かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:九州におけるコバケンさんの「炎の第九」

今回のマイ・コレは、コバケンこと小林研一郎氏の「炎の第九」です。

小林研一郎
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E7%A0%94%E4%B8%80%E9%83%8E

公式サイト
http://www.it-japan.co.jp/kobaken/

この方の演奏は情熱的であることから、たいてい「炎の」という枕詞が付くことが多いのです。「炎のコバケン」とも言われます。

このCDを買った当時は、小林氏は特にチェコフィルとの共演がクローズアップされていた時期だと思いますが、実は国内地方オケの指揮にも意欲的な方です。その一つが、九州交響楽団です。

九州交響楽団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%A5%BD%E5%9B%A3

公式サイト
http://orchestra.musicinfo.co.jp/~kyukyo/

以前から私は地方オケの第九の演奏に興味を持っていまして、これがその3つ目のCDとなります。以前、名古屋フィルと札幌交響楽団のものを取り上げています。

マイ・コレクション:アツモン/名フィル「第九」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/431

マイ・コレクション:ヤマカズさん最後の「第九」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/451

もちろん、このCDは私の中で連なるものです。CD自体はエクストンレーベルで、貴重な音源を出すところで有名です。実は先日ご紹介した神奈川県立図書館のマタチッチ/N響も同じレーベルから出ているものです。

神奈川県立図書館所蔵CD:マタチッチ/N響の第九
http://yaplog.jp/yk6974/archive/788

さて、この「炎のコバケン」の第九は、聴きますとまずは端整さが目立つもので、さほど炎という印象は受けないと思います。第1楽章の主題展開部におけるティンパニ連打もごく通常の強さです。いや、もしかすると聴く人によってはそこで少しは感じるかもしれませんが・・・・・

よく現われているのはやはり第4楽章でしょう。コバケンさんのうなり声も収録されているのもそうなのですが、私は特に合唱団にそれを感じます。その熱くなりつつも冷静な合唱団をきちんと冷静なオケが支えている素晴らしい演奏です。

まず、第4楽章冒頭のティンパニ連打をきちんとひっぱたいてくれているのは好感がもてますが、できればもう少しぶっ叩いてもよかったと思います。少し上品かな〜って感じがします。ですからこの演奏は第3楽章まではまさしく端整な積み上げるような演奏なのです。

変わってくるのは合唱団が入ってからです。まず、コバケンさんは合唱団にプロと同じレベルを要求しています。それは、楽譜通り最初の合唱はソプラノが入っていない点です。

この演奏の合唱団は福岡合唱連盟福岡支部傘下の合唱団が連合で組んでいます。しかし、その合唱は決して呉越同舟的ではなく、きちんと統率がとれている合唱なのです。

http://jcaf.web.fc2.com/profile.html

これだけの合唱団がありながら、統率するのは並大抵ではありません。指導者がとてもいいのだと思います。子音をきちんとはじき出しているの点もわたしとしては高評価です。だからこそ、コバケンさんは妥協しなかったのだと思います。通常、アマチュア合唱団が第九を演奏するとき、アルトや男性が弱いためソプラノを入れがちなんですが、実はソプラノは楽譜には書かれていません。次の"Ja, Wer auch nur eine Seele"から入るのです。この演奏は合唱団がアマチュアでありながら、その通りに歌っています。そこが素晴らしいのです。

もちろん、これはプロであればごく当たり前のことですが、日本では特にアマチュア合唱団が第九を歌うとき、ソプラノを入れるのがなかば慣例ともなっているもので、私は歌っていながらあまり快くは思っていませんでした。ですから、楽譜通りに歌うときには気合いが入ったものです。ここは俺たちに任せろ!って感じですね。最初の「Freude!」すら女声を入れる場合もありますから・・・・・

誤解のないように付記しておきますが、私は女性を差別する人間ではありません。ただ、楽譜に書いていないことはやめましょうねということです。なぜここでベートーヴェンが女声を入れなかったのか、それは差別していたからなのか、きちんと検証しないでいうべきではないと思います。もし差別しているのであれば初めから女声を使わないでしょう。ただ少しだけ保守的だっただけです。

もちろん、女声を入れて効果的だった演奏も経験的に在りますから、冒頭合唱で女性が入ることを完全に排除するつもりはありませんが、まず原則は楽譜通りにやることだと思います。それがベートーヴェンの残した「遺志」ですから。その上で、どうしても入れたほうがいいとなれば入れればいいと思います。

その点で、この演奏はもっと評価されてもいいと思いますが、日本人の指揮者というだけで低評価されている点もなきにしもあらずです。しかし、いつも私が気にするvor Gott!の部分は、とても変態演奏です。まず、だんだんリタルダンドしているのも変態です。確かにフェルマータがついていますからリットしてもいいのですが、ふつうここはリットしないでしょう。リットする場合は普通、フェルマータがついている後に全休符が来るもしくはその曲が終わることが前提なのですから。

で、スコアを見てみますと、確かに終わってはいますが、すぐ同じ8分の6拍子で音楽はアラ・マルチャで始まっています。この「終わり」をどうとらえるかで解釈は違ってくるでしょう。その点で、このコバケンさんの演奏は特徴あるものになっています。その上で、第329小節の二分音符のvorに対して、第330小節のGott!は7拍伸ばしている点も、変態です。

私としましては、この演奏は炎のというよりは、完全な変態演奏の一つととらえています。ただ、それが演奏者全体が熱くなったうえで行われているという点は、確かだろうと思います。その上で全く乱れない演奏。ヤマカズ/札響に比べて全体的な熱気はありませんが、全体的なまとまりと熱気のバランスという点では、この演奏はその上を行くかもしれません。

このCD以降、地方オケの第九を集めるのは止まっていますが、今年あたりからまた折りを見て集めてみようかと思っています。もし買い求めましたら、「今月のお買いもの」コーナーでご紹介したいと思います。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
高橋薫子(ソプラノ)
栗林朋子(アルト)
伊達英二(テノール
直野資(バリトン
合唱連盟福岡支部合同合唱団(筆者註:福岡県合唱連盟福岡支部合同合唱団)
小林研一郎指揮
九州交響楽団
(EXTON OVCL-00006)



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