かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:チェレプニン ピアノ協奏曲全集1

今月のお買いもの、4枚目はチェレプニンのピアノ協奏曲全集の一枚目です。もともとはBISレーベルから出ていたものですが、それがブリリアント・クラシックスへ譲渡され、廉価盤として再販されたものです。1260円なり。

本当に安いですね・・・・・これも輸入盤です。銀座山野楽器本店で買い求めました。

このCDを買いましたきっかけは、最近図書館から借りてきました松村禎三氏のナクソス音源です。松村氏を指導した一人に、このCDのピアノ協奏曲を作曲したチェレプニンの弟子である伊福部昭がいました。そういったことが伏線となって、このCDを選ぶことになりました。

では、そのチェレプニンという人はどんな人だったのかと言いますと、一言で言いますと、帝政ロシアの下で育ったコスモポリタンでした。ロシア革命を嫌ってフランスへ亡命。その後日本にも来まして、自国の文化を大切にすることこそインターナショナルだと、音楽の側面から説いた人です。

アレクサンドル・チェレプニン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AC%E3%83%97%E3%83%8B%E3%83%B3

彼のこの言葉を戦後の日本人たちは主に映画音楽において実践し、多くの名作が生み出されています。伊福部昭がその第一人者ですが、たとえば「ゴジラ」のテーマ音楽はあまりにも有名ですが、あれもチェレプニンの影響で作曲されたものと言っていいでしょう。

そういった戦後日本の作曲家たちを「チェレプニン派」と言いますが、じつは私は以前であればこういった作品はあまり好きではありませんでした。しかし、この歳になりまして、特に毎年正倉院展などに通うようになりますと、チェレプニン派の音楽にだんだんシンパシーを感じるようになりました。

この全集は2枚組ですが、素晴らしいことに番号順で収録されています。ピアニストは小川典子。そう、ウィキで触れている「生誕100年を過ぎた現在、金澤攝小川典子などが演奏するなど次第に日本でも演奏の機会が増えつつある。」というそのものなのです。

しかも、オケはシンガポール響。東南アジアのオーケストラの演奏が聴ける機会などそうはありません。以前はナクソスなどが東南アジアのオーケストラの音源を出してくれていましたが、最近ではあまり見かけなくなったことからも、このCDの価値は高いと思います。

まず、第1番と第2番はそれぞれ単一楽章の作品です。そして、各々急〜緩〜急となっているのは伝統的な協奏曲の構成を守っているのですが、まず第1番においてはオーケストラが主題を奏した後にピアノが再現するという構成は全く無視しています。第2番においてはいきなりオケとともに主題を奏しています(もっともこれはベートーヴェンも「皇帝」で行っていますから別におかしくはありませんが)。

第1番は1919年から20年にかけて作曲され(ウィキには1919年と記載されていますが、日本語ウィキは間違いが多いことも指摘されていることから、私はブックレットの記述を信用してここでは述べることとします)、第2番は1923年に作曲された作品です。第1番の初演が1923年であることを考えますと、この二つは関連性があると私は考えています。構成が似ていること、そして音階が独特であることがその理由です。

特に音階は「チェレプニン音階」という、プロでないとなかなか理解しにくい音階を使っていることも有りまして、構造まで迫ろうとするとなかなか難しいですし、かくいう私も理解できる代物ではないので、ここでは省かせていただきますが、どんなものなのかはウィキの以下項目に出ています。

移調の限られた旋法
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%BB%E8%AA%BF%E3%81%AE%E9%99%90%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E6%97%8B%E6%B3%95#.E7.AC.AC3.E7.95.AA

こんなブログも・・・・・

左近治のたわごと
チェレプニン9音音階再び!
http://tawauwasakonosam.blog.so-net.ne.jp/TcherepninScale_02_2010

まあ、わかりにくいとは思います。ただ浮かび上がってくるのは、この音階を使いますと、民謡風になるということなのです。チェレプニンは各地の民謡を収集したことで有名ですが、それを音階として体系的にまとめた人なのです。それがチェレプニン音階であると聴衆側はとらえておいていいと思います。

そして確かに、この演奏でもそういった民謡色が強いものになっておりまして、現代音楽の中でもメロディがあるのだけれども、しかし西洋音階とはまったく違う音色という特色をここにみることが出来ます。

第3番は第1番と第2番より少し後の1931年から32年にかけて作曲されました。この10年程度が作曲者にどんな影響を与えたのかはネットではわかりずらいところなのですが、2楽章になっているのが特徴です。そして構成的には従来の構成を完全に無視し、単にオーケストラとピアノとの「協奏」という点にかろうじて協奏曲の名が与えられているにすぎなくなりますが、より一層民謡色は強くなります。こう番号順に見ていきますと、いかにチェレプニンが音階に注目し、その結果メロディーに重点を置いているかがよくわかります。

現代音楽が破壊したのが和声です。和声によって旋律、つまりメロディが生まれるわけですが、チェレプニンはそれにはっきりと意を唱えています。不協和音がありながらもしっかりと旋律が存在するその音楽には、私たちが現代音楽に持つ偏見を、はっきりと浮かび上がらせてくれます。

さて、第4番以降がどうなるのかと言えば・・・・・それは、明日のお楽しみです。旋律重視という彼の視点から言いますと、現代音楽の歴史上は全く正反対の転回を見せるとだけ、述べておきましょう。

それにしても、シンガポール響のアンサンブルは素晴らしいです。全く安心して聴いていられます。小川典子もそのアンサンブルに安心して弾いているのが手に取るようにわかります。いや、感動してというほうがいいのかもしれません。そういえば、日本のオケでチェレプニンを取り上げるのは少ないように思います。コンサートではあるのだと思いますが、CDではあまり見かけません。売れないせいもあるのでしょうが、やはりチェレプニンの評価が最近まで低かったということも有るのでしょうね。

もうアジアは、中国(シンガポールは華僑の国であるため)は・・・・・なんて、言えませんね。




聴いているCD
アレクサンドル・チェレプニン作曲
ピアノ協奏曲第1番作品12
ピアノ協奏曲第2番作品26
ピアノ協奏曲第3番作品48
小川典子(ピアノ)
ラン・シュイ指揮
シンガポール交響楽団
(Brilliant Classics 9232/1)



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