かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト 交響詩集

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はリストの交響詩集です。ナクソスから出ているものと記憶しています。

ベルリオーズ幻想交響曲というのはある意味交響詩と言ってもいいわけで、はっきりとリストに影響を及ぼしています(実は、リストは幻想交響曲のピアノ編曲を手掛けています)。そのため、次はリストの交響詩を、と考えたのです。

フランツ・リスト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88

特に、私は前から「前奏曲」が聴きたいと思っていました。この曲も高校時代の音楽鑑賞の時間に聴いてからいつかはと思っていたものですし、またリストの交響詩の中でも特に有名な曲でもあります。

しかし、リストは交響詩を「前奏曲」だけでなく他に12曲、全部で13曲書いています。そこで、いつもの「全部聴ければ」という思いがあって、図書館で物色した時に見つけたのがこの音源でした(後に、私は全部を聴いていますが、それはまたその時に)。

まず、第1曲目は「タッソー:悲嘆と勝利」です。1849年に作曲された2つ目の交響詩です。そもそもはゲーテの同名の戯曲がゲーテの100周年を記念してヴァイマルで上演された時の序曲です。つまり、ベートーヴェンも書いた「音楽付随劇用序曲」だったということです。

交響詩は、その内容からベルリオーズやリストが先駆者と言われることが多いですが、歴史を辿ってみると、実はその原点はベートーヴェンであることが分かります。だからこそ、本当は全部を聴いたほうがリストの「交響詩」jは理解しやすいかと思います。だからこそ、後に私は全部借りることになるんですが、それは置いといて。

「タッソ」はその内容ゆえとても劇的な曲です。

タッソー、悲劇と勝利
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%80%81%E6%82%B2%E5%8A%87%E3%81%A8%E5%8B%9D%E5%88%A9

タッソとは、中世ヨーロッパの詩人です。確かにこの人の生き方というのは劇的です。ゲーテやリストが触発されてもおかしくはないでしょう。

トルクァート・タッソ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%BD

それにしても、文学と音楽が一つの芸術となって結実するのもベートーヴェンが先鞭をつけていますし、そこにもリストがいかに初期にはベートーヴェンの影響を強く受けているかがうかがえます。

次が「前奏曲」です。

前奏曲 (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

1854年に作曲された3つ目の交響詩で、彼の交響詩、いや、ピアノ曲と並んで彼を代表する作品です。「人生は死への前奏曲」という人生観が音楽全体を貫いています。それが学生時代、私の心を強く揺さぶりました。

この曲もそもそもはその「人生は死への前奏曲」という言葉がアルフォンス・ド・ラマルティーヌの詩によるわけで文学と深く結びついていますし、初めが合唱曲の序曲であったことも文学と深い関係にある曲です。交響詩の成立に他の芸術、特に文学が深くかかわっていることがこの二つでよくわかります。そしてそれも、元をたどりますとベートーヴェンに辿り着くのですね。

形式的にもこの曲は注目すべきものを持っていまして、2つの主題を用いた、4部構成(緩 - 急 - 緩 - 急)の形式です。ウィキにはその後ろに「一種の変奏曲と見なすことができる」とありますが、私はさらに言えば、循環形式に繋がる作曲の仕方だと思います。そもそも、循環形式はリストが確立したもので、それをサン=サーンスが使ったことで有名になりました。その意味でこの曲は音楽史上とても重要な曲であるからこそ、音楽鑑賞の時間で取り上げられるのですね。

3曲目が「マゼッパ」です。

マゼッパ (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%BC%E3%83%83%E3%83%91_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

もともとはピアノ曲で、後に有名な「超絶技巧練習曲」の中の1曲ともなりました。パッセージがとても速い部分があって、もともとピアノ曲であることをうかがわせる部分が多々あります。それゆえに冒頭から緊張感が支配する曲です。ウクライナの歴史上の英雄マゼッパを取り上げた曲でその部分が強調されることも多いです(確かに、リスト自身とても愛国心がある人だったことは確かです)が、そもそもはユーゴー叙事詩「マゼッパ」に基づく描写音楽で、これも文学と結びついた作品であるのです。

