今回のマイ・コレは、モーツァルトの宗教音楽全集の第5集です。収録曲は孤児院ミサK.139とエクスルターテ・ユビラーテです。
孤児院ミサについては、以前特集した時に取り上げています。
モーツァルト ミサ曲ハ短調K.139(47a)「孤児院ミサ」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/171
時期的にはザルツブルク時代の作品ですが、作曲されたのはウィーンだと言われている作品です。
この時にもこの全集の演奏に触れていますが、特に奇をてらったことはしていません。ただ、録音場所が必要以上に響かない場所(K.139は教会、K.165はホール)であることが、各パートの動きをはっきりと浮かび上がらせていまして、その結果オルガンがはっきりと聴こえることにより、この曲も宗教曲であるということを如実に語る結果となっています。
この曲にしてもそうなのですが、世俗曲的な部分が当時の好みの関係からありまして、いろんな録音ではオルガンが聴こえないことからモーツァルトの宗教曲、特にミサ曲はレクイエム以外は不遇な扱いを受けることが日本では多いのですが、アーノンクールはそれが間違いであるとこの録音ではっきりと意見具申を日本人に対してしているのですね。
エクスルターテ・ユビラーテも一見しますと宗教曲とは言いがたい面がありますが、それをオルガンを聴かせることで否定しているのですね。私は初めて聴いたとき、なぜ録音場所が教会ではないのかが不思議だったのですが、今ではなぜ教会ではないのかが分かります。各パートの動きを聴き手に聴いてほしいからです。それは行きつくところ、オルガンを聴いてほしいという意思でもあるのだということです。
アーノンクールは古楽指揮者としての側面が強いのですが、それよりもそもそもモーツァルテウムを指揮することが多いことからしても、モーツァルトのオーソリティとしての側面の方がむしろ本業であると言ってもいいくらいです。古楽はその結果行き着いたにすぎませんし、その結果今では古楽・モダンを行き来しています。その点では、アーノンクールにはモダンでもCDを出してほしいところです。
こうやって今聴きなおしてみますと、この全集の素晴らしさをつくづく感じています。その上で残念なのは、やはり成立順ではないということです。確かにそれはいろんな制約上難しいのでしょうが、例えばこの全集からミサ曲だけを抜き出して、それを成立順に並べて収録してみるなどの企画があると、もっとモーツァルトの宗教曲は正当な評価を受けるのになあと思うと、残念なのです。
このCDに関してだけはもうひとつ残念な点が。それは、ミサ通常文の発音でリエゾン(単語と単語の間の発音がくっつくこと)してしまっている点です。ベネディクトゥスで顕著なのですが、ここは合唱団が秀逸だからこそ、「ミサ曲ではリエゾンしない」という約束事を守ってほしかったように思います。
実はそういった点では、日本の、特にアマチュア合唱団は実に忠実であって、それが世界的に評価されている点はあまり国内では知られていません・・・・・
聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ミサ・ソレムニス ハ短調K.139(47a)「孤児院ミサ」
モテット「エクスルターテ・ユビラーテ」ヘ長調K.165(158a)
バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ヤドヴィガ・ラッペ(アルト)
ヨゼフ・プロチュカ(テノール)
ホーカン・ハーゲゴール(バス)
アーノルト・シェーンベルク合唱団(合唱指揮:エルヴィン・オルトナー)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(Teldec WPCS-6486)
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