かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ゲルギエフのロシア管弦楽曲名曲集

今回のマイ・コレは、ゲルギエフが指揮するロシアの作曲家の名曲集です。管弦楽はサンクト・ペテルブルク・キーロフ管弦楽団です。いわゆる、「キーロフ・オペラ」のオーケストラで、つまりはオペラ劇場のオーケストラです。

それゆえに、全体的には豊潤で力強い演奏が目立つ一枚です。

このCDは10年くらい前に買い求めた一枚です。しかし、それまであまりロシア物へ手を出していなかった私がなぜにこのCDを買ったかと言いますと、これも合唱団のレファレンスとしてなのです。

え、どこに合唱があるの?って思われるかもしれません。実は、このCDは珍しい演奏が収録されているからこそ買い求めたのです。それは曲順に説明していく過程でご紹介しましょう。

まず、1つ目はチャイコフスキーの祝典序曲「1812年」です。この曲は一度エントリに挙げていますが、それ以来の音源となります。

マイ・コレクション:チャイコフスキー 祝典序曲「1812年」他
http://yaplog.jp/yk6974/archive/276

これに重複してでも買った理由とは?さて、なんでしょうか?ケータイ大喜利風に考えてみても面白いでしょう。

・・・・・て、おふざけは辞めにして、このゲルギエフの「1812年」はかなり重厚な演奏を聴かせてくれます。その上、太鼓はぶっ叩くわ(大砲の部分)、最後のロシア国歌(クラヲタの方たちへ。そう、原曲どおりなのです!)の部分は荘厳と、なるほどロシアのオーケストラらしい壮大な演奏を見せてくれます。けれど、端整な演奏好きな私としては、上記エントリであげたデュトワ/モントリオールに次ぐものです。

2つ目は、チャイコフスキーのバレエ「眠りの森の美女」です。ディズニー映画にもなっているほど有名な作品です。

眠れる森の美女 (チャイコフスキー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9C%A0%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%A3%AE%E3%81%AE%E7%BE%8E%E5%A5%B3_(%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%B3%E3%83%95%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC)

その中から、「序曲」「ばらのアダージョ」「パ・ド・キャラクテール:長靴をはいた猫と白い猫」「パノラマ」「ワルツ」の5曲がチョイスされています。ちなみに、組曲ではありません。バレエ大国ロシアらしい選曲だと思います。さらに、チャイコフスキーと言えばとてもロマンティックというイメージがありますが決してそれだけではなく、むしろ深い陰影があることを教えてくれます。この点はさすがキーロフらしい演奏だなあと思います。

3つ目は、グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」の序曲です。グリンカという作曲家を知らなくてもこの曲を知っているという人も多いかと思います。何年か前の「N響アワー」のテーマ音楽での使われましたし、CMなどでも使われることが多い曲です。

ルスランとリュドミラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%A9

それにしても、グリンカを持ってきたというのは単にこの曲が有名だからではないと思います。あきらかにゲルギエフグリンカが果たした役割に目を向けてほしいがため、この中ほどに持ってきたと言えるかと思います。それはグリンカが「ロシア音楽の父」とも言うべき先駆者的な役割を果たした人だったからです。

ミハイル・グリンカ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AB

そのせいでしょうか、演奏は快速ですが決してアンサンブルが雑になっていません。演奏によってはちょっと崩壊しそうな部分を流して何とかするということも有りますがそういった点が全くなく、一糸乱れぬ素晴らしい演奏をさらりとやってのけています。

4つ目はハチャトウリャンのバレエ「ガイーヌ」から「剣の舞」です。この曲は正確にはロシアの曲といういい方は出来ない作品ですが、ロシアの文化が広く影響を与えたという歴史を見てほしいがために持ってきたと言えるでしょう。以前、私も別のCDで持っている作品ですが、そちらの方がその点を説明するには適当かもしれません。

マイ・コレクション:剣の舞 管弦楽名曲集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/395

このエントリで、私はこう述べています。

「第5曲から第7曲まではハチャトウリャンの「ガイーヌ」からの抜粋。第5曲めが、タイトルにもなっている超有名な「剣の舞」。これが聴きたくて買ったものでもありますが、いやいや、そのほかの2曲も聴いてくださいまし。「剣の舞」からは想像できない、民族色豊かな音楽にふれることが出来ます。特にお勧めは実は第7曲目の「バラの乙女達の踊り」です。」

そもそもこの曲はアルメニアが舞台の曲です。作曲された時代を反映してソビエトらしい舞台設定になってはいますが、基本的にはアルメニア人であるハチャトウリャンの民族意識から出た作品ととらえていいでしょう。

ガイーヌ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%8C

アラム・ハチャトゥリアン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3

それに、このバレエの初演がキーロフ・バレエだったということもこのアルバムに収録された理由でもあるでしょう。そういったリスペクトが3つ目と4つ目には現れています。

5つ目が、ボロディンのオペラ「イーゴリ公」。序曲と有名な「だったん人の踊り」が収録されています。実は「だったん人の踊り」に関しては上記エントリでもちょっとだけ触れているんです。

