かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会管弦楽部第67回定期演奏会を聴いて

今回は久しぶりにコンサート雑感のコーナーです。2年前の第九から再び足を運んでいる、中央大学管弦楽団定期演奏会を聴いた雑感です。

毎回、どれだけ上手になっているんだろうかというわくわく感のほうが強くなっていますし、実際今回も素晴らしい演奏でした!それゆえに、今回私も持っている音源とその演奏を比べるということもしながらも、感想を述べていきたいと思います。

さて、今回は以下の3曲でした。

ロベルト・シューマン 「ジュリアス・シーザー」序曲
モーツァルト 交響曲第39番
シベリウス 交響曲第1番

シューマンシベリウスアマオケらしい選曲だと思いますが、私が驚いたのは、モーツァルト交響曲第39番を中プロに持ってきた点です。

私にとってモーツァルトとは、音楽を評論したり感想を述べたりするときの基準となる作曲家のひとりでもありますし、歌ったことのある合唱曲が一番多い作曲家でもあります。10年ほど前まで入っていた合唱団の音楽監督の口癖が、モーツァルトが上手に演奏できれば一人前というものでした。そのため、定期演奏会の演目にはモーツァルトが入ることが多かったのです。

しかし、モーツァルトは聴くと演奏するとは大違いな作曲家の一人です。テンポが揺れることも少ないですし、聴きますと簡単に思うかと思われるでしょうが、下手すればベートーヴェンよりもずっと難しいのです。ここで幾度か取り上げている宮前フィルも、2度ほどずっこけています。

そのモーツァルトを、4年で卒業してしまう学生オケが演奏するということが、私はチャレンジャーだなと思ったのです。

ところが、その「チャレンジャー」という見方が、大変失礼だったことを思い知らされるのです・・・・・

まず1曲目のシューマンは、とても重厚な音楽です。ネットでは説明がなかなか見つからない作品で、1851年に作曲された演奏会用序曲です。演奏会用序曲と聴いて、ピン!と来る方はさすがです。この作品、ベートーヴェンの影響を受けて成立した作品です。

ベートーヴェンも演奏会用序曲をいくつか書いていますが、そういった作品にあこがれてシューマンが作曲したものの一つです。そもそも、シューマンは音楽的にはベートーヴェンの影響を受けた人でした。

ロベルト・シューマン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3

ウィキの説明には注意書きがあり、取り扱いには慎重さが必要ですが、この作品が彼の人生において精神障害が小康状態になった時期に作曲されたものであることには間違いありません。シェークスピアの戯曲をもとに作曲したものですが、実はシェークスピアの該当戯曲は、シーザーではなくブルータスを中心に描いています。

ジュリアス・シーザー (シェイクスピア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC_(%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%A2)

この原作が悲劇であるという点、そしてシーザーではなくブルータスが中心であるという点は、シェークスピアが生きた当時のイングランドの政治状況を反映したものであるという説明がありますが、それにシューマンはとても惹かれたのでしょう。

オケはこの曲を、いきなりほぼ完ぺきなアンサンブルを聴かせることでその実力を聴衆に示してみせました。特に、前奏なしで金管が出るとというのはとても難しいのです。私は合唱をやっていましたから、その難しさはとても理解できます。タイミングが完全にあえばもっとよかったと思いますが、それでもほとんどあったうえできちんと鳴った点が素晴らしい!その点はこの曲だけではなくシベリウスでも全く一緒で、今まで指摘したことがほとんど解決していたことが本当に素晴らしかったと思います。

新年度であるせいなのか、ppが若干弱く仕切れていないかなという印象がありましたが、これは解釈の差かもしれませんし、また指揮者がホールを考慮したうえでかも知れませんので、今回はそこまでは指摘しないでおきます。それがたとえば、混声合唱団「樹林」ほどのがっかり感を私に与えたかといえば、それは全くだったからです。それだけ、アンサンブルもアインザッツも素晴らしく、少なくとも、pとffの差はきちんとついていたからです(ですので、本当はこういった演奏を是非とも樹林の方には聴いてほしい!)。

最後をふわっと終わらせるのも、豊潤な演奏を締めくくるにふさわしいもので、美しい!これが指揮者佐藤先生の美意識なんだなと納得しました。第九の時にも同じようにコメントしたかと思いますが、今回それを裏付けた形となりました。

