かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴュータン ヴァイオリン協奏曲第1番・第4番

今月のお買いもの、2枚目はヴュータンのヴァイオリン協奏曲の第1番と第4番が収録されたCDです。ナクソスから出ているヴュータンのシリーズです。

さて、きき慣れない名前が出てきました。ヴュータンって、誰?と思う方も多いかと思います。ヴュータンは19世紀に活躍したベルギー人のヴァイオリニストで作曲家です。

アンリ・ヴュータン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3

主にフランスで活躍した人で、典雅な奏法で知られる19世紀のフランス・ベルギー(フランコ・ベルギー)楽派に連なる演奏家であり、作曲家です。

この人の作品はmixiの某SNSにおいて触れまして、それからずっと聴きたいと思っていた作曲家でした。この系譜の作品はナクソスが充実しており、師のべリオともども、ヴァイオリン協奏曲の棚に並んでいます。

さて、まず第1番ですが、実際には二つ目の作品になるようです。1849年に初演されたこの曲は、ウィキの説明文を読みますと、どれだけ超絶技巧で、パガニーニよりもすごいのかと思ってしまいますが、表面的にはものすごいものはありません。しかし、そこにはまさしくフランコ=ベルギー楽派が持つ「典雅さ」が前面に押し出されています。

この時代頃から顕著になった、オーケストラの導入部とヴァイオリン・ソロが奏でる旋律とが違う(つまり、主題提示部でそれぞれが異なる旋律を担当する)という作品ですが、それが何とも優雅でかつ緊張感があるのでしょう!恐らくそこに、当時の作曲家たちが度肝を抜かれた演奏の一端を見るような気がします。

カデンツァが終わりオケと協奏する部分などは、まさしく名人芸が要求される部分でありながら、同時に気品も要求されます。いつも私が言及します「情熱と冷静の間」がとれないと絶対にうまく演奏できない作品です。

構成面では、第2楽章と第3楽章がつながっていますが、第2楽章は第3楽章の序曲の役割となっています。つながっている作品というのはそういったものが多いわけですが、ヴュータンの第1番においては完全に第2楽章は第3楽章の序奏と化しています。2楽章形式と言ってしまってもいいくらいです(実際、CDにはイントロダクションとありますので、2楽章と言ってもいいでしょう)。

続く第4番は、よく演奏される曲とウィキには出ていますが、なんといっても個性的な点を強調するべきでしょう。ヴァイオリンがソロで出る部分は、ppでなおかつ高音で出るのです!これはもうびっくりすると同時に、うなってしまいます。聴き手を一気に作品の世界へと引き込んでいきます。そこから展開される典雅で緊張感がある音楽が最後まで飽きさせません。その上、構成的には4楽章形式を取る珍しさを持ち、その楽章の一つはスケルツォがあるという、まるでブラームスピアノ協奏曲第2番のようです。

1852年までに完成されていますから、ブラームスピアノ協奏曲第2番よりも早いわけで、この曲がブラームスに影響を与えている可能性も0ではないでしょう。スケルツォが入っているというのは先例がいくつかあり、それはウィキのブラームスの第2番の項目で紹介されていますが、それらと並び考えてもいい作品だと思います。確かに、ピアノとヴァイオリンで楽器は異なりますが・・・・・

演奏面では、なんといってもヴァイオリニストのミーシャ・カイリンを褒めなくてはなりません。変幻自在にヴァイオリンを操るその演奏は、まったく安心して聴いていられます。なんといっても、しなやかで力強いその演奏には艶があります。それ故でしょう、ヴュータンのもつ典雅さが、前面に押し出されているように思います。特に第4番で言及した第1楽章のソロ開始部のピアニシモは、絶妙の演奏です。

サポートする二つのオーケストラも、初期のナクソス音源にありがちな何となく物足りなかったり、アンサンブルが若干合わなそうな部分があったりというものがなく、安心して聴いていられます。このヴュータンでもそうですが、最近のナクソスから出るアルバムは、水準が高いものばかりだと思います。あまり知られていない作曲家が取り上げられていることもあるでしょうが、ちょっと物足りないという部分にはレコーディング・エンジニアの哲学なども含まれるので、私としてはアンサンブル面で安心して聴いていられるという評価をナクソスには下しています。

今後も、折を見てヴュータンの作品を買っていきたいと思っていますので、取り上げたいと思います。



聴いているCD
アンリ・ヴュータン作曲
ヴァイオリン協奏曲第1番ホ長調作品10
ヴァイオリン協奏曲第4番ニ短調作品31
ミーシャ・カイリン(ヴァイオリン)
デニス・ブルク指揮
ヤナーチェクフィルハーモニー管弦楽団(第1番)
湯浅卓雄指揮
アルンヘム・フィルハーモニー管弦楽団(第4番)
(Naxos 8.554506)



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