かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:��田三郎作品集2 ひたすらな道

今回のマイ・コレは、久しぶりに日本の合唱曲となります。ビクターから出ている、「日本合唱曲全集」から、��田三郎の二つ目です。

彼の合唱曲はこのビクターの全集ではいくつかに分かれていますが、私が最初に買い求めましたのがこの第2集でした。

まず、��田三郎という作曲家の説明をいたしましょう。日本の合唱界を長年支え続けてきた偉大な作曲家であり、また指揮者として現場を好んだ人でした。そもそもがプロテスタントキリスト教徒でしたが、40歳のときにカトリックの信徒となっています。

高田三郎
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%94%B0%E4%B8%89%E9%83%8E

ウィキの説明にもありますが、彼の音楽は西洋的な題名が多い割にはとても日本的な旋律も多く、まるでそれは「チェレプニン派」を思わせるようです(実際には、彼はチェレプニン派ではないにも関わらすです)。

第1曲目は「ひたすらな道」です。1976年に作曲されたピアノ伴奏による混声合唱曲です。近年では女声合唱で歌われるほうが多いようですが・・・・・

女声合唱版も素晴らしいのですが、私はやはり混声合唱のほうが好きです。��田氏の音楽には性別を超えた人間の性(さが)というものが詰まっているように思うからです。

この「ひたすらな道」もそんな曲です。ブックレットで氏は「そうとう劇的なもの」と捉えられており、その劇を3幕に分けています。第1幕(第1楽章:姫)では狂乱の果て池に変わってしまった姫と、その池のほとりで同じように気が狂いそうで池になりたいと願う私の内面をえぐり、第2幕(第2楽章:白鳥)ではその狂気から逃れようと白鳥の如く飛び立ったのですが、また元の状態へ戻ってしまう私を描き、第3幕(第3楽章:弦)ではその運命に合っても一本ピン!と張られた弦の如くしっかりと立っていようとする人間を描いています。ブックレットで氏は作曲中に「シューベルトの『冬の旅』の第20曲目『道しるべ』の最後の言葉『誰ひとり還って来たことのない道』が繰り返し心に浮かんだ」と述べています。

第2楽章の白鳥は、合唱祭などでは単独でも演奏される名曲で、白鳥は飛び立った・・・・・の部分が特に美しい曲です。この部分を魅力的に歌える合唱団は、恐らく全国でもトップレヴェルの合唱団だと言えるでしょう。

第2曲目は「内なる遠さ」です。1978年に作曲されたこの曲も、その題名の通り人間の内、つまり「心」のなかを鋭く描写した作品です。特に��田氏の作品にかかわった詩人が素晴らしいせいもあるのでしょう。実はこのCDに収録されている3曲とも、詩は高野喜久雄氏によるもので、このコンビで数々の「人間の心の内を鋭く描写する作品」を世に送り出しました。

この曲では4つの楽章に動物や昆虫の名まえの標題をつけ、擬人化することですべて生命は突き詰めれば大切なものなのであると問う内容なのです。さて、聞く皆様はその鋭い「刃」にどれだけ耐えうるでしょうか。

最後の曲は、「私の願い」です。じつはこの第2集を先に買った理由が、この曲が聴きたいということだったのです。10年以上前の川崎市の合唱祭において、神奈川県立多摩高校のOB合唱団が歌ったのが、この曲なのです。

この曲は1961年にNHK芸術祭のために委嘱され作曲されたものです。この時、高田氏は詩人高野喜久雄と出会い、その後このコンビで多くの作品を世に出すことになりますが、その第1号となった作品です。

わずか2楽章しかありませんが、これが濃いのです。特に、第2楽章「雲雀にかわれ」。実はフーガなのです。以下の部分がフーガになります。

まことに
高きものの名を 呼びかわしつつ
ひた舞い上がる
雲雀にかわれ

この詩がとても意味深いのはもちろん、それをフーガで仕上げる点に、キリスト教徒である氏の意気を感じます。

私はキリスト教徒ではないのですが、この詩とその形式が、胸を打つのです。

怒りや苦しみ、妬み・・・・・それらがすべて雲雀にかわって、高い空へと舞いあがる・・・・・そして、心の平安が訪れる。

その哲学的な詩が、多くの合唱団員の心をとらえて離さない曲です。

さて、演奏面では東北と関西とふたつのアマチュア合唱団の名演を聴くことが出来ます。「ひたすらな道」は盛岡コメット合唱団、そして「わたしの願い」は豊中混声合唱団。特に豊中混声合唱団は「豊混」の名称で合唱されている人たちには広く知られている合唱団でして、神戸中央合唱団や、企業サークルである松下合唱団などと並び日本でもトップクラスの「合唱団」です。

なぜ、アマチュアの文字を取ったかと言えば、そのレヴェルはすでにプロの域に達しているからです。アンサンブルが崩壊することはまずなく、ハーモニーは徹底的に美しく、アインザッツの強さも素晴らしいものです。特に、豊混はフーガの部分を全くさらりと演奏しているのには、脱帽するしかありません。

こういった素晴らしい合唱団が日本には存在することを、私は一人の日本人として誇りに思います。



聴いているCD
��田三郎作曲
混声合唱組曲「ひたすらな道」
混声合唱組曲「内なる遠さ」
混声合唱曲「わたしの願い」
��田三郎指揮
盛岡コメット合唱団
豊中混声合唱
水野朋子(ピアノ、「ひたすらな道」・「わたしの願い」)
樋口洋子(ピアノ、「内なる遠さ」)
(日本ビクター VICG-40192)



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