かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ホロヴィッツのベートーヴェン三大ソナタ

今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、ホロヴィッツが弾くベートーヴェンの三大ソナタです。

ホロヴィッツと言えば、ウクライナ出身でアメリカを中心に活躍した名ピアニストです。

ウラディミール・ホロヴィッツ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%AD%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%83%84

タッチの正確さで有名な人ですが、この演奏ではあまりそれを期待しますと裏切られるでしょう。

ベートーヴェンの三大ソナタとは、ピアノ・ソナタの「月光」「悲愴」「熱情」を指しますが、「月光」の第3楽章では必ずしもタッチが正確とは言えない部分もあります。どこか指が回らないような・・・・・

それは、さすがに晩年の演奏だからだと思います。ブックレットの解説は1977年に書かれていますが、そのあたりの録音だとすれば、1903年か04年に生まれた彼はすでに「アラセヴ」、つまり70歳前後の年齢だからです。

しかし、表現力は素晴らしく、タッチの正確さが落ちている点を、ドラマティックなクレッシェンドで補うなど、スコアリーディングの深さで補っています。ですので、私はミスタッチが全く気にならないのです。

それどころか、借りた当初は「こういうアプローチもアリなんだな」と感心、感動したのを覚えています。この音源を既に全集を借りてリッピングしていながら借りた最大の理由は、このブログにホロヴィッツなどの有名ピアニストの演奏を聴けとコメントをいただいたことと、さらに自分自身でも他の演奏家のアプローチが知りたかったことがありました。

その欲求を十二分に満たしてくれています。悲愴もppとffの差をはっきりとつけて表現に幅をつけていますし、タッチの細やかさは山根弥生子さん以上です。それがさらにはっきり出ているのが「熱情」で、第2楽章の軽めでかつ静謐な演奏は、かえってとても重厚で、その上で抜けるような青空が見える、「熱情」という題名からは想像できない音楽が鳴り響きます。それが第3楽章で一転、題名らしい音楽に変わります。

その絶妙なコントラストは、聴く者を圧倒します。年齢からくる衰えと闘いながら、「情熱と冷静の間」のバランスを取り、その上で実現されている豊かな表現は、さすが名演だと思います。

最近、知り合いのピアニストが「楽譜を見ないことがいいことなのだろうか」という疑問をツィッターで呈していましたけれども、それはこういった演奏が頭にあるのかという気がします。ホロヴィッツが暗譜だったのか楽譜を見ていたのかはわかりませんが、70歳前後での表情豊かな演奏は決して記憶力だけではできないはずです。長年の経験もさることながら、楽譜との格闘の末に導き出されるものであるはずだからです。

合唱では、定期演奏会において楽譜を持つ持たないが議論になることがしばしばですが、持つことにも持たないことにもそれぞれに利点があります。ただ、持ってもアンサンブルが合うことは決して珍しいことではありません。それについては、また別の機会に詳しく述べたほうがいいかもしれません。

ふと、この演奏を聴いてそんなことを述べたくなりました。

この音源では、シューベルト即興曲が2曲収録されています。シューベルトと言えば、歌曲王として有名ですが、ベートーヴェンの音楽を敬愛していたことでも有名です。ベートーヴェンとは違った、霊感のおもむくままの音楽がシューベルトの特徴ですけれども、その中に気高い精神をきれてくるあたりに、シューベルトベートーヴェンに対する尊敬を私は感じます。この曲とは違いますが、シューベルトは「熱情」の第1楽章を自身のソナタに引用してもいます。

ピアノソナタ第23番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC23%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

そういったことを、ホロヴィッツは念頭に置いているだなとすぐわかります。全くベートーヴェンと同じスタンスで弾いていまして、粗末に扱いません。このような演奏をきくにつけ、シューベルトの音楽が歌曲的だからと言って、シューベルトの作品を粗末に扱っていいのだろうかという疑問が、私の中で消えません。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」
ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」
ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」
フランツ・シューベルト作曲
即興曲変ホ長調D.899(作品90-2)
即興曲変イ長調D.899(作品90-4)
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)



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