが上げられますが、この2枚目でもそれは顕著です。1曲目の「チェロとピアノのためのソナタ」以外はすべて管楽器が入った室内楽です。

面白い傾向として、後期ロマン派でいったん影をひそめる管楽器が復権するのが、印象派から現代にかけてです。それは古典派やバロック復権されるのと機を一にしています。だからと言って、音楽そのものがバロック的な旋律なのかといえば、まったくそうではありません。その当時の音楽そのものです。形式的にまねたというほうが正しいでしょう。

このプーランク室内楽を聴いていても、決して形式が忘れ去られたわけではありません。一番分かりやすいのは、第1曲目のチェロ・ソナタでしょうが、不協和音がかなり含まれるこの音楽は、よく聴きますとソナタ形式です。決して形式面で冒険的なことをしているわけではありません。

私もずっと勘違いをしてきたことでもありますが、後期ロマン派以降の音楽は形式無視なのではなく、和声が変化したことが特色です。

ですから、プーランクの音楽は、形式に注目して聴きますと、以外にも聴きやすいことがだんだんわかってきます。この全集の編集として、特に私が評価したいのは、室内楽全集でありながら、プーランクの音楽が俯瞰できるようになっている点だと思います。特にこの2枚目は、形式的にはソナタ形式であるチェロとピアノのためのソナタで始まり、最後が劇付随音楽である「城への招待」で終わっているという点です。

「城への招待」は、実際にはクラリネットとヴァイオリンとピアノのための三重奏曲ですが、これは劇付随音楽であるためか、形式的には無視のような印象を受けますが、音楽的にはむしろ古典的な音楽が鳴り響きます。それが現代の私たちにとっては、ドラマのサウンド・トラックのように感じます。それもそのはず、作曲は1947年と戦後なのです。映画音楽などを意識していることは容易に想像できます。

同時代、東側ではショスタコーヴィチも映画音楽にいそしんでいましたし、西側でもアディンセルやアーノルド、コルンゴルトなど映画音楽にその名を遺した作曲家がたくさんいました。プーランクがそういった作曲家たちの影響を受けていないはずはないだろうと思います。「城への招待」には、そういった時代が反映されています。

一風斎の趣味的生活/もっと音楽を!
舞台音楽の楽しみ(1)――F. プーランク『城への招待』
http://blog.livedoor.jp/ippusai/archives/50020318.html

このブログ主さんも同じCDを取り上げられていますが、全集でないとなかなかこの曲は収録されないみたいですね。「これだけの音楽が、ドイツ-オーストリア系の作曲家の作品にありますかしら?」という問いかけは、まさしく私自身の心を貫くと同時に、日本のクラシックシーンに一石を投じていると思います。

同じ思いが、実は私自身プーランクの音楽に触れた時に持っていたので、同感なのです。そのきっかけがザ・タロー・シンガーズでしたし、あるいはmixiの「同時鑑賞会」でした。各々取り上げたのが合唱曲と室内楽でしたが、私はそこから入って大正解だと思っています。この小さなアンサンブルから、管弦楽曲だとどんな世界が待っているのか、楽しみでなりません。

プーランク管弦楽曲はさほど多くありませんが、わたしとしてはピアニストでもあった彼が作曲したピアノ協奏曲や、「田園のコンセール」などに今興味を持ち始めています。彼の作品には形式とそれが崩されたものとが同居していますが、それが混然一体となって、独自の世界を創り上げている点に興味をひかれます。そしてその音楽は決して難しいものではなく、むしろすっと心に入ってくるものです。

かといって、これが文章で表現しようとすると、難しいのです。このエントリを上げるために、幾度となく繰り返して聴いていますが、どう皆さんにつたえればいいのか、かなり悩みました。それだけ、実際には作品に様々な仕掛けがあり、それぞれとても深い内容を持っているということが分かって来たからです。でも、音楽的にはさらりとしている・・・・・

これからプーランクは、評価される作曲家になるのかもしれません。まだなくなって、私の年齢より少し上だけの時間だけしか立っていないのですから。その意味では、本当は1曲ずつご紹介したい全集です。

それにしても、演奏面でははっきりと浮かび上がるしっかりとした演奏が、とても心地よいです。不協和音ですら、細部が見えるような(ふざけた言い方をすれば、スリムクラブのように「見える!」)、端正な演奏です。それがプーランクの特色である「フランスもの」という点を、余計際立たせているように思うのです。



聴いているCD
フランシス・プーランク作曲
チェロとピアノのためのソナタFP143
クラリネットとピアノのためのソナタFP184
2本のクラリネットのためのソナタFP7
ホルンとピアノのためのエレジーFP168
ピアノ、オーボエバスーンのための三重奏曲FP43
「城への招待」〜クラリネット、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ〜FP138
フランソワ・ルル―(オーボエ
ポール・メイエ(クラリネット
ミシェル・ポルタルクラリネット
ジルベール・オダン(バスーン
アブ・コスタ―(ホルン)
フランソワ・サルク(チェロ)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)
(BMGクラシック BVCC-37040)



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