この曲はリストの交響詩の6曲目で、編曲には実は当時弟子であったヨアヒム・ラフが関わっています。なるほど、ラフの交響曲が一見すると交響詩のようであるのはこういった曲の成立にかかわっているからなのですね。それ故、本場ではラフの再評価が始まっていると考えてよさそうです。

ヨアヒム・ラフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%A2%E3%83%92%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%95

以前、ラフの交響曲を取り上げましたが、その時にもなぜ今本場では再評価なのかを考えるべきと述べました。その理由の一端がこういったことからわかってくるのです。

もちろん、この曲を聴く限りではラフが必ずしも先生であるリストを超えたとは必ずしも言えないと思いますが、交響詩交響曲として再構築したと考えれば、その後リムスキー=コルサコフなどに与えた影響が無視できないわけで、そういった点はとても重要だと思います。その意味で、このマゼッパは単にのちの国民楽派へつながるということ以上に音楽史上重要であると思います。

それにしても、このマゼッパも1854年の作曲なのですが、この年はリストが集中的に交響詩を作曲している年でもあります。そこで多くの素晴らしい作品が生み出されているのですが、その部分に焦点を当てた編集であることが、次に「プロメテウス」が来ていることでわかります。

プロメテウス (リスト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%83%86%E3%82%A6%E3%82%B9_(%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88)

1850年にまず劇付随音楽の序曲として成立し、その後1855年交響詩となった曲です。その劇も哲学者ヘルダーが原作ですし、もともとプロメテウスがギリシャ神話であることも文学と深く結びついています。さらに言えば、プロメテウスはベートーヴェンも「プロメテウスの創造物」を書いているということを忘れてはならないと思います。そういったものとの関連性から、とてもリストらしい作品だと言えましょう。

演奏はポーランド国立放送交響楽団ナクソスの常連とも言うべきオケですが、アンサンブルが素晴らしい!しなやかですし、リストの意図が浮かび上がってきます。多少ダイナミクスに欠ける点はレコーディングエンジニアの哲学のせいではという気がします。ナクソスは全体的に、残響がよく聴こえるように録音するからです。それはパソコンよりもコンポにかけてみるとわかるのですが、恐らくこの音源も元々のCDをコンポに掛ければ同じ現象が起こるかと思います。

新しくコンポを買い替えてから、ナクソスのCDをかけてみますと前とはまったく違った「音」が出ていることに驚かされます。それに気づいてから、私はあまり「ナクソスだから」とは思わなくなりました。廉価盤であるわけですから、どこかでコストを下げなくてはならないわけで、ナクソスはレコーディングスタッフの数だと私は思っています。マイクロフォンの数を減らし、ナチュラルな残響を残す方向で録音すれば、人数は少なくて済みますので。

その点では、ナクソスはとてもナチュラルな音を追及しているレーベルであるということも言えるかと思います。この音源でもそれはパソコンで聴いていてもうかがえる部分が幾つかあります。

そもそも、此れだけしっかりと交響詩を聴かせてくれるアルバムはなかなかないわけで、ナクソス以外で探すとなれば恐らくブリリアントになるわけなのですが、実はそのブリリアントがやはり全集を出しています。私がのちに借りたのはそれでして、いずれも国内盤ではありません。

こういった点が、ナクソスが一定の評価を得ている理由だと私は思います。



聴いている音源
フランツ・リスト作曲
交響詩「タッソー:悲嘆と勝利」S.96
交響詩「レ・プレリュード(前奏曲)」S.97
交響詩「マゼッパ」S.100(助手:ヨアヒム・ラフ)
交響詩「プロメテウス」S.99
ミヒャエル・ハラース指揮
ポーランド国立放送交響楽団



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