「第2曲のボロディン中央アジアの草原にて」は、音楽鑑賞の時間でもよく取上げられる曲だと思います。実際、私もそれで聴いて好きになったからこそ、このCDを買ったのですが^^;とても雄大で、のんびりとした音楽ですが、これでもってボロディンがそんな作曲家であると思ってはいけません。私はそれを後に「だったん人の踊り」で強烈に教えられることになります(しかも、合唱つきで)。」

そう、「合唱付きで」と括弧でくくったのがまさしくこの演奏なのです。感のいい方はお分かりですね?ええ、この演奏が合唱付きであるからこそ、このCDを買ったのです。

このCDを買ったころ、合唱団で練習することになったのがこのだったん人だったのです。そもそも恥ずかしいことに、私はこの曲はもともとオペラでは合唱曲であることを知らなかったのです。

だったん人の踊り
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A0%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%82%93%E4%BA%BA%E3%81%AE%E8%B8%8A%E3%82%8A

当時こんなサイトはなかったと思います。あれば便利だったなあ。

http://www.geocities.jp/lune_monogatari/oz/song.html

ロシア語なんて初めてでしたし、発音も手探りでテキストを買ってきてやる始末で、音楽監督を何度恨んだことか!しかし、そういったことがいい経験なんですね。そういったことは仕事ではずいぶんとあることですから、今では恨みっこなしです。

この合唱が歌われるのはイーゴリ公が敵に捕まったものの、その敵が武士道の心得ある武将で、盛大にイーゴリをもてなすというシーンです。

イーゴリ公
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%AA%E5%85%AC

この曲の難しい点は、高音部のピアニシモにあります。特に曲の前半に多いのですが、高音部をppで歌うというのはとても難しい作業です。いつも古典派の音楽を語る時に言及することですが、基本は高音部は強く、低音部は弱くなのです。にも拘わらず、指定は高音部でもpどころかppなのですから、細心の注意を払わなくてはなりません。息を吐くスピードや強さ、息継ぎのタイミングなど、合唱団員ひとりひとり全員に最大の集中力がもとめられるのです。

その点では、この曲の素晴らしさといのは、通常の管弦楽版ではなかなか伝わらないと思います。できれば、是非とも合唱版を買ってほしいなと思います。さすがそもそもオペラオケのキーロフです。そのppの部分は繊細で、ffは力強い演奏です。アクセントのつけ方も絶妙ですし、聴いていて中央アジアの草原で繰り広げられる宴会が目に浮かぶようです。

この力強さという点が、「中央アジアの草原にて」とはまったく異なる音楽なのです。そしてむしろ、その力強さの部分のほうが、民族色が強いものとなっています。このオペラをきっかけに中央アジアの歴史を調べてみてもおもしろいと思います。今のロシアが抱えている外交問題のいくつかを理解するきっかけになると思います。

最後にとても重い曲を持っていているのがこのアルバムの特徴です。ムソルグスキーの歌劇「ホヴァンシチナ」から前奏曲「モスクワ河の夜明け」です。

ホヴァーンシチナ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%81%E3%83%8A

この曲は最後静かに終わるのですが、それがこの演奏では徹底されています。しかし、オペラのたどった歴史や史実から見ますと、1812年で始まりこの「モスクワ河の夜明け」で終わるというのは意味深です。

ロシアの歴史を端的に見れば、統一国家ロシアが生まれたのもロマノフ王朝、そしてロシア革命のきっかけを作ったのもロマノフ王朝なのですね。そういったロシアの歴史に、オペラを手掛けるからこそ知ってほしい意識というのがあるように思います。

私たちは長らくソ連を仮想的と見ていたのでロシアの歴史を知らなすぎるように思います。思えば、江戸時代アメリカよりも早く日本へやって来たのはロシアでしたし、ロシアとは幕府は事まで構えています。それを露寇事件と言います。

さかのぼり日本史 江戸”天下泰平”の礎
http://www.nhk.or.jp/sakanobori/schedule/index.html

それを受けてブログを書いている人もいました。
http://eikojuku.seesaa.net/article/229320816.html

ニコライ・レザノフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%B6%E3%83%8E%E3%83%95

こういったことは、単に日本側の視点だけでなく、なぜ彼らはそのような行動に移ったのかを考える時、やはりロシアの歴史を抜きには考えることが出来ません。それに、幕府もロシアの動きを全く知らないわけではなかったはずなのです。

オランダ風説書
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E9%A2%A8%E8%AA%AC%E6%9B%B8

こういったことを広く考えさせてくれるきっかけにも、このアルバムはなっています。ぜひともおすすめしたい一枚です。



聴いているCD
ロシア名管弦楽曲
ヴァレリーゲルギエフ指揮
サンクトペテルブルク・キーロフ管弦楽団
サンクトペテルブルク・キーロフ合唱団
オランダ王立海軍軍楽隊
(マーキュリー PHCP-10561)



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