かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:クルーセル クラリネット協奏曲・四重奏曲全集�@

今月のお買いもの、三つめはクルーセルクラリネット協奏曲と四重奏曲の全集です。2枚組のため2回にわけてご紹介します。まず今回は一枚目のクラリネット協奏曲全集です。

まず、クルーセルという作曲家についてご紹介しましょう。1775年にフィンランドのウーシカウプンキで生まれた古典派の作曲家です。もともとクラリネット奏者として名をはせ、そこから作曲も手掛けるようになった人です。フィンランドではシベリウスに並ぶ国民的作曲家だそうで、シベリウスが出る前まではフィンランドと言えばクルーセルだったそうです。

Bernhard Crusell
http://en.wikipedia.org/wiki/Bernhard_Crusell

日本語ではなかなか解説しているものがありませんで、体系的な説明はこの英語ウィキしかありませんでした。彼の作品は幾つかCDで出ているようで、いくつかの通販サイトではそれ故にクルーセルの説明が出ていますが、私と同じ域を出るものではなく、それはおそらくそこもこのウィキの説明を参照しているためだと思います。

わたしはこのウィキの説明を機械的な日本語訳で読んで今書いています。

それにしても、クラリネットというのが目を引きます。クラリネットは当時新興の楽器であることはモーツァルト交響曲の時にも触れていますが、そのクラリネットに興味を持つということがとても私にとっては興味深いことです。

彼は最初フィンランド軍の連隊で研修を受け、その後スウェーデン軍(というのも、当時フィンランドスウェーデン領だったためです)の要塞でも学習をして、演奏家としてデビュー。その後パリの音楽院でも勉強しています。作曲はその後に着手され、スウェーデンでほとんど作曲されましたが、故郷フィンランドを忘れることは終生なかったようで、そのためシベリウスの前まではクルーセルが国民的な作曲家として認知されていたようです。

さて、その作品ですが、まずクラリネット協奏曲です。全部で3曲書いており、そのすべてがこの一枚に収められています。ウィキによりますと作曲順は第3番、第1番、第2番のようです。番号と作品番号はともに出版順でついているようです。そのため、いろんなサイトでも年代の記載に誤りも見受けられます。

収録は番号順で、まず第1番です。完成は1808年あるいは1810年と言われています。基本的な急〜緩〜急の協奏曲の造形美を持つ曲です。第1楽章はとても端正なソナタ形式で、アレグロの指定がなされています。とてもすっきりとした造形美です。その上クラリネットの温かい音色と美しさが前面に押し出されています。第2楽章はアダージョのゆったりとした曲。クラリネットのふくよかな音色が効果的に使われています。第3楽章のロンドはとてもリズミカルな曲で、クラリネットが跳ね回ります。まるでスウィングしているかのようで、此れが古典派なのかと驚きを隠せませんが、決してロマン派ではないです。それだけにこの楽章は聴くものを驚かせます。それでいて構造的にもリズミカルな部分とメロディアスな部分とが重複する点を作っており、造作にかなり気を使っている点も素晴らしいです。

第2番は一転短調の曲となります。1815年に完成されました。この曲も楽章構成や楽章バランスの点でまさしく古典派ですし、また音楽的にも過度にロマンティックになることなく、端整さに気を使われて作曲されています。第1楽章のヘ短調はとても気高いものを持っていまして、協奏曲の華やかさという点はいったいどこへ行ったのかというくらいの雰囲気を持っています。ハイドン交響曲のような雰囲気さえ持っているので、ウィキには「グランド」という記載さえ見えます。本当にそのような名称がついているかまでは確認できていませんが。

まずオケの序奏があって第1主題がオケの前奏とクラリネットによってはじめられます。その序奏がある点で3曲の中では珍しい曲です。3曲の中では一番洗練されているのは確かだと思います。転調はハイドン以上かもしれません。第2楽章のアンダンテ・パストラーレは本当にゆったりとして美しく、目の前に田園風景が広がってくるかのようです。第3楽章はロンドで、これは舞曲という雰囲気よりもロンドーの、詩的なアプローチで作曲されているように思います。その造形美を楽しみましょう。クラリネットの温かい音色が、気高いこの曲にほっとする部分を与えています。

第3番は1807年に作曲されたようのですが、出版は1828年あるいは29年になってからになってしまいました。確かにこの第3番では若干プリミティヴな部分があり、一番目立つのは第3楽章がアラ・ポラッカ(ポーランド風に)という指定があることです。ロンドが来ることが多いこの時期の協奏曲ですが、この指定があるというのは珍しいと思います。ただし、実際にはきちんとポーランド風の舞曲となっていて、楽章構成的にはきちんと踏まえてはいます。最初故郷フィンランドやスェーデンといった場所の舞曲を協奏曲に取り入れたかったのだろうと想像します。しかしそれ故なかなか出版できなかったのでしょう。音楽的にはこれも驚くべきことですが、その若干の部分を除きほとんどプリミティヴなものがありません。

彼は当時の作曲家の音楽を演奏者として体で経験しており、その蓄積が大きかったのだと思います。上記ウィキでも、有名どころではベートーヴェンモーツァルトという名前が出てきます。そういった作曲家の素晴らしい作品を、宮廷オーケストラの木管パートを吹きながら研究していったその跡が、この3曲にはそこかしこに見え隠れします。転調という点ではモーツァルト、そして楽章構成という点ではベートーヴェンも忘れてはなりません。第3番ではほぼアタッカで入るようになっています。ベートーヴェンのピアノ協奏曲との関連もうかがえます(皇帝はまだ作曲されていませんが、第4番までは作曲されています。あるいはその後皇帝を聴いて変更した個所もあったかもしれません。それゆえに出版が遅れた可能性もあります)。また、第1番の第3楽章が独奏楽器で開始されるという点も、モーツァルトベートーヴェンの影響が十分うかがえる部分です。

ピアノ協奏曲第4番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

ピアノ協奏曲第9番 (モーツァルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC9%E7%95%AA_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)

そして、クラリネット協奏曲と言えば、この時代二人の大作曲家を忘れてはなりません。モーツァルトウェーバーです。

クラリネット協奏曲 (モーツァルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)

クラリネット協奏曲第1番 (ウェーバー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC)

クラリネット協奏曲第2番 (ウェーバー)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%AA%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC)

ルーセルの3つのクラリネット協奏曲は、この3つをちょうどつなぐものでもあります。クルーセルのものはモーツァルトベートーヴェンのいいとこどりをしていながら、決して真似になっていないのが素晴らしい点です。特にクルーセルの第3番と第1番は、ウェーバーの二つよりも早いという点に注目していただきたいのです。確かにウェーバーの作品が突き抜けているので影に隠れてしまっていると思いますが、決して劣るものではありません。その作曲家が持つ背景の差が、同じ時期の作品でありながら出ているといっていいと思います。ウェーバーは音楽先進地域。いっぽうクルーセルはその周辺(ほぼ終生スウェーデンで活動しました)。その差を考慮しますと、私は例えばその後後期ロマン派あるいは国民楽派の作曲家たちと同列において差し支えない作曲家であろうと思いますし、それゆえもっと演奏機会があっていい作品であると思います。



聴いているCD
ベルハルト・ヘンリク・クルーセル作曲
クラリネット協奏曲第1番変ホ長調作品1
クラリネット協奏曲第2番ヘ短調作品5
クラリネット協奏曲第3番変ロ長調作品11
エマ・ジョンソン(クラリネット
ゲラルド・シュヴァルツ指揮
イギリス室内管弦楽団
(Brilliant Classics 94219/1)



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