そして、2曲目のモーツァルト。丁度同じ曲をマリナー指揮、聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー(いわゆるアカデミー室内管)の演奏で聴いていますが、全体的な美しさという点ではさすがアカデミーだと思います。しかしながら中大が優れていたのは、その生命力でした。特に第1楽章第1主題の力強い旋律は、身震いしました。

交響曲第39番 (モーツァルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC39%E7%95%AA_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)

これがアカデミーと比べますと、アカデミーは若干力強さがなく、全体的に上品です。今までそれが気に入っていたのですが、中大オケがとってかわりました。

ヴァイオリンの痩せた音などはアマチュアらしいもので、それは確かにアカデミーのほうが断然上です。しかし、アンサンブルとアインザッツを合わせて、それが力強い演奏となった時、欠点を補いむしろ素晴らしい演奏へと変わることを、私は思い知らされました。

ヴァイオリンは宮前フィルに負けるかもしれません。しかし、力強い演奏は決して負けていません。むしろ、モーツァルトで興奮し感動に浸っている自分がいます。今の宮前フィルであれば、この中大の演奏を超えられるかと思いますが、なかなかモーツァルトは取り上げてくれないようです・・・・・是非とも、来年には!

勿論、中大オケにも挑戦してほしい曲があります。それを明確に感じた曲が、最後のシベリウスです。第1番は4楽章制の古典的な作品でありながら、とても愛国心があらわれている作品です。

交響曲第1番 (シベリウス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9)

しかし、この曲は所謂国粋主義ではなく、純然たる意味での愛国心、つまりナショナリズムを表現した曲です。そこをどう表現するのだろうというのが、注目点でした。

演奏は激しいものです。しかし、今回の3曲すべてに共通する点なのですが、それだけ激しいのに全くアンサンブルは崩壊しないのです。しそうになることも有りません。つまり、「情熱と冷静の間」のバランスが完璧であることを意味します。それゆえに、激しい愛国心が切々と聴き手に伝わると言うよりも、シベリウスの想いとして迫ってくるというべきでしょう。

この曲はヤンソンス指揮、バイエルン放送交響楽団の演奏で聴いていますが(実はモーツァルトシベリウスの音源は神奈川県立図書館所蔵のもの)、激しさは引けを取りません。もはやプロオケと一緒だといってもいいでしょう。それゆえに、ヴァイオリンの痩せた音や管楽器のちょっとだけタイミングが遅れる(音が不安定ではないけれど)という点はぜひとも解消してほしい!それが実現すれば、恐らく宮前フィルと並ぶかそれ以上のオーケストラになるかと思います。まだまだ伸びしろありと思っています。

最後とてもふわっと、しかもppで暗く終わるのが佐藤先生をはじめ、団員がこの曲に込めた想いだったはずですが、それをもう少しだけじっくりと聴けなかったのかなあというのが残念です。というのは、ブラヴォウをかけるのが2秒早かった・・・・・会場のパルテノン多摩はそれほど残響がみじかいホールではありません。演奏は完璧に近かっただけに、気持ちはわかりますが残念でした。

そして、シベリウスのこの曲が完璧に演奏できるからこそ、シベリウスの祖国フィンランドを支配したロシアが革命後ソ連となった時に活躍した作曲家、ショスタコーヴィチを演奏してほしいと思います。ダスビと肩を並べる実力はあるとわたしは思っています。

全体的に力強くかつ重厚で、豊潤な演奏。こんな演奏をアマチュアオケ、しかも学生オケで、それも母校のオケで聴けるなんて・・・・・こんな幸せは在りません。アンコールのシベリウスの抒情的ワルツではちょっとだけアンサンブルが揺らいだでしょうか、それでも、豊潤な演奏は途切れることがなかったことが、年末の演奏にも期待を持たせてくれます。もちろん、年末もなるべく馳せ参じたいと思っています。

え、指揮者のプレトークはって?・・・・・・受けを狙いすぎですとだけ、述べておきますです、はい・・・・・




聴いてきた演奏会
中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部第67回定期演奏会
ロベルト・シューマン作曲
ジュリアス・シーザー」序曲 作品128
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第39番変ホ長調K.543
ジャン・シベリウス作曲
交響曲第1番ホ短調作品39
3つの小品 作品96aより 抒情的ワルツ(佐藤寿一編曲によるハープとテューバ入り)
佐藤寿一指揮
中央大学学友会文化連盟音楽研究会管弦楽部(中央大学管弦楽団
平成24(2012)年5月26日、東京多摩市、パルテノン多摩



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