かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ全集2-4

神奈川県立図書館所蔵CDベートーヴェンヴァイオリンソナタ全集2の、最終第4集を迎えました。第9番「クロイツェル」と第10番です。

番号順だからこの二つが並ぶのは当然ですが、この二つは全く違う時期の作品であるということは、念頭に置いておく必要があるでしょう。クレーメルアルゲリッチの演奏はそれを反映しているように思います。

まず、第9番「クロイツェル」は1803年の作曲で、これまでご紹介してきた8曲とほぼ同じ時期、ちょうどベートーヴェンの作品の時期くわけでいえば初期から中期にかけての作品です。ハイリゲンシュタットの遺書が描かれた直後であり、室内楽と言えば弦楽四重奏曲は書かれず、ピアノソナタが目立つ時期です。

そういった時期を反映してか、音楽自体も短調で厳しいものですが、演奏もそれを意識してか、強いアクセントで第1楽章などは疾走していきます。

一方、第10番は作品96が振られていることから、おなじ中期ですがもう少し後の1812年に作曲されています。実に9年たってからです。この時期には交響曲は6番までを作曲し、聴覚の障害を乗り越えて芸術に身を捧げていると言ってもいい時期です。一つなにかを悟ったと言いますか、落ち着いた楽曲になっています。調性もト長調と、第8番と同じになっています。演奏もそれに伴って落ち着いた雰囲気を重視し、アインザッツは強めですが第9番でベートーヴェンが指示したような激しいセッションというものではなく、じっくりと音楽を聴かせるものとなっています。

この二つを番号順に聴きますと、ある意味クロイツェルの異様さが浮かび上がるように思います。確かにクロイツェルは素晴らしい曲です。デモーニッシュのような第1楽章、楽しいのですがそれでも気高き第2楽章、そして再び激しい第3楽章。まさしく「王者の風格」(ウィキ)を持っています。しかし、では第10番はもっと激しいのかと言えば、決してそうではないのですね。

第9番は当時のヴァイオリン奏者のために明らかに作曲しており、他はあまり知られていません。つまり、作曲の動機としても第9番は他の9曲とは違っていることに気が付かされます。

ヴァイオリンソナタ第9番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC9%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ヴァイオリンソナタ第10番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC10%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

それから導き出される結論は、第9番こそベートーヴェンのヴァイオリンソナタであるとは言えない、ということです。やる気があればこれだけのことは出来るけれど、ととらえるべきです。

それを踏まえて、このウィキの説明はされるべきでしょう。

ヴァイオリンソナタ第5番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%BF%E7%AC%AC5%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

そう、全集を聴いてこそ、このウィキの説明の意味が分かってくるのです。その点は注意が必要でしょう。つまり、ベートーヴェンはヴァイオリンが弾けたはずですが、ヴィルトーソとまで言えるレヴェルではないということが、ヴァイオリンソナタ全体を聴いてみればわかってくるのです。だからこそ、聴いていてこれはヴァイオリンを念頭に置いたものではないのでは?というようなパッセージがあるのです。

この全集が番号順になってくれているおかげで、ヴァイオリンソナタが持つ特徴が分かってくるように思います。その点が、やはりメニューインのものは残念です。

私は、ベートーヴェンが必死になっていいものを創ろうとする、必死さを感じるのですが、皆様は如何でしょうか。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ヴァイオリンソナタ第9番イ長調作品47「クロイツェル」
ヴァイオリンソナタ第10番ト長調作品96
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)



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