かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:モーツァルト宗教音楽全集3

今回のマイ・コレは、モーツァルトの宗教音楽全集の第3集です。アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス他の演奏で、つまり「ピリオド」演奏です。

この第3集は大ミサハ短調。以前もマイ・コレで取り上げていますし、またモーツァルトのミサ曲を特集した時にもエントリを上げています。

マイ・コレクション:ペーター・マークの「大ミサハ短調
http://yaplog.jp/yk6974/archive/696

モーツァルト ミサ曲ハ短調K.427(417a)
http://yaplog.jp/yk6974/archive/187

上記二つ目のエントリでは、大胆な仮説を展開しましたが、いずれにせよこの曲が未完に終わっていることは間違いなく、そのために後世いろんな学者がレクイエム同様校訂を入れる事となっています。この演奏では、バイヤー版が使われています。

ただ、ペーター・マークとどこが違うのかと言えば、ほとんど変わりません。ペーター・マークがどの楽譜を使ったか明確ではないので何とも言えませんが、少なくともオケ部分ではほとんど違いが見受けられないので、どちらもバイヤー版を使っているものと想像されます。違いはそういった版ではなく、合唱にあります。

ペーター・マークの演奏では各パートがはっきりと浮かび上がる演奏だったのに対し、このアーノンクールのものはハーモニーとして混然一体となって溶け合っていることが特徴です。どちらがいいのかは私には判定できません。どちらも間違ったアプローチではないからです。ただ、この曲を歌うのであれば、アーノンクールを参考にしないほうがもしかするといいかもしれないなと思います。指揮をするのであれば、また別ですが・・・・・

アーノンクールのこの全集はそういった点が多々ある全集なのです。つまり、プロ向けなのです。基本的にバイヤー校訂を採用している点もそうですし、オケがピリオドである点もそうです。

マチュアが演奏する場合、ほとんどが後世のいろんな研究を踏まえ、一人の校訂者だけのものを使わないのが通例です。その上、オケはまずモダン。となれば、いかにこの全集がアマチュア向けではないのかがよくわかります。かといって全く参考にならないのかと言えば、そんなことはないのがこの全集で、モーツァルトがいかに宗教曲をまじめに作っていたのかがこの全集では明らかになっているという点も見逃せないのですが、それはまたの機会に・・・・・

この録音の場所も、前二つ同様カジノでして、それだけ音響が短い演奏になっているのですが、この大ミサハ短調はそれほどそれを感じません。この曲がウィーン時代の作品であるということも大きいのだと思います。ザルツブルク時代のミサ曲のように苦労して端折ることもせず、コンパクトにしながらも長いフレーズを使いたっぷりとソリストには歌わせているこの曲を通常のホールで演奏したらどうなるのか、如実に語っています。その点だけは、アマチュアでも大いに参考になる点だと思います。

実はカジノで録音されているということが、この全集が彼の宗教音楽を取り上げているのだということを前面に押し出す結果にもなっている点がありまして、それはオルガンの音がしっかりと聴こえるという点です。特にアマチュアの演奏会では予算の関係でオルガンが使われないことがほとんどですが、しかし実際にはオルガンは宗教曲であるからこそ不可欠です。この曲の演奏でもグローリアとクレドでしっかりとオルガンが鳴っています。

モーツァルトのミサ曲を録音しているCDでオルガンがはっきりと聴こえるものは実は珍しく、かなりの大音量にして初めて「あ、鳴っていたのね」ということがほとんどなのですが、このアーノンクールの全集ではいかにオルガンが聴こえるかが特徴です。そこかしこにオルガンの音が鳴っていることに気が付くとき、単にミサ曲以外も収録したので「宗教音楽全集」となっているのではないことに気付かされます。

こういった点を指摘するレヴューは少ないですね。そんなこと関係ないよという人もいるかもしれません。しかし、そもそも教会音楽においてオルガンが果たす役割は大きく、だからこそ本来はオルガンが聴こえる聴こえないはとても重要なのですね。その点ではシュライアーの演奏すらそれにのっとっているとは到底言えません。彼の指揮した「戴冠ミサ」はその点も残念なのですが、しかし音楽家に対するリスペクトは十分感じるので素晴らしいのです。

マイ・コレクション:シュライアーの「戴冠ミサ」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/452

この全集は、「モーツァルトのミサ曲は宗教音楽である」ということをまざまざと教えてくれますし、この大ミサハ短調の演奏もそれを反映している一つと言えるでしょう。



聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ短調K.427(417a)
クリスティーナ・ラキ(ソプラノ)
ジュジャナ・デーネシュ(ソプラノ)
クルト・エクヴィルツ(テノール
ローベルト・ホル(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団(合唱指揮:ヴァルター・ハーゲン=グロル)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(Teldec WPCS-6484)



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